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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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結局この不吉な4という数字はなんで不吉なんだろうか

行きましょー

 7階。それは今まで見てきた階層の姿は全く違うものだった。



「広いですね」

「ここらにはこんにゃくが固まっていると聞いたな」

「鉱脈の間違い...でも、それで何を?」



 まず特筆すべきはその天井の高さ。かなり掘り進めたのだろう、上へと続く階段の行く先が見えてしまうほど高い、つまり最低20mはこの階層の高さとして確保されているわけで。



 また昇降機があるのも特徴の一つだろう。手動の手回し式というあまりにも辛すぎる仕組みではあるけど、やはりここにも<ゴブリン>に見合わないもの、今回は技術力という形で表れている。



 で。よく見るとこれらはまだ動いていることがわかる。無論奥の方でもピッケルで壁を掘っている人間が見えるわけなのね。



「ギギギ!?」



 そりゃあ巡回する<ゴブリン>も必然と多くなってしまうわけで。まあ見つかるよね。



「ギギャ!」

「見つかるのも無理はないか。交戦したのち同志を迎えに」

「んなもん待ってられっかよ!」

「「!?」」



 両陣営が急な声に驚いた瞬間、<ゴブリン>の背後から



「うらあ!」



 という声と共に振り下ろされるピッケル。どうやら武器には困らないらしい。



「ギッ...ギイィ......」



 脳天をかち割られ倒れる<ゴブリン>。後ろにいたのは...人間。



「...味方、か?」

「その<ゴブリン>の武装を勝手に使ってる感じ、あんたらレジスタンスだな?」

「うん、そうだけど」



 ...とりあえず僕の記憶にはない人だね。だから信用するにはあのおじさんに会うことが必須だけども。



「ついてきてくれ。俺はさっきまで仕事だったから、声を聞いてすぐそこから来れたわけだが」



 指さす方には掘っているあと。さっきネリアさんも言っていた鉱脈から鉱石を取っているのだろう。



 何故だかはわからないけどね。



「仲間はすぐにこれるわけじゃない。牢屋にいるやつがほとんどなもんで...」

「その牢屋を壊しに行く。そうだな?」

「そういうことだ」



 歩き始めた男。それについていく。



 もちろん周囲の警戒は怠らない...が、それでも会うものは会う。



「ギャギャギャ」

「ギャギャ」

「ギャ」



 おそらく先ほどの戦闘音を聞きつけてやってきたのだろう。巡回をしている武装した<ゴブリン>がわらわらと襲ってくる。



 が武器を持った人間が数人いるのだ。狭いが故に数の力もあまり発揮できず力押しで突破していけるようだった。



 ようだった、というのは少しおかしいかもしれないけど、でもまあ僕は戦闘してないしね。



 必死について行っただけなのよ。もう、そこらへんの傍観者と遜色ない存在になってるのよ。



「そんなことないですよ!」



 とリーシャはいうけれど...まあ最後の最後で肉壁くらいにはなるだろうか。



「マリア!」

「と、着いたぜ。ここが俺たちの牢だ」



 10分ほどだろう。走っていたらいつの間にか目の前にあったのは大きな牢。



 僕たちが今までいた牢と大差ないそれは、うん。紛れもなく、中の状態まで本当に大差ない場所だ。



 丸出しのトイレにちょっとした机、そして倒れている数々の人間。どこまでも僕たちと同じ状況にあると、その光景は僕に伝えている。



「来たか。あと3日以内と思っていたが、まさかもう来るとはな」

「あ、おじさん」

「君も元気そうで何よりだ」

「知り合い...いや、そういえばマリアが他の階層の仲間について教えてくれたんだったな」

「仕事の都合上<ゴブリン>よりも人間の方が多いからね。こうして味方に引き込むことも難なくできたんだ」



 いや、流石に難なくというわけじゃないだろう。まず精神の僕ではなく肉体の僕が生きていないといけないのに加え、全員が全員反抗心を持っているわけではないんだからね。



 何人か、というより6割の人間はすでに精神をすりつぶしていて反抗のはの字もなかった。だから全ての階層、8階は仲間のところへ向かう余裕がなかったけど、とにかくそんなたくさんの人を味方にできたのは奇跡に近いことなのだ。



