脱出げーむ② ~わからないところはちからずく~
注意!結構あっさり人が死にます
『オオ、キコエテイマシタカ!』
目の前のそれ...ショゴスが話しかけてくる。結構カタコトだが日本語で、だ。
日本語は実に5年ぶりだけど特に哀愁などは感じなくて、逆にショゴスがまともに喋っていることに感銘を受けている僕。
いやだって!ショゴスだよ!クトゥルフ神話生物だよ!今まで創作でしかないと思っていたのに、異世界にきたら本物に会えたんだよ!
ぶっちゃけ今も信じられない!目の前にショゴスがいます、って転生前の僕に言ったって絶対信用しないもん!
「え?え?え?」
っと、エリカさんがようやく正気に戻ったのか、やけに興奮して変な踊りを踊ってる僕を見て困惑しておられる。
「あ、きがつきましたか?エリカさん」
「ふぇ!?え、ええ。まあ...」
そして僕が急に普通に戻って困惑するエリカさん。うん、いいですね。
「ええと...これはあなたが召喚したの...?」
すぐに真面目になるエリカさんもまたよし、っと。
で、僕が召喚したのか...か。
一度、ショゴスに向き直る。
『えっと、意思疎通は通じる?』
『エエ、モチロン!』
ふむ、日本語は通じるらしい。英語とか言われなくてよかったよ。なにせ5年も前世の言葉を使ってなかったんだからね、いかに英語で5を取っている僕といえど流石にもう喋れない。
まあ、ショゴスの英名とかは言おうと思えば言えるけども。
まあいい。少し質問しなきゃな。
『あー、君はショゴスでいいんだよね?』
一応本人確認をしておく。
『ソウデスヨ』
うん、これで目の前にいるのは正真正銘本物のショゴスと断言できるな。
『君は僕のことをマスターと呼んだ。と言うことは、君は僕が呼んだと言うこと?』
『イエ、ワタシハマッテイマシタ。マスターガ、フウインヲトクコトヲ。』
すごい。どうもショゴス特有の『テケリ・リ』と言う鳴き声を日本語みたいに使っているけど、カタコトの日本語レベルまで流暢に喋れているのは流石にやばい。幼児よりも日本語上手いんじゃないか?
と、日本語は一旦置いといて。えっと、封印を僕が解くのを待っていたって言ったな...
『封印は誰がしたの?』
『ワカリマセン。ウマレタトキカラナノデ』
ほうほう、生まれた時から封印されていたのか...
そのとき、
バン!!!
「あっ、マズイ!」
急に何かが開かれる音がする。多分ドアが開かれた音か何かだと思うけど...エリカさんが慌ててる。いったいなぜ?
「えっと、なにかあるの?」
「何かって...見回りのやつがこっちにきたの!ここにはこの化け物もいるし、何があるかわかったもんじゃないし...」
おお、見回りか。多分リーシャちゃんの声に反応してきたんだと思うけど...ふむ。
「あったらまずいの?」
「それはそうでしょ!あいつ、何かあるとすぐ私たちを殴ってくるんだから!」
「......おねえさんたちを殴るの?」
「え、ええそうよ。だからあなたたちも危ないのよ」
やけに冷静な僕を見て少し冷静さを取り戻したのか、声に落ち着きが戻るエリカさん。
しかし...お姉さんたちを殴る、か。
許せんな、こんなに優しいお姉さんたちを殴るなんて。そもそも、古来より女性と女性の間に男が混じるのはいけないことだ。
いや、まあそこら辺は少し無視して。ちょっと確認しなきゃいけないことが増えたな。
『ショゴス、今お腹減ってる?』
ものすごくわかりやすい質問である。
『オナカデスカ?ソウデスネ、ナガイアイダフウインサレタノデナニカタベタイデスネ』
お、と言うことは...
『食べれるならなんでもいい?』
『タベレナイモノイガイナラ』
やったぜ。あとはエリカさんに、かな。
「エリカさん」
「え?あ、ああ。何?」
「そいつって、しんでもダイジョーブ?」
そう、流石にDV男と付き合ってるなんて言われたり、実は大事な人でパターンだったら最悪だからね。一応聞いとかなきゃね。
「な......そ、それは確かに、死んでくれるならありがたいものだけど...あいつ、私たちじゃても足もでないほど強いから、あなたには...」
よし、許可もらったり。
「う、うわあぁぁ!?なんだコイツ!?」
お、早速ショゴスを見ちゃったな?
