表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
213/402

NO してくれました

NO!

NO!

NO!

「まあ机からかな」



 どうせ本棚を見ていくのは骨が折れる。最初はまず間違いなくすぐに終わるところを調べて、まだ理解力が残ってるうちに情報を取得するとしよう。



「机か...見たところ、書斎にあるような普通の机だが」

「ああそっか、これ書斎か」



 机があることを考えると書庫よりも書斎の方が近いな。



 たまにある、ド忘れ。こういう時にするならまだしも大事な時にならないことを願いたいものだ。



「さてさて、見たところ引き出しがいくつかあるだけかな?」



 机の上を漁り、その次に机を下から覗く。机の板の下に何か貼られているわけではないので、わざわざ隠していない、つまり神話生物というかニャルが作ったものではなさそう。



 そうなると造ったのは誰かという話になるけど、まあ十中八九<ゴブリン>なのだろう。<ゴブリン>のイメージと読書というのはかけ離れているが、実際に人間の言語を喋っているゴブリンがいるのを見た後だと...



「あり得なくはないか。知を得る最も最短の道は本を読むことだからね」

「<ゴブリン>が...いや、<マジシャン・ゴブリン>なんかはしっかりと喋っていたか」

「怖いなあ」



 引き出しは一つで、そこまで装飾されていないシンプルなもの。というか部屋全体があまり飾られていない質素な部屋だ。



 見たところ仕掛けはなさそうだけど、ただ罠には十分注意だ。



「俺が開けましょう。マリアとミアは下がっててください」

「わかった」

「おっけー」



 ゆっくりと、最大限警戒されながら開けられていく引き出し...



 ...



 ...



 ...中には、1冊の本。



 黒い表紙の、どこかヤバ目な雰囲気を感じる本。厚みはそこまでないのと綺麗に置かれていたわけじゃないことからおそらく今もなお使っている、つまり日記帳みたいなものと予想。



「...開けます?」

「まあ開けるなら今かなあ」

「だよね...とりあえず開いてみよっか」

「わかった」



 リョオさんが本をひらけば、そこに書かれていた文字が見えるようになる。



 見たところ手書きであり、しかもそれは達筆なもの。天才か努力の結晶かわからないけど、一般人よりも上手い字なのは認められるかな。



 そして手書きということは...



 ============================================


 わけ、わからない。おれ、あたまいい?

 りーだー、なる、ただしい?

 たたかい、すきじゃない。ほんよみたいだけ。

 みつけた、ほん、ほかんする。いつでもよめる、うれしい。

 りーだーなる、ほんてにはいる、よめるたのしい?

 ならなる。りーだー、なる。


 ============================================



「日記、いやどちらかというと思いを綴ったエッセイ?」

「ただのメモとしても捉えられるよ?」

「とりあえず読み進めて...ん?」



 ============================================


 文字、勉強する。まだ苦手、でも上手い、なる。

 理解、増える。本読む、もっと楽しくなる。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 文法も覚える。本読みやすくなって、色々知れる。

 やっぱり本はいい。


 ============================================



「ここからだんだんと字が上手くなっていっているね」

「知識を吸収し続けて、ついには言語の生きにまで到達したってことか?」



 ============================================


 大分文字を覚えてきて、このメモ?も書き連ねるのが楽しくなってきた。

 本はいい。知識を得たということを実感できる。

 しかも戦略も増える。前に<ドラゴンと姫>という童話を元にした戦法を取ったら集落を一個落とせてしまった。

 おかげでリーダーからジェネラルに昇格だそうだ。この部屋ももっと広くできるかも知れない。


 ============================================



 数ページ読んでいけば、もはや人間が書いたと言っても初見ならまず間違いなく騙せるであろうものにまでなっていた。



 知識欲の化け物、というべきだろうか。ただ集めるだけなら知りたいだけだが、それをしっかりと活用していることに関しては褒めることしかできないだろう。



 本来は、人間よりも知能が低い、というイメージを持って生まれたはずの<ゴブリン>は、知識欲を得てしまったことによって強くなってしまったのだ。



 ============================================


 キングが死んだ。どうやら病死ということだ。

 ...そんなわけがない。俺がこの<調合のすゝめ>という本の内容に沿って植物を調合した薬を、酒に混ぜ込んで入れただけだ。

 俺たち<ゴブリン>は毒の匂いを嗅ぎ慣れていない。暗殺、というのは容易だった。

 今の強さの序列的に、次にキングになるのは俺だろう。そうなれば、今度は<兵士の動かし方>も試すことができるだろう。


 ============================================



「なんてやつだ。仲間のことを知識の実験台としか思っていないのか?」

「いやいや、そんなわけ...」

「可能性は高いね。どう書けばどういう意図が伝わる、ということを理解した上でこのメモを書いているだろうからね」



 リョオさんの意見には賛同しかない。得た知識を実践にすぐに持ち込んでみるとは、なかなか向上心の塊でもあるようだ。



「...とりあえず、続き読んでみましょう?」

「そうだな、って言いたいところだけど、残念なことに次が最後みたい」



 ============================================


 人間のいるところを潰しに行けば本が手に入る。最近は被った本を部下に読ませて教育をするのが日課になりつつあるが、これがなかなか楽しい。

 本を見つけた。人間居住地域探索隊が見つけてきた本だが、どうやら怪しい感じがするらしい。

 みた時は俺も思った。流石に俺とてこの禍々しさは見たことも聞いたことも読んだこともない。

 だが。読んでみたい。残念なことにこのメモ帳はここで最後のページ。新しいメモ帳を手に入れなければいけない。

 幸いなことに労働力は<商用奴隷の飼い方>で手に入れた奴隷の知識で腐るほど手に入れた。もうそろそろくる繁殖期も越えられそうだし、ここは読書に耽ると同時に新しいメモ帳でも買いに行かせたらいいかも知れないな。


 ============================================




きな臭くなってまいりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