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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第一章 未狂理解不能
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脱出...したのかもしれないし、できたのかもしれない

注意!人がまた死にます。最近死んでばっかりだあ。



今日は間に合いました。

「ん...なんの音だ...?」


 蹴られた蝋燭によってできた音に気づいたのは、蝋燭の着地地点に一番近いやつだった。


 そして、そいつのことを僕が認識した瞬間。




 体が宙に浮いた。と思ったら、すごい勢いで出口の方へ移動を始めた。


 いくらなんでも速すぎる。まだ30秒も経ってないのに、真後ろを見ても出口が見えない。


 横を見る。左側には僕を右腕で抱えて走ってるエリカさんがいて、右側にはリーシャちゃんを背負って走っているマナさんがいた。


 いや、まあエリカさんだとは思ったけどさ。これだけ身体能力が高ければ脱出なんて...って、確か「<護符>で脱出できない」とか言ってたっけ。


 色々とツッコミしかないけど、今喋ると舌噛むしやめよう。今は、せめて抱えているこの(ショゴス)を落とさないようにしないと。


 ...そういえば、ショゴスって本に変身できたっけ?


 ピシュウッ!


 とその考えを止めてくる何かは、僕の右側を通り抜けていく。


 あれは...矢?てことは...


 ギュンと急に右に平行移動する。移動しなかった時にエリカさんがいたはずの場所を、数本の矢が貫く。


 横目で後ろを確認する。頭を出して確認するとあたっちゃうかもしれないしね。


 後ろには...馬車。結構な速さで僕たちは移動しているはずなので、馬車の方も相当な速さを出している。


 そして馬車の荷台から見える人は、弓を持っているやつがいることもわかる。


 ピピピシュウッ!


 と馬車から放たれた数本の矢。もちろん回避する...


 ザクッ


 否、深々と刺さる音。しかしエリカさんは刺されていないし、僕だって刺されていなかった。


 その音は、右側から。瞬間的にそちら側を見る。




 ...そこには、おそらく矢が当たらないようにリーシャちゃんを抱えていたマナさんが、リーシャちゃんごと2本の矢に貫かれた状態で走っていた。


「マナ!!!」


 叫ぶエリカさん、マナさんは答えず。しかし叫びに応えるかのように、


「っ!<聖域起動>ッ!」


 マナさんも叫ぶ。すると、マナさんの文字通り"眼"の前に光る魔法陣が浮かぶ。


 聖域、と言っていたかな。何かの世界みたいなのを出すと思われるけど...


 ふと、マナさんの手元をよく見る。そこではリーシャちゃんに回復魔法が使われているように見える。が、矢が刺さっている状態のため回復しているようには見えない。


 しかも、マナさんは自分のことを回復させてないようにも思える。出血がリーシャちゃんは止まっているのに対して、マナさんは背中と腹から流れ出ているのがその証拠だろう。


 ...つまり、マナさんはリーシャちゃんを優先的に回復しているということ。そんなところまで考えて、いつも以上に頭が冴え渡っていることに気づく。


 なら...今までだと思い付かないことも思いつくか?何か、マナさんの手助けになることは...




