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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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<ゴブリン王国>

寒いのは苦手です。よく1時間トイレに篭ることがあるんですよね。



まあだとしても遅れる理由にはならないんですが。

 今まで真っ暗闇だったところに来た光だ。強いものではなかったが、目が慣れるのには少しの時間を要した。



 でも。



「むしろ、見たくもなかったな」



 ボソリと呟くほど、この光景は。






 人間が、壁を掘っていた。



 つるはしで。スコップで。あるいは自らの手で。



 崩れないよう坑木を建てていきながら労働する様は、何かの奴隷と思えるものだった。



 服装も、やつれ具合も、その名にふさわしいものだったからだ。



 また、それを行なっているのはことごとく男性だ。屈強なものもいれば痩せているものもいるが...



「...分担。筋肉ムキムキは壁を掘り進めているけど、痩せ細っている奴らはトロッコとかで土を運搬しているのか」



 なんのためか?鉱石を掘るか、あるいは...



「オヤ、マタアタラシイニンゲンデスカ」



 声。しかし気づいた時にはもう遅かった。



 上から降ってくる檻。もちろん僕には避けられるはずもなく。



 ガゴン!という大きな音と共に、それは僕を閉じ込めた。



「...」

「フムフム...ミタカンジハ<カウラの試練>ニチョウセンシニキタコドモダガ...」



<ゴブリン>。しかし言葉を喋るそれは目を光らせ、僕をまじまじと見つめてくる。



「...コイツハオドロイタ。マサカミセイジュクノ<魔王>ガイルナンテ」



 ...は?本来なら見られないはずのスキルを看破した?



 てことはこいつ、まさか高レベルの[鑑定]あるいは<鑑定眼>を持っているのか?



<ゴブリン>が?



「ソシテソノセオッテイルヤツハ...フンフン。ナルホド」



 いや、違うな。どうやら心までは読めていないみたいだ。



 でもステータスは看破してるみたいだし...どういうことだ?




 リーシャは、と気絶してるのか。多分情報量が多すぎて頭で処理できなくなったのだろう。



 確か、リーシャの持つ<魔眼>は暴走していて、見たもの全てを[鑑定]するとんでもないものだったはずだ。



「...アンナイニンッテトコロカ。マアコンナキョジャクナヤツヲ<生存不可区域>ノナカデアルカセルノナラ、コレクライノカイゴハヒツヨウダナ」

「...悪かったね、虚弱で」



 こいつの前で初めての発声。すると、こいつはニタァと嫌な笑みを浮かべた。



「デモツカイミチハアル。ホウラ、ソコニモタクサンイルダロ?ニンゲンガオレタチノクニヲヒロゲテクレテイルンダ」

「...でも、そこには男性しかいない」



 気持ち悪い笑みをさらに強くし、やつは言う。



「モチロンソウダトモ。>キング<ハコウオッシャラレタ、オトコノホウガオンナヨリモコウリツガイイ。ソシテ...」



 檻が自立して移動する。それに釣られて僕も移動しなければならない。



 轢かれると言うことはないだろうけど、檻に何か仕込まれていたらたまったものじゃない。



「オンナハ、オレタチノコドモヲウマセル」



 ゾクゾクとした悪寒が襲ってくる。



 ...嫌な気分、とかそう言うレベルじゃない。



 目の前のやつの、「ギャギャギャ」という笑い声が、僕を、この話が現実なのだと思考させてくるのだ。



 まずい。これは非常にまずい。彼女に傷一つ付けずにという依頼、まあもう無理だけど、女性としての尊厳を奪わせるのはさらにまずい。



 おそらく彼女もまだまだ思春期。男の子とキャッキャうふふすることを考え始める時期。そういうことはまだ早いだろうししたこともないだろう。それに本人の意思関係ないし。



 僕はまだいいよ、僕は。だけどリーシャは...






 ()()()()()()()はあ?なんでそんな思考になる?



「ア、デモオマエチイサイカラマダウメナイカ」



 ...いや、その思考は今すべきではない。



 あとでそのことは考えるとして、今はリーシャにさせない方法を思考しよう。



 幸いなことに、こいつは頭がいいからな。



「...昔、人間同士で戦争があった時代」

「ア?キュウニドウシタ?」

「戦争中、兵士として動かなくてはならない男たちは、妻に会えない、女性と会えないことを嘆いた」



 教科書で読んだやつなんだけどねこれ。



 あの分厚いやつ。



 ...問題は、乗ってくれるかどうか。



「...ツヅケテミナ」



 HIT!



「嘆いたおかげで士気が下がった。どういうことか、頭のいいあんたにはわかるだろ?」

「パフォーマンスガオチタ、カ?」



 即答。やっぱこいつ頭いい。



 というかそうなると>キング・ゴブリン<って何者なんだ?もっと頭いいってことか?



「そう。そうなると勝てなくなってしまう。勝てないということは死者が増えるだけ。だからどうしたか」

「ドレイヲダカセタ」

「正解」



 ほんとはこの思考にさせたくなかったんだけど、こいつらどうもそっち方向の思考にさせれば釣れやすいのかもしれない。



 あいつ、笑顔だしね。



「...タシカニ、イマオトコノロウドウコウリツガカナリオチテキテイル」

「子供は産めないけど」

「ナグサミモノニハナル。ナルホド、サスガハミセイジュクノ<魔王>ッテイッタトコロカ。イチバンイキノコレルカノウセイノタカイホウコウニシコウヲユウドウサセテルナ」



 お前もな。ただの<ゴブリン>がそんな思考をするとこ、初めて見たぞ。



 あ、でもちょっと服装派手だし、もしかすると<リーダー・ゴブリン>の可能性もあるか。



「ソノドリョクニメンジテ、トリアエズオマエタチヲアタラシイブショニ」

「おっと、もう一つ」

「...コンドハナンダ?」



 まあどちらにせよ、頭がいいのと同時に大分合理的らしいし。



 それなら合理的な手段を取らせるか。



「彼女、多分労働者の方ができるぞ」

「オンナガ?」

「見た目で判断するなよ?彼女の肉体はそれこそ鋼、貫けないものは貫けないけど、動かせば岩すら穿つよ」



 さて、どうくる?



「......タシカニ、ステータスのキンリョクガタカイナ。トイウカコンナタカイナラソレノホウガコウリツハイイ」



 よーし。最悪の状況は回避した。



「アシハ...1ニチアレバナオルナ。イチニチナラスグニオツリガクルクライコウリツガアガルダロウ」



 あとは。



「ソシタラ、トリアエズシケンテキニコイツヲカツヨウシテミルカ。キョウ1ニチヤラセテミヨウ」



 我慢比べだ。

次回はしっかり長いです。今までが吹っ飛ぶほどに。

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