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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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エピソードログ1 <勇者>の場合

寝落ちで睡眠の前後の記憶はない...と。

 夢をいつも見る。何もかもが■■されてしまった世界の夢。




 全てが■■され尽くされ、何もない状態。




 そんな世界で、荒廃し残骸と化した街の中を歩く夢だ。




 残骸だから、そこに人は住んでいない。本来住んでいた人は、もう既に■■された。




 ...奴も、もういない。俺が■■した。全て■■したから、俺以外いないんだ。




 でも俺だって彷徨っているだけではない。ここには、ここにいたはずの人間の痕跡がある。




 そしてそれを収集する。たったそれだけ。




 なぜか?この世界ではそういうものが消失してしまう。灰のように、塵にとなって風に吹き飛ばされ消えるのだ。




 でも俺が拾えば■■されるだけで済む。結局無くなるのは変わりないが、しかし塵になるよりいいだろう。完全に消えるより、そう、■■■■■よりもマシなんだ...




 ...天は空高く、しかし地は浅く。さりとて光も闇も吸い込む深淵は、宇宙の奥深くに。




 ============================================



「起きて......さい...!」



 ん...



「ああ...こういう時...これ...」



 あと、もうすこ



「グフっ!?」

「あ、やっと目を覚ました」



 い、一体何が...



 ...つ、杖で俺の腹を叩いたのか。



「全く、ソルスにたまにある全然起きてこない日が、なんでよりによって今日になるかねえ」

「え...?」



 なんか特別な日だった...な。



 やばい、今思い出した。



 すぐに<インベントリ>を開き装備を整える。



「おはよう、みんな。巫女様の神託は...」

「私たちの時間はとっくに過ぎましたよ。はあ、なんのために1ヶ月この宿屋に居座っていると思っているんですか?」

「な...」



 窓の外を見ると、既に空が夕焼けに染まっていた。



 俺たちの神託の時間は朝方だったから、シートの言っていることは本当なんだろう。



「そ、そうか...次受けられる日を探さないとな」



 巫女様、又の名を<聖神信仰教会>の聖女であるジャレーヌ様。彼女はこの世界で唯一この世界の神とやらに接触し、信託を授かることのできる方だ。



 半ば予言とも取れるその神託は日々多くの人が授かりに彼女の元へ訪れるため、混乱などを避けるため予約制となっている。



 1ヶ月前、ここ神聖皇国イマジ首都ルードにきた理由もそうだった、のだが、残念なことに直近で彼女に会えるタイミングというのが今日この日の朝しかなかった。



 そして、それを逃したのが今の俺たちというわけだ。



「どど、どうしますか...?も、もう1ヶ月待ちますか...?」

「俺はごめんだぜ。ここら辺に湧く魔獣は弱くて暇つぶしにすらなりゃしねえ」

「旅をしていた時はもっと強い魔獣と何度も戦ったからな。無理はない」



 しかし、今俺たちがあの巫女様からの神託を必要としていることも事実。



「信託だけは必要だ。今の俺たちには、目的があるからな」

「そうね...とりあえず、本部に戻って次の予約をしてみるのがいいと思うけど、どう?」

「それがいいでしょう。ですがその予約の席も、今日はもう一杯一杯。明日の朝、行ってみるしかありませんね」

「もう夕方だからな...」



 俺があの悪夢にうなされていたのだから、俺が悪い。それは十分承知の上で、俺は思う。



 ...あの夢は。確かに俺はここを、この街を、歩いていたと思う。



 あまり覚えていないが、しかし碌でもないことが起こっていたような気がする。



 真っ白な世界に、俺一人が歩いていて、何かを集めていた...そんな夢だったような覚えはあるが...



「ソルス...?どうしました?そんなに深く考え込んで」

「ああ、すまない。特にこれといったことは考えていなかったが」

「まあいいや。今日は取り合えず下で酒でも...」



 コンコン



 ドアが鳴る。それに気づいた俺たちは全員すぐに武器を構え、そしてここが街中で、さらに人通りもまだ多い夕方であることに気づき、それぞれの武器を納めた。



 もっとも、剣に手は置いておくが。



「...どうぞ」



 ちょうど装備の調整も済んだところだったので、俺たちに用があるのであろう客人に声をかける。



 カチャリ



 という音ともに、扉は開いた。



「...?」

「こ、この人たちは...」



 入ってきたのは甲冑に身を包んだ複数の人間。



 そしてもう一人、場違いな燕尾服に身を包んだ老紳士が入ってきた。



 ...面倒なことに巻き込まれるのは嫌だが、いやそもそも<勇者>と<魔王>自体が面倒なことか?



