蹂躙
さて、少し本気を出しましょうか
エリカが後ろにダッシュ。それと同時に奴と向き合う。
「これ、もう何回目?」
3回くらいやってるこの行動。戦うたびに何かが介入してきて、不完全燃焼に終わってしまう。
でも。
「こうなったら、もう誰も来ない」
「■■■■■」
うるさい。手を払って頭を砕き、そのまま手の中のものを口腔器官へと突っ込む。
...薬か何かで肉体と精神を変化させているのか。よくこんな技術を生み出したものですね。
「捕食で情報を得るのか」
「捕食?ただの調査でしかないわよ」
ゆっくりと、静かに歩み寄る。
なんてことはせず一気に間合いを詰める。
「!?」
「遅い」
ぶん殴る。ただ力一杯殴る。
たまたま避けられたけど、その下にある地面は抉れていく。
余波で空間も吹き飛ばされ、僕の腕も吹き飛んだ。
「って、加減ミスっちゃったよ」
右腕を生やして追撃へ向かう。
「っちぃ!!これが神格の」
「舌噛み切るよ?」
右手を顎に思い切り当て、頭蓋を震わせる。いわゆる脳震盪というやつだが。
「うぐっ!?」
目の焦点がズレ、膝から崩れ落ちる。
いやそう見せかけての蹴り上げか、さすがは醜悪王。
でも、狙いは悪い。顎に当たるそれで僕と同じように脳震盪を狙ったのだろうけど...
頭が吹っ飛ぶ。空へと飛んだ頭をよそに、私は奴の股間に踵を落とす。
「!?!?」
流石に悶絶する醜悪王。そこに攻撃を叩き込む。
手のひらの歯で抉れば、肉が、骨が、血が飛び散っていく。
「ほら、まだ私に何かできないのですか?」
「ぬ、ぬうう...」
動けない醜悪王を連続で殴り続け
「<流転傷>」
そこから一瞬で立ち直り形成が逆転はしなかった。
傷が一瞬で治ったのち、私はすぐにやつの爪に手を当て、右手を傷つけさせた。
瞬間、右手が吹っ飛んだ。が問題なく右手を生み出し掴みかかる。
「がはっ!?」
「残念、私を誰だと思っている?お前のそれは...」
バキッ
首の骨を折る。
「すでに対策済みだ」
...<ゴブリン>の息の根は、止まっていない。
「どうだ、少しは絶望したか?」
「く、くそ...」
「まだか。ならもう少し」
と思った矢先、力を抜いた瞬間に奴はホールドから脱出した。
でもそれは想定内だ。脱出するために立ち上がった右脚を粉砕する。
「っあ!?」
「もう少し周りを見た方がいいよ。君は、すでに勝ち目が」
「<流転傷>!!」
治った足に掴んでいた僕の腕を、いや腕ごと私を持ち上げて投げ飛ばす。
真上に。
「<雷矢>!!」
飛んでくるそれを回避せず受け止め、逆に掴んでまとめていく。
「何!?」
「<装甲>の応用、<魔力>を纏った手であればこのように...」
丸めたそれを投げつける。
「くっ」
なお、<方向>により必中である。
「があああ!!」
「魔法を整形することが可能です。せめて形状を固定化するべきでしたね」
「かはっ、そんなことするやつお前以外」
「ええ?旧支配者なら誰でもできる芸当ですが?」
え、そうだったの。
さすが<魔術>専攻の旧支配者、ということで済む話ではないと思うけど、すごいなそれ。
僕もいつかできるようになるといいな。
「くそ、<流転傷>!」
「そんな頻度で<魔術>を使用すればすぐにMPは尽き」
「ぬうううん!!」
岩を持ち上げ投げて、って速い!
「問題ありません」
右手の口で思いっきり吸う。すると、そこに岩が吸い寄せられていく。
岩の速度なんて関係ない。ただの1回吸っただけで、それは手のひらに収まった。
「そら、お返しします、よ!!」
勢いよく投げれば、それは先ほどの岩が可愛く見えるほどの速度で飛んでいき、無論醜悪王は当たらざるを得なかった。
さらに、まるでガラスのように粉々に崩れ落ちる岩の隙間を縫って移動、右ストレートが決まる。
「うぐっ、き、<傷の」
「くどい」
右手を口の中に突っ込み、顎を下から膝蹴りすることで腕を噛み切らせ、自立化。
「食いちぎる」
「!?!?!?」
体の中を高速で移動しながら食い尽くしていく様は、まるで腹が減ったドブネズミを使う拷問のようであった。
確かそういうのがあったはず。
「ああ、そういうのもありでしたか」
パチン、と指を鳴らせば
...ガシャン!!
何かが出てくる。これは...金属の塊か?
鉄っぽい見た目のそれは、綺麗な立方体の状態で出てきた。
さらにパチン。
...カラン
と軽い音と共に地中から出てきたのは、これまた金属。
だけど...なんか小さい?それにぬてぬてしてるし...
「含有量が少なかったですか。まあいいでしょう」
というと小さい方の金属を拾って、
「ふっ」
投げた。
それは中に浮く金属塊の真横を通り、って。
その瞬間、投げた金属塊が燃え出した。
そしてその金属塊は醜悪王の腹に命中し、
「ぐ、おおおおおお!!」
血に濡れた肉体を燃え上がらせた。<ゴブリン>の血って燃えるのか。
「奴らがどうやってランタンなどを作っていたのか、というのはこれが理由です。発火しやすい性質を持っているのですから、死んだ同胞の血を使って明かりを制作していたのでしょう」
なるほどねえ。
遊ばないとこうなってしまうんですね




