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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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>キング・ゴブリン<戦⑥ 超必

明るい話とクトゥルフ神話の話が近づくと露骨に長くなり始めます。

 ガラガラガラ...



「なるほどな。異世界にはそんな技術があるのか」

「<魔力>以外にも光は灯せるんですね」

「まあ、僕からしてみれば<魔力>の方が異常と...お」



 地球では一般的な電気や科学について説明していたら、時間はかなり経ってしまっていた。



 おかげで重い岩や瓦礫が沈み地面のようになっている。水没はしているが足が取られない程度のもの、これくらいであればあってもなくても変わらない。



 しかし僕はこの状況を見てもなんとも思わなかった。というか、>キング・ゴブリン<が見えていなくて一安心している。



 ではなにに?



「ん?...これは」

「外の光です...!!」



 先ほどまでは深淵の真っ只中と言っていいほど暗く、目が慣れていなければ自分の手すら見えなかった。水流と崩落で灯りのほとんどは流され潰されたのだから、当然だ。



 しかし、崩落が止まると自重に耐えきれなくなった地上の地面がさらに崩れてきた。動植物も一緒に巻き込みながら、かなりの範囲が崩れたのだと思う。



 実際、ここには光が届いてきている。目の錯覚で自分の視界の40%ほどの大きさまで縮小しているけど、それでもよかった。



 太陽光。1ヶ月近く見なかった神の化身が発するそれを、僕は久しぶりに浴びることができたのだ。



 そして同時に、今の時刻が午前〜夕方までのどこかということもわかった。ある程度見える空の色と、そもそも太陽光が入ってきている時点で、それは誰にでもわかることだろう。



「...こうやって上を見ていると、やっぱり空って人間にとって大事なものなんだなと痛感してくる」

「どうしたの?急に」



 アンジェリアが言ってることはまあ理解できるけど、でもあんたがいうことじゃないだろう。



「...なあ、わかってるか?」

「何がですか?」

「私たち、いや厳密には実行犯が私で計画犯がマリアなのだが」

「え?」



 あ、理解できた。確かにそりゃそうだわ。






「あれでしょ?この崩落によってほとんどの<ゴブリン>は殺したけど、それと同時に地下に捕まっていた人達も全員殺したっていう」

「な...え??」

「ああ。この崩落によって彼ら彼女らが助かる可能性はほぼ皆無だろう。水に流されて死ぬか、それとも崩落に巻き込まれて死ぬか、はたまた餓死か窒息死か...いずれにせよ外界と接触することはまず無理となってしまっただろうな。私達以外は、だが」



 これほど脆いのであればエレベーターが<ゴブリン>によって造られたことに説明がつくけど、そもそもエレベーターとは階層を繋げるもの。



 縦穴で繋がっているであろうここから10階まで、おそらく浸水どころの騒ぎではなくなているはずだ。



 これはあの勢いでずっと流れ続けたのになぜ止まったら崩落後の残骸とほぼ同じ水位なのかという問いの理由にもなる。地下に空間があれば、そこに水は流れていく。例え水路があったとしても、勢いが勢いなのでまず間違いなく水は溜まっていくことになってしまうだろう。無論呼吸ができなければ人は死ぬ、これはこの世界でも当たり前らしい。



 また奇跡的に浸水しなくてもだ。これほどここの天井が脆いなら、まず間違いなく他の階層も意外と脆いはず。それは鉱山地帯であった7階をみればわかることだ。



 本来<ダンジョン>は相応の力がないと改変できない。のだと思う。じゃなかったら<ダンジョン>攻略は直下掘りだけで達成できてしまうし、それをイスの偉大なる種族は許さないだろう。



 でもここは違う。敢えて脆くし、尚且つ下へ広げるように作ることで改造のしやすさを飛躍的に上昇させた。それがこの<ダンジョン>なのだ。



 だから<ゴブリン>はエレベーターを造ることができたのだろうけど、ともなれば崩れやすいということでもある。



 階層の崩落に乗じて、本来あるはずの上の階層までもが崩落し今空が見えている。なら下の階も、というわけだ。



 で。そんな災害を引き起こしたのは言うまでもなくアンジェリアであり、それを主導したのは僕である。



「さて、これが各国に知れ渡ったらどうなると思う?」

「そ、即刻お縄」

「だねえ。危険人物であることはさることながら、魔獣から逃げるためとはいえ大量殺人て」



 結果的にそうなってしまったわけだけど、事実は事実。人の目につく場に戻れば、守護騎士団のような連中が動き出してくるだろう。



「でででも攫ったのは<ゴブリン>ですよ!?」

「それでも人間を殺すのはよくないだとか何とか言うんだろうな。ちなみにリーシャ、君も多分共謀の罪か何かに問われると思うぞ」

「あ...あうう...」



 リーシャがショートしてしまったが、しかし仕方のないことではある。



 急に殺人犯になったのだから。



「まあでも今更かなあ。<勇者>もそうだったとはいえ、冒険者やら傭兵やらの集まりは殺したし、盗賊は喰ってもらったし」

「さすがは<魔王>、と言ったところだな」

「まだ<魔王>ではないよ。多分見習いくらいの立ち位置だよ」



 まだスキルが覚醒していない以上、僕は真の意味で<魔王>ではない。



 それに、まだ神話生物を召喚しきっていない。勇者が言うには覚醒した<魔王>は討伐対象らしいし、やっと手に入れた幸せな生活...



「そこで疑問に思うな、僕」



 お、おお。そうだな。とにかくこの第2の人生ももっと謳歌したい。そのためにはなんとかして覚醒を回避し続けなければならないだろう。



 もっとも、覚醒がどんな条件下で起こるかは知らないけど。



「まあ...確かにな。マリアはあまりにも弱すぎる。冒険をしたことのない4歳の少女にすら腕相撲で負けるんじゃないか?」

「ほっといてくれ」

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