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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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当たり前のような初見殺し

文字通りです。

<方向>。いわゆるベクトル変更を任意に行える魔術。



 ほとんどの状況で使うことはないが、覚えていると役に立つことがある。例えばものすごい速度で吹っ飛ばされた時、戻れなくなる前に真逆の方向に動くようにするとか。



 例えば今回のように、本来当たらない状態でも重力などの影響で速度が出ていればまず間違いなく命中する突進となる。



「それで、超高速突進のお味はいかが?」

「くふっ...」



 既に数十秒は当たってから経ったはずだけど、まだ腹を抱えて唸っている。



 流石にあの速度の人間砲弾は痛かったのだろう。<装甲>すら貫通して脇腹を抉っている。



「でも、終わっていない。そうだろう?」

「ぐ、あ、ああ...そうだ...」



 瞬間、醜悪王の肉体が元に戻り、それと同時に棍棒が後ろから飛んできた。



「!?」



 すぐに上体を地面に接地させ避ける。が。



「隙だらけだ」

「いっ、がはっ!?」



 強力な棍棒の一撃が背中を襲う。その衝撃で倒れ込み、



「避けない、いや、避けられないのか」



 追撃が僕の体を襲う。ペシャンコにするかのように何度も何度も、念入りに叩きつけてくる。



 くそ、マジで痛いぞこれ。<装甲>を貼り直す余裕もないからこの状況を打破するには力押ししかない。



 となると...<魔力撃>を右手で使い、地面に叩きつける。



「ほう」

「ぐっ...」



 吹っ飛ぶ体をなんとか制御し、向き直る。そこには、全く傷のない醜悪王の姿が。



「...気になるか?<流転傷>、という俺が編み出した<魔術>だ」



  <流転傷>。どんなものなのかはリーシャとアンジェリアのあのボロボロさを見ればよくわかる。



 そもそも、彼女らが2vs1で傷1つ与えないはずがないのだ。なのにあんな状況になるというのは、流石に何かおかしいことがあったに違いない。



 そしておそらくだけど、さっき言ってた<流転傷>という<魔術>がその正体。おそらく受けた傷をなんらかのもの、即座に返されなかったことから対象に対する攻撃力を大幅に上げるように変換するのだろう。



 しかも傷は回復。相手にその後攻撃を当てれば一気に攻撃できる。それならあそこまでボロボロなのも説明がつく。



 ...背骨、治らないな。かなりぐちゃぐちゃにやられたからさっさと治って欲しいのだけど。



「どうした?さっきまでの威勢がまるで見えないぞ。腰を曲げ、こちらを注視し続けるそれは神話生物が取る行動とは思えないのだが?」



 そりゃ警戒するわな。初見殺し多いんだもん。



 <雷矢>、<流転傷>。見たことのないものがたくさんなわけだがね、次何がくるかわからないのだから、何がきてもいいようにするのが普通だろう。



 ...まあ、僕の場合は時間稼ぎっていうのもあるけど。



「...」

「...まあいい。そちらがその気なのであれば、こちらもそれで答えるだけだ」



 縦振り。見たことのない速度で繰り出されるそれを受け止めるしかない僕。



 しかし背骨がない今。体幹は筋肉のみで成り立っている。体が悲鳴を上げるのも時間の問題だろう。



 じゃあ避ければというとそうはいかない。なんたって体感がほとんどないんだ。姿勢が崩れたらあっという間に倒れ込んでさっきの状態に逆戻りだ。



 ...やばいな。勘付かれたか?



「このまま筋力勝負していてもいいが...どうする?お前の足、どんどん地面に埋もれていっているぞ?」



 同時にメキメキという嫌な音もなっているのを聞き逃すはずもなく。



 流石に分が悪いな。どうする...?



「...くくく」

「??」



 いや、切るか。カードを。本来は切ってはいけないそれを。



 もう、後少しだから。



「いやね。僕はこう思うんだよ、僕はいつもこんな状況ばっかだな、って」

「...?」

「まあお前はわからないだろうけどさ。僕って結構殺されそうになること多いんだよね。<ドラゴン>に大火傷にされたり、犬に五体分裂させられたり、背骨バラバラで力比べさせられてる。今も力が抜けそうだし、抜けたら間違いなく地面のシミになっちゃうだろうね」



 そう話すと、醜悪王はニヤリと笑みを浮かべた。



「そうか。なら今回は死ぬことになりそうだな。お前を殺そうとした奴らがどんな腑抜けた奴らかは知らんが...」

「ああいや、多分今回も生き残るんだよね。それも相当な激痛を保った状態で」

「何?」



 こちらもニヤリとする。距離的には...あと2km。



「だって、毎回外的要因によって生き残ってるから。大体はメェーちゃん関連だけど...ああ、今回もそういうことになるかな」

「...まさか!?」



 上を見上げる醜悪王。流石にここまでヒントがあれば気づくか。



「っ、だがそれよりも先に!」



 やべ、一気に力が強くなった。



 バキバキバキという音とともに折りたたまれていく足。腕。そもそも片腕片足でこれをなんとかしていたのは本当にすごいことだと思う。



 まあ、もうする必要もないのだろうけど。






 バゴン!



 軽快な音と共に吹っ飛んでいく棍棒、今までなったことのない音なのは、おそらく装備を身につけていることによるステータス強化によって、僕らが今まで出していたどんな威力よりも強いからだろう。



「なんだと!?」

「おっと、ここは<<インベントリ>使用不可区域>なんだね。そりゃあマリアも苦戦するわけだ」



 短いこの世界の人生の中で、多分3番目に安心できる声が聞こえ。



「<聖域展開>。お待たせえ、マリアあ!」



 ...ああ。



「お姉、ちゃん」

「ええ、今お姉ちゃんって言ったあ!?言ったよねえ!?」

「いや言ってないよ。マナお姉様」

彼女らの登場も、ある意味では初見殺しでしょうか。



マジで何話ぶりの本編登場だ...?

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