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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第六章 殺人狂気神話
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同族殺しの武器

多分銃なんてものがない世界に持ち込んだらこうなると思います。

 撃ってしばらくした時、俺は脱力した状態で床に座っていた。そして一気に思考を進めていた。



 こんなに簡単に威力が出る武器があれば、正直魔獣に負けることはまずあり得ないだろう。コストの問題はあるが、それは開発したばかりだからであり、時が進めば改良され問題というのは解決される。されてしまう。



 だが、これほど簡単だからこそ。



「ふむ、いつまでも腰を向かしていないで、そろそろ感想を聞きたいのだが」

「ああ...そうだな...」



 ふらふらと立ち上がる。かなりの衝撃を腕だけで抑えてしまったが故に今もなお痺れている腕は使い物にならなくて、足だけで起き上がることになる。



「みっともないおき上がり方だな。だが...その様子だと、危険性はしっかりと伝わったみたいだな」

「...いや、見ている俺たちですらわかることだぜ。実際に、撃った?ソルスがわからねえわけがねえ」



 立ち上がり、ふらつきながら床のそれを、<銃>を視認する。



 ...こんなに小さなものが、ただ1度引き金を引くだけで、鍛えた俺の渾身の一撃すら上回る威力を出している。



 実際に見たし、実際に体験した。それでもなお、信じたくはなかった。俺の努力が、否定されているようで。



 "マスター..."

「...司祭様。なぜこの<魔道具>の開発をしようとしたのですか。この<魔道具>は、いや武器は、この世界にあってはならないものです」



 いまだに声が震えている俺の質問に対し、ミカ司祭は淡々とした口調で告げた。



「戦力増強のためです。巫女様の神託によれば、今後3ヶ月以内に戦争が始まると」

「戦争だって...?それは、つまり、<魔王>の軍勢と、ってことか?」

「そこまではっきりしているわけではありませんが、おそらくはそうでしょう。<反聖教>の奴らも着々と準備を進めているのが確認されています」

「な...」



 ...頭が、理解を拒んだ。



 どうやら司祭様は、司祭様は。



「...魔獣を殺すためでなく、人を殺すための武器ってことかよ」

「ええ。前の<勇者>の時代で起きた戦争で我々<聖神信仰教会>に足りなかったもの、それは火力でした」

「前の<勇者>の時代...確かあれは<聖神信仰教会>が勝利を収めたはずでは?」

「その事実に間違いはありません。ですが、勝利の裏には多すぎる被害がありました。具体的には、<聖神信仰教会>所属のメンバーの9割が死亡しました。最も、<魔王>側は10割なので完全勝利とは言えますが」



 そんなに、死んでいたのか。



 <魔王>の側についているとはいえ人間は人間、そしてこの世界の信仰というのは<聖神信仰教会>が重立っていることから、世界全体の人口のうちのほとんどがいなくなった可能性が高いということなのだろう。



 たった50年前に。



「我々のほとんどは<聖属性>を扱えます。<治癒(ヒール)>や<満腹(サタエ)>などを駆使すれば耐久に問題はありませんでした、が攻撃力が低かったが故に攻めることが難しかったのです」

「そしてそれを教訓にしたのが、この<銃>ということか」

「そういうことです。完全に完成した暁には量産し、扱うものを鍛え、そして戦争に被害を最小限にして勝つことができるでしょう」



 俺たちも人間同士で戦うことはできる。



 そしてその時は、いかに相手の攻撃を避けるか受けてダメージを極力無くし、相手に反撃されないよう攻めるかが重要になってくる。互いに装備することになる鎧類によって攻撃は頭などの弱点を含め1撃では死ななくなる。本人たちが鍛えていたり、<到達点>が高い=ステータスが高いのであれば尚更伸び続ける。



 だがこれは...おそらく胴にしっかり当てることができれば、相手の剣や槍などが届かない位置から殺すことができるようになるだろう。



 弓も頭などの弱点を貫くことができれば似たようなことはできたが、そもそも近距離戦闘ができないのと矢の速度というのは目に見えるほどでしかないため弾いたり防いだりするのも容易。



 だがこいつは違う。小型による取り回しの良さに加え、撃つことさえできれば超スピードで攻撃できるが故に近距離遠距離関係なく扱える。しかも弓より威力が高い



 もう弓というものの存在価値が一切合切全てなくなってしまう、そんなひどい武器である。



 でそれを対人で使えばどうなるか。



 予想なんて考えるもなく、おそらく確定事項ではあるが、間違いなくそれは戦争なんかではなく虐殺になるだろう。



 被害が最小限、というのはあくまでもこちらの話。人間全体で見れば、死者は<イベント>の比ではなくなる。



 そしてこれのもっとすごいことは、そんな死者の出し方をそれこそ<イベント>と同じような1ヶ月かそこらで叩き出してしまうところだろう。およそ50年ほど前の前世代の<勇者>の戦争、記録が正しければ20年くらい続いていた。<魔王>が死んだ、つまり戦争が終わったタイミングが50年前であるはずだが、そんなタイミングまで続いたのだ。



 回復魔法は<聖属性>の特権ではない。<魔王>の見方をしていた人間の中には<光属性>やその他回復の得意な<魔法属性>を扱えたものたちもいただろう。



 虐殺ではなく拮抗した戦いであるが故に、死者が毎日のように出ても、生まれる人類もまた居たはずだ。死んだものが帰ってくるわけではないし死んでほしいと思うわけでもないが、それでも全体量が減る速度は常時より高いのはしょうがないとしてまずかなり緩やかな坂となっていただろう。



 それが1ヶ月に短縮するとどうなるか...



「っ!?」

 ”マスター!!気を確かに!!”



 思わず嘔吐が出てしまう。体の中身が全てなくなったとしても消えないであろうこの嫌悪感は、



 全て、この<銃>に向けられていたものだろうな。



「...即刻、この研究を中止すべきです」

「ソルス...」

「この武器は、互いに使うべきではない。あまりにも...あまりにもオーバースペックすぎます」

「うんうん、そうだねえ」



 ヌトさんも頷いている。やはり作っていたのだから、何か思っていたことがあっt



「でもね、<勇者>様。それは出来ない相談なんだよ」

「なんだって?」

「すでに1週間に迫っているのさ。この武器の、<魔道具>の、<銃>の公表が、ね」

発表会とは別で、i〇〇〇neの発表みたいなそれです。

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