ついにここまで来れた1桁の数字階段
これにて数字階段シリーズのタイトルもおしまいです
鬱蒼とした森の中を進む。
別に、何かがあるわけでもある。
「ギギャ!」
「おらっ!って、全然やられてねえ!?」
ピシュッ!!
「...だんだん矢も多くなってきた。油断禁物」
普通にゴブリンはくるし、矢も飛んでくる。なんならそれらも強くなり始めてきた。
クリーンヒットしたものはいないものの掠っただけで酷い裂傷になる矢、重いつるはしの一撃程度なら1回は受けることができるようになってきた<ゴブリン>。
今の所脱落者はいないものの、おそらくそう遠くない未来に脱落者が出てしまうことだろう。
「移動しながら戦え!奴らに私たちの位置を伝えにくくするのだ!」
「そうはいっても、数が多すぎてどうにも...」
あと数も増えた。しかもかなり。
詳しい数はわからないけど、だんだんと増えてきていることに変わりはないだろう。<ゴブリン>なんか目に見えて増えてるし。もはや草むらにいないほうが珍しいところまで来たよ。
「走れ!一方向に一斉に移動すれば、奴らは森の中という視界不良の世界で私たちを見失う!」
「階段は...あっち」
「聞いたな、行くぞ!!」
走る。奔る。疾る。
リーシャの肩を借りて、片足で皆に追いつけるよう奮闘する。
「無理はしないでくださいね!」
「それはこっちのセリフだよ。リーシャ、君の肉体が傷ついてきているのはわかっているからね」
もちろんだが、ここは森の中である。そしてまたもちろん私たちは靴なんて履いていない。
木の枝、虫、糞、その他わからないもの。森の中にはなんでも落ちているがゆえに危険だ。
見るからに、あるいは見てもわからない毒もある。意図的に設置されたトラップだってある。
「っ!」
「大丈夫ですか!?」
「ああうん、大丈夫だよ。ちょっと木の枝踏んだだけ」
ほんとお?足からダラダラ血が出てるよ?
「そんなわけ...あ」
足元を見てみれば、そこにあったのは埋まっているスパイク。
棘は、足を貫通していた。
「っあ!」
「こ、これは!?」
「リ、リーシャの足元にもあったみたいだね」
というか全員の足元にあるっぽいねこれ。
「ぐっ!」
「な...」
「少し、痛い」
「わわ!危なかった...」
全員が踏んでいるわけじゃないけど、だとしてもほとんどの人間が踏んでいた。
別に毒とかが塗られているわけじゃないけど、これはこれでまずい。
だって、さっきまで色々踏んできたからね。何が足についているかわかったものじゃないのに、足にはぽっかりと穴。
多分細菌とかが中に入ってしまっただろう。帰ったらすぐにお医者様に見てもらわないといけなくなってしまったわけで。
さらに言うと制限時間のタイマーがかなり早回しになってしまった。そもそも僕たちには性病という最悪までのカウントダウンが刻一刻と近づいてきていたのにも関わらず、ここで熱などの症状になる可能性の高い細菌の侵入を許したともなれば...
「痛みに悶えている余裕はない!すぐにこの森を出るぞ!」
下手したら、戦闘なんてせずとも死ぬ可能性がある。もちろん性病に死ぬ可能性がないとは言わないけど、その可能性はさらに高くなってしまったと言えるだろう。
だから急ぐしかない。
「幸いあともう少しで広いところに出る」
「出たらどうなる?」
「多分中ボスクラスの魔獣が出現すると思う」
なのに敵は容赦がない。
矢の雨、汚い緑色の絨毯。これらを乗り越えた先にあるのは...
「もうすぐ広場に出る。カウント、3、2、1...」
「周囲の確認を、し...」
しなくてもいいほど、それは大きいものだった。
巨人?いや違う。あの草原で見たあいつらはもっと巨大だった。
では...こいつは?
見た目は人の形。ボロボロだが服は着ている。
がその肌に生気はなく。むしろ生きていないようにも見える。
わかりやすいのは間接だろう。ボールになっているそれはまるで造られたもののようで。
「!!!」
音。ただのそれは警戒音だろうと察せる。甲高く鳴り響くそれと同時に聞こえてくる足音が物語っている。
「階段は...あった。あいつの奥か」
「見えにくいけどある、ということは」
あいつを倒さなきゃ進めない。もう誰だってわかっていることだった。
幸いにもここは明るく、また足場は悪くない。戦いにくいわけじゃないだろう。
しかし。
「休む暇はないぞ!もはや我々に退路はないのだからな!」
「そ、そうだな。俺たちには進む以外の道はない」
まあまあ限界だった。<勇者>と一緒に<地殻融解>を探索していた時は、あまりなかったとはいえ極寒フロア探索中に5回は休憩があった。
なのにこの進行には休憩が一切ない。ずっと気は張り詰めたままだし体力を回復する薬も睡眠も取っていない。
おそらくそれは普通じゃないのだろう。男性陣にはまだいくらか活気があるものの、僕ら女性陣にそれはない。
リーダーも肩で息をしている様子がわかる。鬱蒼としているだけだが、ただそれだけの森は休憩なしで駆け上がってきた人間にはとても辛いものなのだ。
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<操り人形>
28000/28000
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その姿から連想される名前を持っていたその魔獣は、やはり僕たちに牙を向ける。
のっぺらぼうの顔を覗かせて。
ささ、久しぶりのまともな魔獣戦闘ですよ




