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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第六章 殺人狂気神話
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本題に入ろう

ここからが本番です

「俺たちは<警察>だ。死体には手を合わせたが、ありゃあひでえもんだったぜ」

「個人の特定が不可能だった、といえば少しは伝わるか?」



 空いているベッドに腰掛けて話す<警察>。死体は見慣れている俺たちだが、そんな死体は見たことがない。



 "<爆属性>及び圧死によるものでしょう。<爆属性>で粉々になれば特徴のことごとくが失われますし、紙のような薄さにまで圧縮されたものを見てもそもそも人間だったということすら気づかないかもしれません"



 圧死...落とし天井や岩雪崩などで起こるらしいが、実際には見たことがなかった。



 ...あまり、見たくはないな。もうあの屋敷に近づくことはないかもしれない。



「さて...俺たちが来た理由は単純だ。<勇者>様方ならわかるだろ?」

「事情聴取ってやつだろ?あの状況で生き残ったのは、俺らとカミラのそばにいた使用人だけって言ってたしな」



 一体何が、あの屋敷で起きたのか。



 確かに知っているのは俺たちだけだろう。ほとんどの人が死んだんだから、だから、実の親が殺されている状況を思い出してくれと言われても、それは仕方のないことだ。



「流石に俺たちもできる限りは事前に調べてある。ソルス・バミア、<勇者>様の1人であるあんたの家があの屋敷であることもな」

「無理を言っているのは承知の上で、頼みたい。今後二度とこんなことがないように...」

「いや、問題はない」



 実際のところ、俺は今どんな気持ちなのだろうか。



 少なくとも悲しくはないし、何の後悔もない。死を見すぎて、親にもう会えなくなったことにすら何も思わなくなってしまったのだろうか。



「問題はない、って...歯軋りしながら、涙を浮かべている人はどう見ても問題があるように見えますよ?」

「...え?」



 その感覚は一切ないのだが。



 "泣いていますよ。それに歯軋りも。私を握る手も、力み震えています"



 ...どうやら、俺の体はまだ再生しきっていないらしい。



 "そうではないと思いますけどね"



 ============================================



「...最終的に、父さんの首を吹っ飛ばした、使用人に扮した犯人は殺した」

「殺したあ!?おいおい、<勇者>様が人間を殺したってそりゃあねぇぜ」

「自らの親を目の前で殺されたことはあるか?」



 黙る<警察>。いかに俺が人道に背いたことをしていようと、それを行い当事者にしかわからないことはある。



「おい、今はそれを聞く時じゃないだろう。その犯人が、あの屋敷を<爆属性>の魔法で吹っ飛ばしたんだな?」

「厳密には<魔道具>だ。意識を失う直前に...」



 少し思い出す。確かに犯人は棒状の何かを握りしめていた。



 見ただけではあるが、耳鳴りがした瞬間が見えていない以上それが凶器となっている可能性もある。もっとも、その棒状のもので何ができるのかは知らないが。



「それは俺も見たな。倒れる人間が手に棒切れみたいなのを握っているようには見えたぜ」

「ならそれが殺害に使われた可能性が大いにある」

「方法は不明だがな」



 あの棒で一体どうやって倒したのかはわからない。というかどうやって父さんの頭を吹っ飛ばすほどの威力を出せたのだろうか。



 父さんは<伝説の20人>。肉体の鍛え方はそこらの大人とはわけが違う。



 確かに警戒はしていなかった。ガードなどはなかっただろうが、それはつまり殺意も乗っていないということ。殺意の察知くらい父さんは余裕だろうし、察知してから攻撃を受ける体勢を整えることは朝飯前のはず。



 そして何度も何度も魔獣を殺したからこそわかるが、殺意のない攻撃というのは思ったよりも全くダメージがない。



 力まないのもそうだが...聞いた話が確かなら、元々人というのは殺生することに躊躇いがあるとか。



 となると、殺意が乗っていない攻撃が弱点を的確に突くことができないのにも説明がつく。無意識に、殺しを避ける。



 だが。この思案の全てを父さんの死が否定してくる。一体どのような手で父さんは...



「...おい......おい、ソルス様?」

「はっ...」

「大丈夫か?なんかずっと俯いてたが」

「ああいや...大丈夫だ。少し考え事をしていたんだ」

「一体どこをどう見れば大丈夫に見えるんですかね...」



 刺客は、確実にあの<魔道具>を使っていたはずだ。



 それなら、あの<魔道具>について調べていれば、自ずと答えが出てくるはず。



 父さんを殺せる<魔道具>なんて、そうそうあっていいものではない。まず間違いなく特注品、それも素材から作りまで全て。



 ...詳しい人に話を聞きにいく必要があるな。



「...<魔道具>の」

「はい?」

「あの<魔道具>の製作者を探す必要がある」

「いや、それをするのは俺らの仕事で」

「俺たち<勇者>にそれの役目はない、と?」



 <勇者>は<魔王>を斬るための存在ではなく、人々を守るための存在だと俺は思う。



 なら、今の俺がやるべきは父さんを、メルト・バミアを殺した理由を探すことだ。



<伝説の20人>を殺すという危険な行為を行なった理由、それには殺害を為そうとした人間がどんな存在なのかが詰まっているはず。



「はあ...わかったよ。ちょうど<聖神信仰教会>お抱えの<魔道具>職人がこの城にいるはずだから、時間の都合が良ければ会いに行けるはずだ」

「おいそれは機密事項で...」

「巫女様に聞けばわかることを言ったまでだ」



 ふむ、その手もあったか。確かに真犯人を見つけるのに巫女様に聞くというのは良い手段だ。



 本人を見つけられずとも、そのヒントはわかるはず。



「全く...どんどん話を進めるな、メルト。お前らしくないぜ?」

「いつもならマイゲスを止める側のはずですがね」

「まあ、俺も少し父さんが殺されたことに思うところがあるのかもしれないな」

「少し?どこからどう見てもそれだけで動いているじゃねえか」



 ...そんなつもりはなかったのだが。



 意外と俺は感情に流されやすいのかもしれないな。



「一緒に、ついてくるか?<勇者>の話を出してしまったが、マイゲスが言うには俺は感情で動いている。ある意味で俺だけの問題として扱うこともできるぞ?」

「はっ、俺たちの目の前で人が殺されて黙ってられるかっての。俺はついていくぜ」

「私は...ついていきたいのは山々ですが、残念なことに今のままでは足手纏いでしょうね」



 [再生]があまり育っていないため傷の治りが遅い、こればかりは仕方のないことだ。



 "そうなるとマスターとマイゲスでいくことになりますね"

「カミラとメーノの[再生]もシートと同様...会いにいく前に、一度顔を出してからの方が」

「女性部屋は男性厳禁ですよ、ソルス・バミア様」

棒状の<魔道具>...大きい音...高い威力...殺意の乗らない、簡単に生き物を殺せる武器...

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