流石に11の丸い数字はなかった
まだ続く、それほど奴は強いです。
そしてそれほどどっかの<魔王>は弱かった。
姿勢を低くして走り、いや前に跳ぶと言った方が正しいけど、速度を可能な限り出す。
開いた目に映るのはもう奴しかいない。それ以外見ずに真っ直ぐ突っ込む。
醜悪王は棍棒を横なぎに振ることで僕を殺そうとする。もちろん、当たったら即死級のダメージが入るのは確実だろう。
ガン!!!
そしてそれに真っ直ぐ突っ込んだ。が僕に当たったところで傷はなかった。
まるで鋼鉄にぶつかったかのような音が響いて、足を止めずに僕は地面に手をついて減速を抑え蹴りを放つ。
速度は力、ものすごく乗っているこの蹴りの威力は絶大だし、そもそも人体だけで与えられる最も強い攻撃は蹴りであることからも攻撃力の高さは分かりきっているだろう。しかも攻撃をした瞬間の醜悪王にこれを狙っているのだ、まず当たる。
ガン!!!
そして当たった。だけどなんか妙だな、まるで当たったような気がしない。
まるで鋼鉄にぶつけたかのような...あ。
「気づいたか」
「へえ、お前も使っているのか」
この<魔術>は神話生物と呼称されるもの達の中では広く使われている。<魔術>の書かれている本にそれが書かれていても不思議ではないが...
「あれ、<魔術>だぞ。お前が使える代物ではない」
「そうだな。だから改造した、使えるようにな」
「は?」
「<装甲>。結界の派生であるこの<魔術>は自分に対するダメージを一定値だけ下げる効果がある。その低減量は使用者がこの<魔術>に使った<魔力>量によって決まる...」
そう。これが旧支配者が作成した防御用の<魔術>。過去に私たち旧支配者と旧神が戦った際に流出してしまったもの。
そして、最強の<魔術>だ。
「あ、それ派生じゃないよ。<装甲>から<結界>になったんだ」
「そうだったのか」
「そうなんだよ」
互いにパンチ。同時に互いに当たったそれは、<装甲>の覆われていない互いの拳を吹っ飛ばし、その勢いで互いの体を引き離した。
これが<装甲>の弱点なんだけど、やっぱりそれは理解しているよね。
「さてそうなると...」
情報戦においては変わらず、地の利はない。
力は僕ら、いやそれもあっち側有利か。今の僕は怪我をしているからね、本来の力は全く出せていないし、何よりまだ解放されきってない。
となるのであれば...
「...ふふ、いやいっか。このまま殴り合おう」
作戦変更、時間稼ぎだ。
口の中に小石を入れ砕きながら走る。あいつもこちらに走って、いや岩を投げてきた。
まるで隕石のように降ってくるそれを避けつつ前進...いや、ちょっと試してみるか。
「ほっ」
衝撃を推進力にしているので、無論上方向にも跳ぶことができる。
そしてちゃんと落下位置の計算をすれば、その岩にも乗ることができる。隕石のように熱を持っているわけじゃないから素足でも安心だ。
で。飛び移ったらそこからさらに飛び移って行く。それを繰り返し、高みへ登る。
...ただ流石に脱出はできないか。そんな高くまでは投石してこない。
だけどここまで高いところであればいける。現在高度100m、こっから落下すれば...
90、さすがに醜悪王も気付いたのだろう。僕に対して投げる岩の密度を高くしてきた。
80、しかし私はすでにその回避予測を行っている。避けるのは容易い。
70、と、今度は一個一個を高速で投げてきますか。確かに弾幕よりも当てられるかもしれませんが。
60、残念ながら<装甲>は既に張ってある。ろくなことがない限りこれが破られることは
50、あった。ついに<雷矢>を放ってきた。この速さだと避けるのは難しく、受けざるを得ないけど...
40、このままだと落下し切る前に僕の<装甲>が砕け<雷矢>が当たるな。一体どうしたものやら。
30、閃いた。落下姿勢を頭が下になるように調整、勢いを上げていく。これで当たりにくくなり且つ速度も上がる。
20、でも速度が上がるということは軌道修正がしにくくなることも意味する。この距離であればもう軌道は変えることが出来ない。
10、もちろんそれをわかっている醜悪王は、既に軌道外にいる。このままだと地面に激突することになるだろう。
5、でもね。
「<方向>」
「!?」
ここで僕の移動のベクトルを変えたらどうなる?
0、当たるんだよ。
何に気付いたのでしょうか




