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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第六章 殺人狂気神話
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<銃>

はじめてのしゃげき

「さて、それなら的の準備をしなくてはね」



 おもむろに<インベントリ>を開き、中から取り出したのは...丸太。



 まあまあ大きめのそれを、さらに取り出した机の上に並べていく。



 合計5つ。これを的にするのだろう。



「それで...」



 しかしまだ始まらない。さらに取り出したのは、鱗...



「ど、<ドラゴンの鱗>か、それ」

「そうだよ。これを丸太に突き刺して、と」



 <ドラゴンの鱗>は非常に硬い。それこそ俺たちでも苦戦するくらいには<ドラゴン>は強いわけだが、どうやらその鱗をまとにするつもりらしい。



「これでよし。ちょっと的は小さいが...」





 白衣の内側、胸の辺りから何かを取り出した。



 手よりも1回り大きい、黒い金属製の何かのように見える。重さはそれほどのようで、両手で持っているのが伺える。



 形状は...確か、ブーメランとかいう名前の武器に似ているはず。あの折れ曲がった形は特徴的だったから、一応記憶に残っている。



 最も、俺が見たことのあるブーメランは人と同じくらいのもの。今ヌトさんが握っているそれよりもはるかに大きい。



「...正直な話、それは投擲に使用した方が威力が出るのではないのだろうか」

「あまり魔法を、そして<魔道具>を舐めるなよ?これから見せるものが、なぜあんなにも厳しすぎる誓約書になったかを教えてくれるからな」



 握っている部分から何かが出てくる。四角い何かに対して確認をしたのち、またしまった。



「っと、そういえば大事なものを渡すのを忘れていたな」



 と言いつつまたもや取り出したのは...なんだろうか、見たことないものだった。



 けむくじゃらのものが2つ、蔦のような柔いもので繋がれている。それが複数個。



 を、耳にあてがうように装着。そしてそれをこちらに投げてくる。



 どうやら人数分ちょうどあるみたいだ。



「それをつけてくれ。下手をすると、また聴覚を失うことになるぞ」



 なんの躊躇もなく着けるミカ司祭様を見て、俺たちも着け始める。



 意外と着け心地は悪くなく、またもこもことしていることから寒冷地での保温効果に期待できそうだ。



「装備しおわったな。なら始めるぞ」



 少し音が聞こえにくいのが問題だが。しかし聴こえるようにするなら魔法を使えば良いだけで、デメリットはあまりないだろう。



 などと考えているうちに、ヌトさんは構えをとった。右手で握っているそれをさらに左手でしたから握り、さらに右足を引いている。



 おそらく衝撃などを逃すような構え。あの小さなものからそんなに強い衝撃が...?






 バン!!!



 この耳につけているものを貫いて聴こえる爆発音。一瞬、握っているそれから火のようなものが走ったのも見えた。



 そして衝撃で手ごとそれが持ち上がるのも。



「ふう...鍛えていないから、まだ1発撃つだけでもきついな」



 と言って構えを解く。



 今の所、ただ爆発音がしただけ。ではと的を見ると...



「......な...」



<ドラゴンの鱗>が砕けていた。その先の壁には、黒い穴のようなものが空いている。



「とりあえず安全面は問題ないか。よし、<勇者>ソルス・バミア様!」

「な、なんだ」

「ちょっとこっちに」



 呼ばれた。一体何をするのだろうか。



 "気を付けてください。あの犯人、一体何をするかわかりません"

「だから犯人ではないと...とにかく来てくれ。何、怪しいことはしないさ」



 ...一体何をするのかは、なんとなくわかっていた。だからこそあえて俺はヌトさんの元に向かった。



「来たね、ほい」



 それを手渡してくる。



「持ち方は単純。そこの持ち手になっている部分を握って...」

「こうか...?」

「OK。それでちょうど指がかかる位置にある...そうそうそれ。それがトリガー、つまり起動スイッチになっている」



 剣と同じくらいの重さのそれは、握ってみるとしっかりと握ることができるようになっていて、また滑らないようにもなっている。



「そこまで理解したら早い。まずはここのサイトと呼ばれる部分越しに狙うものを覗く。今回は、さっき私が撃ち抜いた鱗の隣の鱗だ」



 あの状況を撃ち抜くというのか。と考えつつ、言われたように覗いてみる。



 ...意外とブレて上手く覗けない。弓を扱ったことがないので、手ブレというものを抑える術を知らないからなのだろう。



 やはりシートはすごいやつだと改めて再認識できる。怪我が早く治ってくれればいいが。



「まあ素人だから仕方ないな。覗けたタイミングで指をかけている引き金を思い切り内側に押し込め」



 とにかく。震えつつもなんとか上手く覗けるタイミングを見計らう。タイミングを見るのは何度もやっていることだ、魔獣の攻撃を避けるのには必須の今



 バァン!!!!!



「!?」



 ものすごい音と同時に、ものすごい勢いで上へ跳ね上がるそれを無理やり抑える。



 おかげで腕全体が痺れてしまい、それを床に落としてしまう。



「お、意外と狙撃の素質あるんじゃないか?初めてなのにちゃんと当たってるぞ」

「え?」



 的の方を見てみると、そこには上側半分がなくなっている鱗があった。



 それを見た瞬間、いや、本来はさっき理解しなければいけなかった考えが、ようやく頭の中を巡った。



 正直に言って、今の俺では<聖剣アルカマ>であの鱗を、いやどんな剣を使ったって砕くことはできない、いや傷をつけることすら叶わない。



 だが。初めて触れたあの<魔道具>で、俺は破壊することができたのだ。というか破壊してしまった。



 そう、初めてでも破壊することのできる<魔道具>であるのだ。足元に転がっているそれは。



「...まあそういうことだ。この<魔道具>の名前は<銃>。私がいた地球という星で最も人間が生み出してはいけなかった、最悪の武器だ」

無理やり反動を0にする脳筋<勇者>

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