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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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>キング・ゴブリン<戦⑦ フィニッシュ

諸事情で時間がかかったので、もう1話あります。

 さて、今はそんなことを考えている場合じゃない。そういう後の事を考えるのは、ここから生きて帰ってきた時だろう。



 もう一度周りを見渡す。大きな穴ともいうべきこの場所は、少し水が張っている地面と、返しの形になっている天井、ごつごつとした壁に囲まれている。



 ただ天井の中央部分は空が見えるくらい大きく開いている。そのおかげで今の時間帯もある程度わかる。



「...」

「どうした?」

「いや...>キング・ゴブリン<はまだ生きているはずだけど、いっこうに上がってこないからさ」



 崩落によってこの場所は形成され、そしてその崩落には僕らも巻き込まれた。



 それは醜悪王も一緒である。だが僕たちが生き残っているということは、同時に醜悪王も生き残っている可能性が高い。



 身体能力という点に関してはアンジェリアが優っている。だからこそあの状況を、崩落を耐えれたわけだけど。



 おそらく総合的に見たら>キング・ゴブリン<の方が強いだろう。<ダンジョンボス>である以上、この<ダンジョン>の<制限>にはなれているだろうし、知能があるならそれを克服する手立ても見つけていそうだ。



 また水を動力としていたのなら、同時に放水時の対処も考えていそうだけど...



「深きものと一緒に...いや、まさかね」



 肉体の僕、それは絶対にあり得ない。



 と言いたいけどありえるな。水中は奴らのテリトリー、この状況を打破していてもおかしくない。



 それに



 ボコボコ



「っ!?なんだ!?」

「あっちの方向から...!」



 ボコボコ



 聞こえてくるこの空気の破裂音。



 間違いない。水中で空気を吐いた時に生じるあぶくだ。



 ボコボコ



「人間の...」

「流石にそれはないだろう。まず間違いなく>キング・ゴブリン<のものだろうな」



 ボコボコ



 あぶくは壁の近くで出てきていた。



 そしてそのあぶくは、薄く張っている水を移動してくる。



 ボコボコ



「本体は...見えない?」

「え?」



 その速度はゆっくりではなく、むしろ泳いでいると言った方がいいような気がするほど速い。



 しかも人間の泳ぐ速度よりも速い。



 ボコボコ



 そして僕らの前方10mくらいの場所で、



 ザッパーン!



 それらは、飛び出てきた。






「...ふう。流石にあの崩落は危なかった。彼がいなければ、死んでいたかもしれん」

「...」



 片方は醜悪王。服は全くの無傷であるが、肉体的疲労は少しも見られない。



 つまりほぼダメージなし。さすがだと言いたいが...



 僕にとって問題なのはもう片方だった。



 体全体の80%を占める人間サイズの細長い魚、そこに大きい足と手をくっつけ人間のような見た目をしている緑色の化け物。



 すなわち、深きもの。なぜここにいるのかはわからないけど、残念なことに僕はそれ以外のことに思考を回している。



「...深きものに、地面を潜航する能力はない」



 やつらは海に住む種族であり、無論それは泳ぐことを得意とする理由にもなる。



 だがだとしても薄く張った水を泳ぐことはできず、ましてや表面に出てこない方法はない。浜辺でばた足している水が嫌いな人と同じようなことしかできないはず。



 でもそれをやっているということは。



「...<変異>」

「え?」

「あれは、神話生物だ。僕のよく知る、旧支配者の部下の部下、あるいはその末裔だ」



 フシュルルル...という鳴き声。鳴き声?だろう、多分。



 反応みたいなものだろうが、それはおそらく僕の言葉に反応したのだろう。



「そいつらは人間よりも強く、そして不死だ」

「不死...アンデットということか?」

「それよりもタチが悪い。知能は人間並、軍隊行動も平気でするようなやつだけど、今この状況においては非常にまずい事柄が発覚している。それも2つ」



 睨みつけてくる深きものは、まるで僕を選別しているかのようだ。



 言葉にするなら、こいつは一体どこまで俺のことを知っているのか、だろう。



「まず、こいつはおそらく<変異>している。本来魔獣にしか適用されないがもしも神話生物が魔獣と同じ性質としてこの世界で設定されているのならしていてもおかしくないわけだけど」

「お、おう。もう少しわかりやすく、そしてゆっくり喋ってくれ」



 む、これでも遅くしてかなり砕いて説明したのだけど。



「じゃあ、こいつは神話生物っていう魔獣の上位互換みたいな存在で、そんな奴が<変異>してしまっている」



 納得はできただろうかいやしてもらう。



「そしてもう一つ。その<変異>のおかげかとんでもなく強くなっている」

「具体的には...?」

「流石にそこまではわからないけど...」



<変異>。時折魔獣が急激に強くなる現象らしいが、その原理はなんとなくわかる。



 ヒントは[召喚]で呼び出した<召喚獣>を強化するために使う<魔力解放>だ。



 あれは自分のMP、<魔力>を<召喚獣>に与えることで一時的に強化するものだが。



<魔力>の塊はエネルギーだ。<魔力撃>がそれを証明しているわけで、つまり強すぎるエネルギーは時に武器になる。



 そんなことがもし自然現象としてたまたま魔獣に起きたらどうなるだろう。それが<変異>なのではないだろうか。



 そしてもしそれが当たっているのなら、目の前の奴が<変異>を起こしていると仮定するのなら。



 深きものは神話生物だ。つまり神話生物に<魔力解放>した時と同じことが考えられる。



 すなわち。



「僕は、神話生物の中でも戦闘能力に秀でた奴が<勇者>5人と戦っている姿を見たことがある」

「...」

「その5人は全員が深傷を負った。なんとか勝利はしていない」

「え?」

「審判は勝利したと言った。でも...」



 実際には死んでいない。そう、死んでいなかった。



 深きものは基本不死だ。ということは神と同じことが言えるわけで。



「そんな奴と、今から僕たちは深傷を負った状態で戦うことにn」

「いや、僕たちではなく僕だ」

「!?」



 瞬間、地面が振動を始めた。



 水が波を起こし、飛沫をあげる。これは、相当強い地震のようだ。



 立っていられない。地面に手をついて頭を守るように手でガード、安全なようにする。



 ...揺れは30秒ほど続き、そして止んだ。が。



 顔を上げれば、10m先に深きものが一人。



 見渡せば、ここには僕と奴だけ。



「...は?」



 いや、一人じゃない。大きな壁が新しくできているようで、その奥から声が聞こえてきた。



 リーシャの声だった。



「な、リーシャ!無事か!」

「はい!無事です!マリアの方は!」

「僕もだいj」

「防音壁も設けるか」



 声が聞こえた瞬間、リーシャの声が途切れた。



 最後の声は、壁の奥から、そしてその声は醜悪王のもの。



「...」

「...なるほど、僕を殺すのなら本気を出すと」



 出されても困るけどね。だって僕棍棒の攻撃をずっと避け続けたけど、それ以外は何にもできないしもうすでに満身創痍なのよね。



 深きものは神話生物。本来なら勝てる相手じゃないのだけど。



「...」

「...」



 睨み合うが、どうやら相手の意思は変わらないらしい。



「僕、君の上司の上司の友人と知り合いなのだけど」

「...!」



 喋った瞬間、それは突っ込んできた。



 ...戦うしか、ないらしい。

当社比約50%増

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