「さて。時間もないからな、手短にパパッといくぞ。リーシャ!」

「はい![身体強化]」



 そう言った彼女は軽いオーラのようなものを身に纏い、



「ふん!」



 そのまま牢屋をひん曲げた。



 ギイァ



 という耳障りな音と共に、人がぎりぎり通れそうな隙間が出来上がった。



「これで大丈夫でしょうか?」

「ああ、これで大丈夫だ」



 一応隙間を確認し自分が通れることを確認...どうやら問題なく通れるみたいだね。



「よし、皆!」



 声を張り上げおじさんがそう言えば、後ろの方から歩いてくる男性の方々。



 えっと...数にして22。僕らより多いじゃん。



「これは...十分な戦力だな」

「これだけじゃない。上に行けばもっと味方がいるはず」

「それは知っているが...」



 むう。僕の言っていることが信じられないか、リーダー。



 まあでもそりゃそうか。本来ならこの9人、いや僕やリーシャを抜いて7人だけでなんとかしようとしてたんだもんね。信じられないのも無理はない。



 もう何度もリーダーには言っているわけだけど、多分僕がその立場だったとしても信じないだろう。こんなにも仲間がいることは奇跡に近いのだから。



「いいじゃねえか。俺たちがいればなんだって強行突破できるぜ?」

「数の力はとても大きい。仲間が増えることに越したことはないだろう?」

「だが指揮は...」

「そりゃあんただろ。多分俺たち含めてもあんた以上に実力を持っている奴はいねえぜ?超有名<ギルド>の山はってたのは誰だって知ってることだからなあ。アンジェリアさんよお」



 あれ、名前知ってるのか。というかこの人有名人なのか。



「知らなかった...」

「あまり自慢できることでもないだろう。それに、変に崇められても困るしな」

「どういうこと?」

「アンジェリアさんはな...」



 そう言ってくるのはおじさん。この人は結構信頼できるんだよね。弱そうだけど、誰よりも生き残るっていう意思を感じる。



 そしてそういう人ほど生き残る。これは僕が証明していることだ。





「<伝説の20人>のうちのトップ。リーダーを務めていたんだ」

「...あ?」



 え、急にそういうことぶっ込んでくる?今そういう話をする場面なの?



「あ...ああ?」

「おい、だからあまり言いたくないんだよ。こういう感じで困惑するやつも出てきてしまうから」

「...メアリー......」

「な...待て、マリア今なんて言った?」



 困惑する肉体は、しかしその状況でも母さんの名前を言うくらいの理性はあったみたいだ。



 そしてその反応。やっぱり母さんは<伝説の20人>だしあなたも<伝説の20人>なんだね。



「め...メアリー...母さんの、名前...」

「何!?」

「ええ!?マリアのお母様はメアリー、つまり<伝説の20人>!?」



 いや、リーシャ。そんな大声で言わなくても...



 ほら、リーシャのせいでおお...とかこんな小さい娘が...とかでざわざわし始めちゃったじゃん。



 なんとなくアンジェリアさんの気持ちがわかったよ、僕。有名になるのは精神的負担でしかないね。



 ============================================



「そうか...メアリーは、やはり君を守ったか」

「どういうこと?」



 上の階へ行く道中、僕はアンジェリアさんに身の上話をしていた。



 というのも



「メアリーは君の兄を孕ったから、<伝説の20人>を辞めた」

「わあお」

「あの時...私が<狂戦士アンジェリア>などと呼ばれていた頃の話だがな」

そろそろ<伝説の20人>についてもちょっと深く深くドリルでこじ開けてみましょうか。

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