「お迎えにあがりました。ソルス・バミア様」



 俺の名を呼んで、深く頭を下げる爺や。



 まさかとは思ったが、やはりそうだった。



 俺は、この人たちを知っている。



「知り合い?」

「ああ。それも家族ぐるみのね...久しぶり、爺や」

「爺や、ってことは...執事か!?」

「そういうことになりますね」



 華美な装飾を施された甲冑の胸の辺りには、家柄を示すマークが彫られている。



 そのマークは俺にとって見覚えのあるものであり、また自分も今現在鎧の襟に彫っているもの。



 すなわち、俺の家系であることを示すものだ。



「メルト様がお呼びです」

「父さんが?」

「はい」



 父さん...今度は一体何の用だ?



 俺を<勇者>ではなく便利屋扱いしているような気がする。



「ソルス、メルトって...」

「メルト・バミア。俺の父さんであり<伝説の20人>のうちの一人だ」

「やっぱり...だからあんなに剣の扱いが上手いのね」

「父さんのお墨付きの天才でもあるからな、俺は」



 ネームバリューのおかげでとてもありがたい。が、何度も変な<クエスト>を渡してくるのは正直困る。



「そういえば、ニャージーランドへ行けと言ったのも、ソルスのお父様でしたね」

「かなり前になるけどな。それ以外にも何度も押し付けてくるんだよ」

「あー...た、確かに何度もあります。というか、わ、私たちが受けた<クエスト>の3割がメルト・バミア様の紹介ですね」



 ノートを取り出しそれを見ながら言うカミラ。なぜか父さんは俺に関わろうとしてくるんだよな。



「だけど呼んでいるってどういうことだ?いつもみたいに<通話>でいいじゃないか」

「会って話がしたいとのことです。ささ、馬車は用意しておりますので他の方もどうぞ...」



 一歩引く爺や。しかしその目は絶対に連れて行くという確固たる意思を感じる。



「どうするのですか?」

「...正直に聞こうか。父さんに俺たち5人で勝てると思うか?」

「いや無理だろ」

「お前が即答するのか」

「俺が即答できるくらい無理ってことだよ。実の息子なら、父親の実力くらい知ってるだろ?」



 それはもちろん、嫌というほど。



 でも...



「...0勝0分142敗」

「ソルスの、お、お父様に負けた...?」

「いや、目の前の爺やに負けた回数だ」

「何!?」



 一番戦ったことの多い相手は爺やだ。



 父さんは仕事で忙しいことがほとんどだから、見てもらったことはあっても試合ができたことはほとんどなかった。



 もっとも、4年で計3回あったがその全てで負けているから、実力は知っているが。



「そ、そんなに強いのこの人?」

「ほっほっほ、昔の話です。老いた今では」

「まだ2年しか経ってないし、見た目も全く変わってない。わかってるからな、爺やがドラっていう拳闘士で、<伝説の20人>のうちの1人なの」

「バレてましたか」

「え...ええ!?」



 驚く爺やと俺以外のこの場にいる全員。鎧の人たちまで知らなかったか。



「さて、ということはまあ...ここで逃げたとしてもまず負けるからな。俺たちについて行く以外の道はないわけだ」

「だろうな...無理だろ、<伝説の20人>は」

「今の私たちじゃ、と、到底倒せる相手ではない、で、ですね」



<伝説の20人>は格が違う。それこそ、あの<魔王>が使役している<神話生物>とやらを単独で撃破しうるレベルの強さを全員が持っている。



 俺たちはまだ弱い、相手にすることすら憚られるだろう。



「わかって頂けて何よりです。それでは...ご同行、頂けますね?」

こっから数話、エピローグが続きます。幕間みたいなものですね

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