<魔王>と<勇者>は表裏一体
短いですが
さて、これでこの<魔技>が一体どういうものなのかは大体把握できた。
あとは実践あるのみだ。
「...正直使って欲しくないのだけど、ソルスのことだし使うのでしょ?」
「そのために聞いたからな。俺のところの本は任せた」
「はいはい、満足するまで試してきなさい。死なないように気をつけるのよ」
「わかっている。まあ<食屍鬼>の攻撃は幾度となく受けたし回避したから、攻撃パターンを理解した上で試すことになるからそうそう死なないとは思うが」
「そういう奴から死んでいくの、分かって言ってるわよね?」
「流石にな」
階段を登り、1階に出る。
相変わらずの本の多さ、その全てが判読不可能のものであることはわかっているが、この中にももしかすると俺の力になるものがあるかも...
...頭痛がしてきた。この量の本の確認は、5人がかりでも1週間?はかかるだろう。
「...こんなこと考えている場合じゃないな」
周りを見渡し<食屍鬼>がいないことを確認し奥へ進む。
あまり階段から離れないようにしつつ、周りにいるはずの<食屍鬼>を捜索する。
が、<魔技>を試したいだけでなのにも関わらず全く見つからない。流石に通常の戦闘時に初めて使うわけにもいかない<魔技>なので、そこら辺にいる魔獣で試したいのだが。
なぜか湧かない。まるで完全に制圧されたかのようだ。
「むう...」
これ以上行くとすぐには応援を呼べなくなるため、引き返すしかない。トボトボと階段へ向かう。
帰る道中もいなかった。もしかすると階段の近くには湧かないようになっているのかもしれないが、危険な状況に陥った時にメーノ達がすぐに来れない状況にはしたくない。
諦めて階段を降り、メーノの元へ戻る。
「あら、早かったわね」
「魔獣が湧いていなかった」
「それは残念。でもそれによって命が助かったとも考えられるわね」
「かもな。この<魔技>を試して死んでいたかもしれないし、この階段へと魔獣が来ていたかもしれん」
近くの本を取って読む。まあ求めている内容ではないが...根気強く、探していくしかないだろう。
頭を切り替え本を元あった場所に戻し、また別の本を取る。
いつかは必ず見つかるはずなのだからな。
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"ありませんでしたね"
「まあここにあったら苦労はしなかったけどな」
時間にして計...12時間?と言ったところか。5人がかりで、半日?かかるとはさすがの広さだ。
「ふわあ...時間的に外は夜ね。今日はここで睡眠を取るのはどう?」
「カミラ、どう思う?」
「さ、賛成です。おそらく、というか確定ですけど2階の広さも1階に引けを取らないほど広いですから、ここで休息を取るのは必須でしょうし」
「だそうだ。テントを建てようか」
カミラの<インベントリ>から簡易テントと寝袋を取り出し、建てる。
幸いなことに階段の下の方は意外と広く、むしろ寝泊まりできるようにこんな広さにしているのではと思えるほどだ。
「それにしてもソルス」
「なんだ?」
「途中で1階に戻ってたみてえだが、なんかあったか?」
「ああ、そういえば言っていなかった。ちょっと興味深い<魔技>があって、自分で解析できたから試してみようと思ったんだが、魔獣がいなかったんだ」
メーノが関わっていることを言わずに伝える。彼女がカミラに言って欲しくないと言っていたのは覚えているからだ。
「どんな<魔技>ですか?」
「<直前回避>というもので、どうやら相手の攻撃をギリギリで避けることでその相手の隙に攻撃を叩き込むことができるもの、らしい。解析はできたが実践はできていないから、まだ机上の空論でしかないが」
「なかなか強そうだな。なあ、それ今やってみるか」
マイゲスがそう提案してくる。
「確かに今やってもいいが...この<魔技>は単に受けに徹している<魔技>ではなく、攻撃を避けてから攻撃するまでがセットだ。攻撃を受けてもらうことになるが、大丈夫か?」
「どんくらい強化されるんだ?」
「見たてでは、およそ100倍」
「倍率大きいですね!?」
俺も聞いた時には大きいと思った。だが反動などのことを考えると問題はなくなる。
「んじゃ試してみっか。どれくらいの攻撃をすればいい?」
「そうだな。とりあえずは普通の縦斬りで、少し遅めのやつを頼む」
「任せな!」
「...テント設営の手伝いをして欲しいのですが」
「しょうがないわよ。ソルスもマイゲスも、熱が入ったら止まらないもの」
「疲れたら寝るでしょうから、私たちは、て、テントを建てて待ちましょうか」




