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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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10階では色々ありました

神話生物、現る。

「ここが...9階」

「全く知らない場所ですけど、雰囲気は全く変わりませんね」



 土が全てを覆った通路と部屋。



 それらで構成されているのはあいも変わらず。



 でも。



「...だけど、これはかなりひどいですね」



 おそらく需要が違う。その階層に求められているものが、10階と9階で全く異なっているのだ。



 この<ダンジョン>は地下にある。広げるには地下かあるいは横に広げる必要があり、上には広がらない。



 だから、10階というのは最前線なのだ。もっとも地下にある10階は今もなお掘り進める人間がたくさんいて、広がっていっているのだから。



 しかし、9階は違う。今まで9階にいた者のほとんどは10階に行き、それによってこの階は廃墟同然となっていた。



 無論そんなところの掃除なんてするわけもなく。あまりにも汚いままで放置されていた。



「汚い、というレベルではないな。汚れそのものだ」

「だから誰も近付かない。<ゴブリン>だって、ここには()()捨てにしか来ない」



 だがそのまま放置するのにも理由がある。別に放置しても問題ないからだ。



 流石に階段まわり、及びその通路は片付いてはいるけど、その他はもう死体だらけ。



 なんならまだ生きている人もいる。でも、もう助からないところまで来ている。



 むしろ近付くとこちらが危ない。どうも<ゴブリン>関係の病気というのは進行速度が非常に速いようでね。



「...いくぞ。彼らの犠牲は、越えなければならない」

「そうですね...」



 しかしまあこの9階というのは<ゴブリン>がいない。



 だって、ゴミ捨て場だもん。巡回の理由もないし万が一で病気にでも掛かったら最悪すぎる。



 まあ、<ゴブリン>の病耐性は最高峰のものなんですけどね。ええ、僕たち奴隷側の6割がすでに患者なのに<ゴブリン>はピンピンしてますから。



 なんでなんですかね。あれか?植物の品種改良みたいに世代が続くとその子供たちもどんどん強くなってるってか?



 最悪じゃん。



「そういえば、敵影がほとんどないですね」

「元々10階から8階までは巡回している<ゴブリン>が少ない。多分その階層は体力を多く使うであろう階層だからレジスタンスが仮にいたとしてもそこまで強くないだろうという考えなのだと思う」

「むしろそこに兵を割くのであれば自らの周りにおいた方がいい、ということか」



 なるほど、確かに僕が>キング・ゴブリン<の前に来たときも護衛であろう武装した<ゴブリン>がいた。それもたくさん。



 目測で30。それほどの<ゴブリン>がいれば大概の人間は封殺できるだろう。



 ...よく考えたら、そんな中に突っ込もうとしてるのか、僕ら。






 ところで、僕らは今とても神経質になっている。



 まあそりゃそうだよね。たった1体の<ゴブリン>に見つかった時点で、僕らは終わりなのだから。



 だから。



 ...ぬちゃ...ぬちゃ......



 音にも敏感になる。



「しっ......何かいる...」



 足を止め、身を潜め、声を小さくする。



 現在武装はなく、それも7階にあるはずの<ゴブリン>どもの武器庫から得るしかない。



 接敵は、つまり、死。



「...」



 全員で周りを探る。幸いランタンはまだギリギリ生きていて、物陰とかでない限りは見えている。



 そう、()()()()()()()()()



「...あ」



 そう最初に声を発したのは、リーシャだった。



 アンジェリアが口に手を当てがう...が、やはりアンジェリアにも見えてしまったのだろう。釘付けになって動かなくなっている。



 なお、僕は最初から見えていた。しゃがんでいる他の人より視点が高いし...



 ...なんなら、今、目が合った。



「...なに、あれ」



 誰かから声が漏れる。そりゃそうだ、おそらく彼らは見た事ないはずだから。



 ......ぬちゃ...ぬちゃ...ぴたり






 一言で言い表すのなら、ブサイク。青緑色の肌に違和感を覚えるが、しかしそれよりも顔に目がいくからだ。



 どういうことか。言うなれば...



「...インスマス顔」



 僕自身、あまりにも驚きすぎた。沈黙しておけということすら破って、肉体の僕も声を発する。



「■■■■■」



 声。どちらかというと英語に近い、意味のわからないそれを発しながら近づいてくる。



「一体、あれは...」



 しかし誰も動かない。まるで石になったかのように。



 ...動けるのは、僕だけか。



「すみません、全員逃走準備をしてください」

「!?、マリア、お前喋れて」

「話はあとです。早く逃げないと...殺されますよ」

「そ、そうだな。だが、階段に向かうにはこのルートしか」



 いや、そんなはずはない。



 ネリアさんのことだ。確実にサブルートも用意してあるはず。



「...一応、死体が多くなるけど迂回ルートはある。絶対に、絶対に転んじゃダメだけど」

「そうか...なら、それで行こう。みんな、気をつけろよ」



 全員が頷くと同時に走ってくる、それ。



「交雑種、きます!」

「全員走れ!」

実はここグール出そうと思ってたんですよね。



でも、こっちの方が面白そうだなって。



交雑種...深きものとの交雑種については、次回。

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