テリトリーにご招待
もう1話お待ちください
「さてと、休憩もほどほどにしなくてはな」
立ち上がるアンジェリアさん。まだまだリーシャたちが帰ってくるまで時間があるけど...
いや待て。その様子、かなり重たいものを背負っている気がするぞ。
「アンジェリアさん、一体どこに?」
「少し、な」
いやいや、少しじゃ済まないだろ。
肩を重そうに持ち上げ、顔は青く、足取りもかなり遅いのだから。
「さすがにその様子を見て知らないふりをするのは嫌なんですが」
「...そんなにいつもと違うか?」
「ええ全く。1ヶ月の付き合いですからよく分かりますし、こうやって聞くと声すら違うものになってますよ」
「むう...」
大人しくもう一度座り直すアンジェリアさん。
「...そこまで面白いことではないぞ?」
「それくらい様子を見てれば分かりますよ。あなたのことが心配だから聞いているんです」
「そうか...やはり君は母親に似て優しいな」
「転生者なんですけどね」
「それでもだ。君はメアリーの意思を受け継いでいる、それもかなり濃くな」
うーん、そうなのだろうか。
なんか少し照れてしまう。僕の母さんはとても良い人だったし、その人に似ていると言われるのは嬉しいからだ。
「だからこそ、彼女の道具を使うことには躊躇いがあったのだが...今になってみると、あれはとても良いものだったのかもしれないな」
「え?」
何のことだ?と思っていると、先ほどよりも軽い立ち上がりを見せてくる。
「ついてきてくれ。もっとも、見たくないと言うのであれば」
「残念なことに知りたいことはとことん知りたい主義なので」
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最後の怪我人の首を飛ばし、その死体を埋めていく。
12回も穴ほって埋めてを繰り返したので腕は痛い、が手つきは慣れてきた。
埋め終わったなら、先ほど切り倒した木から作った板を立てて...
「ふう」
「慣れてきたか?」
「慣れたくないけどね」
「やると言ったのはお前だろう?」
「まあそうだけども」
計13個の墓標。これらは全て僕が作り出したものだ。
なかなか良くできたと思うけど、どうだろうか。
「安楽死...高速で首を落とすことによるものだから、おそらく母さんがやっていた毒物よりも苦しみはあるだろうけど。まあそもそもついていけないのなら置いていかなくちゃならないし、残された怪我人はもう死ぬしかないわけで」
「正しいことというわけではないが、彼らのためではあるからな...」
しかし、これはかなり痛むな。
心にハリセンボンを時速150kmで投げられている感覚。良心が痛むともいうだろうか。
「一応感想を聞こうか」
「うーん、そんなことを言われても...間違ってはないなあ、としか」
「そうか」
血のついた槍を振るって雫を落とす。そのアンジェリアさんの姿は、確かに何かの覚悟を背負っているものだった。
おそらく、今まで何人もの死を見てきたのだろう。そしてこの介錯も何度も行ってきたものなのだ。
「さて、戻るぞ。そろそろ武器を探している者も帰ってくるだろう」
「そうですねえ」
森から出れば、そこには広場に集まっている16人の人間。
これからは、ここにいる人だけで攻略しなければならない。
この、<ダンジョン>を。