これは話が早くて助かるね。
『ショゴス、君の後ろのやつを食べてもらってもいい?』
と僕が言うと、ショゴスはあまりにも小さいように見える口の上の方にとても大きい目玉を一つ作り始めた。流石の僕でもちょっと引くサイズだ。
「ひっ」
わお、エリカさんが女の子みたいな悲鳴をあげてる。マナさんは...リーシャちゃんの看病か何かしてるみたい。
よくみると体からあざが消えていってる。回復魔法みたいなのがこの世界にもあるんだろうか。
そして、ショゴスが目玉を作り終える。するとショゴスは目玉をまるで自分の体をそわせるかのように移動させ、後ろを振り向いた(?)。
『コレヲタベテモイインデスカ?』
『あ、うん。いいよ』
すると
「ひ、ひいいいい!こ、こっち来んなああ」
と叫び声。
念の為耳を塞いでおく。多分聞いちゃいけないやつ。
エリカさんが僕を見て耳を塞ぎ、それを見たマナさんがリーシャちゃんに何か喋ると、なんとリーシャちゃんの耳に魔法陣が浮かび上がった。
それを確認して、マナさんも耳を塞いだ。多分防音系の魔法とかもあるんだろうなあ。
幸いなことに全員が耳を塞ぐ状況を見てなのか、ショゴスが反対側が見えないように隙間を埋めてくれた。
実際向こう側で何が起こっているなんて見たくもない。少なくとも人が殺される瞬間を見たいとは思わないしね。
それから、大体5分くらい。
右手だけ離してみるが、特に何も聞こえな意ことを確認した後、塞ぐのをやめる。
『ショゴス、食べ終わった?』
念のため聞いておく。
『エエ、マダショウカガオワッテマセンガ』
『そ、そう』
ショゴスが食べ終わったということは、もう目の前に敵がいないと言うことだな!
「ええと...終わった、のお?」
マナさんが聞いてくる。
「うん」
「そう...ありがとうねえ」
「いや、ありがとうじゃなくて!」
マナさんが感謝を述べたタイミングでエリカさんが止める。いったい何が......
「ほ、本当にあいつを殺したの?あのデカマッチョを?」
あ、なるほど。まだ殺し他ことが本当かどうか疑っているのね。
まあ無理もない。実際この目で確認したわけじゃないんだから怪しむのはしょうがない。だけど......
ああ、よく考えてみると僕、5歳で人を殺したわけですか。
うーん、実感が湧かない。殺した、という事実は認識できるし理解もしてるんだけど、これっぽっちも罪悪感がない。
まあそいつは悪いやつだったらしいし、仕方ないことでしょ。うん。
「うん、ころしたよ」
とりあえず真実をそのまま伝える。ショゴスが嘘をついている可能性はあるかもしれないけど、ショゴスは僕の命令に素直に従ってたし、流石に死んでると思う。
「えっ!?じゃ、じゃあ死体は」
「ショゴスのおなかのなかだよ」
一応ショゴスにはそいつを食べてと伝えたから、死体もそのまま食ってあるのだろう。さっき、消化がまだと言っていたしね。
「しょ、ショゴス?そいつって、」
「エリカは一回落ち着こお」
「あ......そうね、どうかしてたみたい。マナ、<静寂>をかけてくれない?」
「あいあいさあ」
...はっ。いけないいけない、お姉さんたちの会話に聞き惚れてしまった。
ええと、マナさんが、何かの魔法を使っているところかな?エリカさんの足元には魔法陣が...っと、消えちゃった。
あれが<静寂>なのかな?
「...ふう、少し落ち着けたみたい。ありがとね、リーシャちゃんの回復にMP使いたいはずなのに」
「いやいやあ、MPには余裕があったからこれくらいは大丈夫だよお。幸いなことにも、もうすぐ出られそうだしねえ」
あっ、そうだ脱出。そっちが目的なことをすっかり忘れていたよ。




