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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
209/402

実質1択

わんわんわん

 あった。高い木の、上の方にウロが。



 少し空洞になっていると見受けられるその中に、おそらく本体のようなものがある...



「おお、マリアの考え通り、本当にウロがありました!」

「だろ?そうなると後はどうやってあの中に攻撃を...」

「え?手を入れればいいだけなのでは?」

「いや、それをするには高すぎる。多分跳躍中に人形の破片に攻撃されて終わってしまうよ」

「そうですかね...そもそも手が届く範囲だと思うのですが」

「え?」

「え?」



 少し会話してようやく互いの認識がずれていることを認識したようで、頭に?が浮かんでいる両者。



 なんなんだこいつら。すぐ気づけよそれくらい。



「え、リーシャ、君はどのウロを見て言っているんだ?」

「そこの...」



 と言ってリーシャが指差したのは視界に入っていなかったかなり下の方のウロ。



 どうも高いところばかり探していたので見落としていたらしい。が、かなり遠くその中を見ることは叶わない。



「遠い、結局そこに向かう道中で襲われることに変わりないか」

「マリアが見つけたウロは?」

「あそこの、高い場所にあるやつ」



 示すは近いもののとにかく高い場所にあるウロ。よく見ると天井とそう大差ない高さがあるね。



「うわあ...」

「さて、どうするかなあ」



 どちらにせよ襲われることに変わりない。おそらくそのウロの中から僕たちを見ているんだろうから、僕たちがその中を見にいこうとすれば優先して僕たちを襲ってくるだろう。



 だけど残念なことにウロに向かう以外の選択肢はない。味方が何度破片を崩そうと、そのバラバラの状態で動いてくるわけだし、何よりすでに死者が出ている。



 ...こういう思考をしている間にもね、って。



「やっべ」

「どうかしましたか?」

「見つけちゃったあ、3つ目のウロ」

「え!?」



 どうしようかなと考えながら回避しなきゃいけない都合上、数多の飛んでくる破片を見る、つまり全方位視認が必須なわけで。



 そしたら見つけちゃったよちくしょう。



「あの太い木の中腹、大きさは今までのやつよりも小さいけど...」

「かなり敵が、っ!」



 一瞬見ただけだけど、それだけでわかる破片の多さ。



 まるで当たり前のように空中に浮いている破片は、目は荒いものの何十にも層になっている壁と錯覚できるほど。



 あれを通るのもまた至難の業だろう。



「しかも3つに増えたしね」

「誰かを呼んで...」

「まった。リーシャ、君は僕の思考を読んでいるのだろう?だったら、僕が起き上がったタイミングの思考を覚えているはずだ」

「あ...!」



 ()()が誰なのかはわからないけど、たとえこの状況を生き残ったところですでにボロボロ、そこを()()が狙わないはずがない。



 そして、もしそのタイミングを狙った場合の最初の標的はもっとも近い人間だろう。狙いやすいし。



 だからそいつを呼んではならない。だから無差別に呼ぶことはできない。



「会話せず、心に出さない意思の伝え方はできる。だから今一番注意しないといけないのは」

「誰を呼ぶか、ですね」

「イエス」



 では誰を呼ぶか。今この荒れ狂った場所で信用できるのは一体誰か。






 ...一瞬、静かになった気がした。僕が冷静に周りを見ているだけだろうが、だけどその静寂の中で



「絶対に受け止めたり反撃してはダメだ!さらに攻撃が激化するぞ!」



 声がひとつ聞こえてくる。その声は主はだれか。



 おそらく僕の、()の味方であろう人。この世界にいる数少ない<魔王>の味方。



 確証はない。だけどもそれはどっちにも言えること。



 であるならば。



「賭ける」

「なにをですか?」

「命を」

「え?」

「この戦いが終わった後、生き残れることを。いやまあ絶対に生き残ってみせるけど」



 死亡フラグか?いいや違う。クトゥルフ神話にそんなものはないし、あったとしても立つ前に殺される。



 さて。そんな思考は今どうでも良くて、考えなければならないのはどうやって呼ぶかだ。



「普通に声で呼ぶか」



 よくよく考えたら、この状況を終わらせない限り危ない状況は続くわけで。そしてそんな状況で何か選択肢があるかと問われるとそんなわけなくて。



 できうる限りの選択をする。そしてそれ以外は雑にやってもそんなに変わらない。



 これは僕がこの世界で生き残って得た知識...いやそうでもないな。まあいいか。



「アンジェリア!!!」



 あえて呼び捨て。これは時間がないからなのと、それによる緊急性を示すためのものだ。



 彼女がこちらを見る。それが分かったらすぐにこの広場の中央に向かってダッシュだ。



「はい!」



 リーシャのダッシュでとりあえずの意図がわかったのだろう。彼女もまた中央に向かって走る。



 そして...



 少し指を噛む、この時犬歯を使うとうまくいきやすいのだけども。



 ピッ



 成功。指から少しばかり血が出てくる。



「これで...」



 腕に書くことはただ一つ"まっすぐ進んだ先にある木の下の方にあるウロ"。



 さてと。リーシャ、君はすれ違った瞬間に僕を高いところにあるウロに向かって投げてくれ。



 そしてそのまま太い木のウロの方に行ってくれ。



「了解です!」



 急接近するアンジェリア。しかし通るルートは彼女とは少しずれていて。



 一瞬、すれ違うタイミング。見えるように置いてある僕の腕を、アンジェリアはしっかりと見つめて。



 そしてすれ違った瞬間、僕の体を支えているものは腕だけとなり、思い切り振り回される。



「いっけえ!!」



 遠心力はたった2周で強いものとなり、その勢いは僕を飛ばす。



 数十m飛んで、僕は木のウロに到着す



 ガン!



 ...天井にぶつかったことはおいといて、そのウロの中をすぐに確認する。






 中は、空っぽだった。



「やりました!!!!」



 しかし、その確認と同時にその声が聞こえたのは、間違いないだろう。

全部行けばいいじゃない

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