 スッと何かが落ちる、気がした。


 その勢いで、魔力を手のひらから本へ。


 そしてそのまま真後ろへ、投げる。


 投げながら、ただ一言。


『喰え』


 マナさんが叫んでからここに至るまで、わずか3秒。いつもの僕なら絶対に出来得ない秒数だ。


 ガシャーン!と、盛大に何かが壊れる音。同時に、グシャリというまるで生き物がつぶれたかのような音。


 後ろを見る。そこには、上半分が消えた馬車とそれに乗ったショゴスが。


 それは文字通り、馬の体も、馬車自体も、なんなら3人ほど足首以外残ってないやつがいた。生き残ったのは...5人。


 もはや馬車とはいえないそれは、そのまま勢いを地面にぶつけながら止まった。


 不意に、ゴッとすごいGが僕の体にかかる。エリカさんが急停止したらしい。


 すると白い膜のようなものがマナさん中心に広がり、ある程度のところで止まった。マナさんも急停止したみたいだけど、手は休めていない。


 この、膜のようなものが<聖域>か?結界のようなものなのだろうか。


「抜くよ」

「うん」


 そう聞こえ振り向くと、エリカさんが矢をリーシャちゃん側から引っこ抜いていた。続けて、もう一本も。


「■■■■■■■」


 声にならない、悲鳴。それはリーシャちゃんからのもので、マナさんは歯を食いしばって耐えている。


 すると、今まで流れていた血が止まった。それどころか、リーシャちゃんの胸に空いていた2個の穴が、みるみるうちに塞がっていく。


 ほっと一息。あれならもうリーシャちゃんとマナさんは大丈夫そうだけど、あと心配なのは...


 そのまま右を向く。()()の残骸の上で、ショゴスは戦っているのだが、あれはそもそも戦いなのだろうか。


 僕たちを追ってきた奴らは必死に戦っている。元々ショゴスの動きがあまり速くないのもあって、剣やら槍やらの攻撃は当たっている。


 が、()()()()()()()。切り裂かれ、貫かれた場所はすぐに元通りになり、恐怖で染まる奴らを順に体内に入れていくショゴス。


「うわあああぁぁぁ!」


 突然、こちらに駆け寄ってくる男。咄嗟にエリカさんが迎撃体制を取る...


 しかし、そんなものはいらないことはわかる。


「がはっ!」


 男の、急な吐血。腹からは血とそれにまみれた黒い触手。


 男の横からも触手が伸びて、そのまま男をぐるぐると3周半。


「た、助け」


 そんな命乞いも虚しく、奥へ引っ張られていく男。叫ぼうとするが、開いた口が触手で埋められたため声すら出ない。


 ぬるっと音もなくショゴスの中に入った男は、もがいてももがいても一向に出られないショゴスの体内で暴れると、急に動きが止まった。脱力しているのが見て取れるため、窒息したと考えるのが妥当だろう。


「...」

「...」

「...」


 束の間の、静寂。それを破ったのは...


オナカイッパイ!(テケリ・リ)

『あ、うん。急だったけどありがとうね』

イエイエ、(テケリ・リ)デザートニハ(テケリ・リ)チョウドヨカッタデス(テケリ・リ)


 帰ってきたショゴスだった。馬も消えているから、量的には馬二頭(実質一頭)と8人かそこらの人間のはずだけど、主食よりデザートの方が多い...?


 よし、考えるのをやめよう。もとよりショゴスには健康のKの字もないはずだし。


『あ、まだ奴らがくるかもだからそのままの状態でいてね』

リョウカイデス!(テケリ・リ)


 一応ショゴスに待機命令を出しておいて、マナさんたちに話しかける。


「マナさん、からだのほうは...」

「だいじょおぶ、回復したよお」


 と言うマナさんの顔は、とてもやつれている。


「いや、マナ。あなたリーシャちゃんの回復を優先してたからまだ回復しきってないでしょ」

「あらあ、エリカにはお見通しってことお?」


 と少しボケるマナさんだが、少なくとも一目見ただけでやつれているのが誰でもわかるくらいなので、しきってないどころか全く回復していないと見るのが妥当だろう。


「それに、さ。マナ、今のMP言ってみて」

「.........100くらい?」

「本当に?」

「...うそ、このタイミングで0になりまあす」


 ふっと、周りの白い膜が消える。明るかった視界もすぐに暗くなり、世界に静寂が訪れる。


「はあ。とにかく、マナが回復するまでここで休憩するからね。マリアちゃん、異論は?」

「ないよー」


 即答。だって、ショゴスのおかげでほぼ安全だしね。



お姉さん2人に女児2人


夜に危なくないですか?

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