あれは嘘だ
(悲鳴)
「ソルス・バミア様が意識を回復されたと聞きました!」
突如、
ダン!!
という大きな音と共に部屋のドアが開かれる。スライド式のドアらしい。
キイィィィ...
「ぅ...」
また大きなドアの音によってまた強くなった耳鳴りは、少し経っても全く引く様子はなく弱くなるだけだった。
どうやら俺の耳は相当に壊れてしまったらしい。
「これくらいだったら数日もすれば治りますよ」
とは目の前の<聖なる十字架>の談だ。
<聖なる十字架>。凄腕の治癒師が何人も集まる<聖神信仰教会>の中でも1、2を争うほど腕がいい人らしく、ここ治癒室をしきっている治癒師であり、<隔たりなき癒し>という治癒師のみで構成された<ギルド>のリーダーでもある。らしい。
「大きな<爆属性>の攻撃のくらった後ですから、肉体へのダメージは甚大です。例え耳が治っても喉が治っても、まともに動けるようになるのは1週間後でしょう」
「1週間?ってなんだ?」
「あ、そういえば知らなかったんですね。そしたら今のうちに月週日の説明を...」
ということで説明を受けて1日が終わった。勉強は1年前に教科書を読み切ったところで終わったと思っていたが、実際には全く終わっていなかったらしい。
異世界のこの日時?の単位はものすごくわかりやすく、今後も使っていこうと思えるものだった。
むしろなんでこの世界ではそれが一般的に使われていないのかわからないくらい便利なのだが。
「ぁぅぇ...?」
「なんて言ったかわかんねえから勘で答えるが、多分習慣的なやつじゃねえか?実際俺たちは...あー、数日前?までこの単位使ってなかったじゃねえか」
「ぁぁ...」
と言われ納得した。
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「あ...あ...おはよう、みんな」
「す、すごい再生力です...普通なら1週間のところ、まさかたった1日で...」
「まあ伊達に鍛えられた[再生]ではねえからな」
[再生]は習得さえしてしまえば相当楽になる。<勇者>の中でこのスキルが最も成長しているのは前線にいることが多い俺で、次いでマイゲスだ。
逆に後衛であることがほとんどなシートは[再生]を習得こそしているもののあまり成長はしていない。故にまだベッドから離れることができない。
こればかりは本人の<パーティ>での立ち位置で決まってしまうことだから仕方ない。シートを責めることはできないだろう。
さて、体が動くことを確認し、<インベントリ>から<聖剣アルカマ>を取り出し装備する。
「アルカマ、大丈夫だったか?」
"大丈夫でしたら自ら<インベントリ>には入っていません...一度鞘から抜いてもらっても"
「わかった」
鞘から本体を引き抜く...と、そこには真っ黒になってしかも真ん中から折れているバスタードソードがあった。
「これは...<爆属性>による破損ですね。あまり武器に詳しくない私でもわかります」
"その通り。あの屋敷が爆発し、その時点で納刀されていなかった私はその被害をもろにくらうことになりました"
「そういえば昨日も<爆属性>について言っていたが...」
「ああ、そういえばソルスは何も知りませんでしたね。かなり寝ていましたから」
かなり寝ていた?それってどういう...
"そのままの意味です。昨日教わった単位で伝えるのであれば、半月は眠っていました"
「えっと...?」
「まあまあ長い時間です。だからソルス・バミア様が起き上がった時、というか<勇者>様方が起き上がったとの方向があるとすぐに駆けつけていたのです。状況が状況ですから...」
コンコン
話を遮るように、扉を叩く音が聞こえた。
「どうぞ」と<聖なる十字架>が声をかければ、扉を開けてやってくる男2人。
俺たちは見たことなかったため、3人で目を合わせて不思議な顔をした。
「この方々は...?」
「どうも。俺たちはここの治安維持を任されてる<<聖神信仰教会>警備部>略して<警察>です」
「なるほど、そうだったんですね。では私たちへの用事というのは...」
「お察しの通り、前に起こったバミア家屋敷が木っ端微塵になった時のことを知りたいんですわ。なんせ、あの時に中にいた人間で今起きてんのはあんたらだけだからな、<勇者>様?」
なるほど、<警察>だったか。それだったら確かに話を聞きたいのはわかる。
だがそもそも何が起こっているのかわからない。誰か1から説明してほしい。
”では私が説明しましょう”
「うおっ、本当に喋った。やっぱ<勇者>様の武器は白金級のやつなのか」
"ゴホン...まずは単刀直入に。ソルス、あなたの父親は死にました。そして殺害した本人であり屋敷を爆破した張本人も、あなたの手で殺されました。今は死体なのかわからなくなっていることでしょう..."
爆発...?そう思い記憶を掘り返してみると、最後の光景は確かに首を刎ねたところだ。
「俺も聞いた時はショッキングだったぜ。確か生きて帰ったのは...」
「あんたらと、<勇者>カミラの近くにいた使用人だけさ。それ以外の人間は全員爆発に巻き込まれたか、圧死した。肉体が治癒不可能になるレベルで破壊されてて、ありゃ蘇生には相当金が必要になるな」
圧死?どういうことだ?
”<カナリアの羽>という<ダンジョン>があの屋敷の正体です。そしてその中に格納されていた物品全ては、<ダンジョン>が破壊されたことで他の人造<ダンジョン>の例に漏れず中身が一気に出て行きました。カミラが守ったのでそばにいた使用人はなんとかなったのでしょうが、他の使用人は全て宝に押し潰されたというわけです”
やっぱり爆発は定番ですね。




