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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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鉢巻というより襷

がんじょうあるいはこらえるとも

 HPが1。文字通りのミリでの生き残り。



 なぜ耐えたのか。確かに体はバラバラになったはず...



 瞬間、<操り人形>の残骸が浮き始める。



 それもバラバラに、速度は一定ではなく、大きさも、動きも。



「な、なんだ!?」



 そしてもちろん...狙いも。



「「「「「■■■■■■■■■!!!」」」」」

「!?」



 耳をつんざく不快な音。例えるとして最も似た音は黒板を引っ掻く音。



 痛い、いや気持ち悪い。そんなおと。



「全員回避!!」



 だけど耳自体が死んだわけではない。



 声にハッとして前を向けば、目の前には僕の胴ほどもある木製の小指。



「っ!」



 すんでのところで頭を捻り、かつ体が思いっきり逸らされたので回避に成功。がそこに向かってくる......多分脇腹の破片?



「衝撃に備えて!」

「はい!」



 今はまるでブリッジのような状態になっている。このままでは飛んでくるそれに当たってしまうだろう。



 なので、右手で地面に<魔力撃>。少し強めにやれば、動かない地面を押せない力が僕たちを逆に押し出し空中に放り出してくれる。



 そうすることで地面スレスレを飛んでいた破片を回避することに成功。



 うむ、意外と攻撃以外にも使い道はあるみたいだ。



「ただ結構強めにやっちゃったかな」

「いえ、その分周りは見渡しやすくなりますよ」

「おっと、それは確かに」



 というわけで。ここからは肉体に回避を任せるとして、今から精神である僕は思考タイムだ。



「任せた、って危な!」



 なぜ、あの<操り人形>は生きているのか。見た感じは普通の中ボスの魔獣なんだけどね。



 なんか踏ん張る系統のスキルとかがある...いや、流石にそれはないか。あったらみんな習得しようと躍起になるはずだ。



 ただでさえ死にやすい(独自調査)この世界で一度だけ生き残るのは強いどころか強すぎる。もし弱いなら母さんの使用した薬はそもそも意味がなかっただろうし。



 無論魔獣専用のスキルというのなら話は違うけど、今はそんなことを考慮できる時間はない。



 であるなら。



「右から来ます!」

「左からも!」



 引っ掛かりを覚えるのは名前だ。<操り人形>...あれは操られているのか?



 だとしたら、もしかすると近くに操っている魔獣がいるかもしれない。HPが残り1なのもそいつのHPだとすれば説明がつく。



 だから問題があるとすればそれがあっているかどうかの確証がないということだ。でもそれ以外に奴が死ななかった可能性を考えると本当に頑丈系のスキルってことになっちゃうんだよね。



「...ちっ、壊す程度じゃ止まりませんか」

「というか状況悪化してる!みんな壊すか避けるかだからその破片1個1個が襲ってきてるぞ!」



 よし、スキルはありえないな。あとは何かしらのコアがあって、それを壊さないといけない...



 ...見ている感じ、どこかにコアがあるといった様子はないかな。何かに隠れているのかもしれないけど。



「がはっ!」

「ビゼス!?ぐ、おおおっ!?」

「起きろ!ここは戦場だぞ!」

「...」

「ちぃ!」



 負傷者もかなり、いや動かない奴も出始めたか。これは予想以上に時間がなさそうだ。



 コアがないとすると、やっぱりさっきの誰かが操っていてそれはこの近くにいる理論が正しいかもしれないね。ともなれば探さなきゃならないけど...



「っと!」

「走ります!絶対に手を離さないでくださいね!」

「いや話すわけぐぶらぁ!?」



 舌噛んだ。痛い。でも探すのはやめない。



 目に映る阿鼻叫喚の地獄絵図。弾ける赤い飛沫はそこら中に舞っていて、かなり状況はまず



「かっ!?」

「リーシャ!?」

「だ、大丈夫、です!ちょっと腕をかすめただけです!」



 しかし傷はしっかりある。当たっただけでダメージはでか



「がっ!くそ、避けるのも一苦労になってきた!」



 本当に時間がない。無駄なことは思考せずにさっさと探そう。



 で、やはりものを見つける時は見当をつけるのが大事だ。ではどうやって見当をつけるか。



 今回の場合、自分に置き換えればいいだろう。もしも自分自身があの<操り人形>を操っていて、それは見ながら操らなくちゃいけない場合。とりあえずはこんな条件で考えていこう。



 ...まずは草むらかな。



「どこにあるかなあ...と...」



 ないな、草むら。なんか手頃な奴がない。



 公園によくある小さい木みたいな、ああいうのがいいんだけど全く見つからない。



 まじか、ここどう見ても森なのにそういうの一切ないのか。



「そしたら...あー、天井とか?」

「どうしてですか?」

「操り人形って想像した時に糸が上から伸びているんだよね」



 天井は今までと同じように岩盤やら土やらの集合体。隠れられる窪みとかは...ない。



 では糸はどうか何かしら伸びていたり、いやそういうのもないか。



 光の反射かなあと思ったけどどうも違うみたいだ。



「糸...あ」

「どうしたの?リーシャ」

「もしかして、<魔力糸>で操っているのかなあと」

「<魔力糸>?」

「<魔力>で生み出す糸のことです。洋服などを作る時に編み込むことで<魔道具>を連結させることができたり、あるいは<魔道具>と<魔道具>をつなげたりもするものです」



 お?じゃあそれを追っていけば...



「...見えないよ?」

「えっと、<魔力糸>は<魔力>の塊なので普通の目では見ることが叶いませんよ?」

「あ、<魔眼>じゃなきゃ見えないとか?」

「もっと特別なものですね。<魔力レンズ>という<魔道具>か、その魔力糸を発生させた者にしか見えません」

「わあお」



 そしたらそれを追うっていうことはできない...



 ...いや、待てよ?



「木を隠すなら森の中...」



 そんなことわざを思い出した。つまるところ、同じ所に同じものをたくさんおけば見つかりにくくなるという古代の教え。



 ...木。



 あ、そういえば木の中までは見ていないな。もしかしてそういうこと?



 木には時折ウロががあることがある。そこの中にとかか?



「さてさて...」



 なんとなくある気がする。そうして探す木のウロ。



 周囲を見渡せばある木。その片っ端から探していけば...






「...あった」



 自ずと見つかるものだ。

みぃ〜つけた!

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