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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
183/402

質より量

久しぶりに出てきましたねえ。

 ゴブリン。僕はそいつらを見たことがある。



<シウズ守護騎士団>が僕たちを乗せた馬車を守りながら、あまりにも多すぎるそいつらを殺していく様を見ていた。



 だからそいつらがどんな存在なのかはある程度知っている。



「相変わらずすごい数だな。ここらに巣はなかったはずだから、こいつらは<生存不可地域>の奴らか」



 数。一面の黄緑だったその草原を全て埋め尽くすほどのゴブリンが歩いてきている。



 醜悪なその姿と弱そうな見た目に合っているレベルのひ弱な存在は、しかしその圧倒的数によってその全てを覆している。



 ...よく見ると、お神輿みたいなものに乗っているゴブリンもちらほらいるな。いわゆる将軍みたいな存在もいるのかもしれない。



「うわあ。<リーダー・ゴブリン>がいますね、それも複数体」

「...俺、もしかして人生終わった?」



 当たってたか。多分優先的に排除したほうがいいやつだね。



「まあまあ。この程度で終わってたら何もできませんよ」

「そんなわけ...あるな」

「でしょ?」



 さて。そしたらどうやって脅威を排除しようか。



 クトーニアン。数は?



(反応は計600です。そのうち強いものが25と、その強いものの中で一際強いものが1います)



 うん、やっぱり多いね。あの時よりも数は落ち着いているけど、<生存不可地域>の存在であることが考えられる以上あの時のゴブリンよりも1匹1匹が強いのは間違いない。



「リーシャ、僕ゴブリンについてに知識に乏しいのだけど、その<リーダー・ゴブリン>ってゴブリンを指揮している感じ?」

「そうですね。今回は20体くらいを同時指揮していますが、いつもは12体を指揮して襲ってきます。統率が取れているので、脅威としてはかなりのものですね」



 そして統率も取れている。数自体は600だけど、戦力的には3000くらいだと思っていなきゃダメかもな。



 で、そうなるとまずやるべきことはその<ジェネラル・ゴブリン>の撃破、その次に<ゴブリン>の掃討...



 ...いや待てよ?



「そういえば、奥にどうもその<リーダー・ゴブリン>とやらよりも強そうなやつが1体いるみたいなんだが、それって何かわかるか?」

「え!?そ、それは多分<ジェネラル・ゴブリン>です!」



 ジェネラル。リーダーよりも強そうな名前だね。



「どんなやつ?」

「えっと、<ゴブリン>を統率している<リーダー・ゴブリン>を統率しているのが<ジェネラル・ゴブリン>です。ただ、そうなると<ヒットマン・ゴブリン>と」






 ぐさっ



「マスター!!」

「...かふっ」



 その痛みに反応して思わず吐血する。見ると、お腹から鋭利な短剣で貫かれている。



「ち、近くに敵は?」

「いません。おそらく投擲物です...私が守らねばいけなかったのに」

「い、いいやショゴス。その情報を冷静に僕に伝えてくれるだけ有能だ」



 幸い毒はなく、即死もしていない。つまり肉体はショゴスが治せるレベルの傷、いや傷とも言わない何かだろう。



「喧嘩を売ってくる、というよりは既にこちらに気付いていたんだな。<生存不可地域>には近づかないルートを取っていたんだが...」

「最近は<生存不可地域>が拡大していると聞きます。もしかするとその影響では?」

「...出発の直前に更新した情報だったんだぞ?馬車を走らせて6時間は経つが、たったそれだけでそんなに拡大するか?」



 とりあえず<魔力解放>の準備をしておく。眠っていたメェーちゃんはすでに動き出して夜の森を駆けているから、おそらく僕を攻撃した張本人であろうその<ヒットマン・ゴブリン>とやらはなんとかなるかな。



「<ジェネラル・ゴブリン>よりも強いやつがいる可能性は?詳しく知らないけど、どうせいるでしょ。そういうやつ」

「そうなったらさらにまずいじゃねえか!>キング・ゴブリン<がいるなんて聞いてねえぞ!」



 あ、やっぱりいるのね。



「くっそ、もう夕暮れだからこっから引き返すことはできねえし、だからってここで野宿するわけにもいかねえぞ」

「強行突破、だけですね」

「まあいつも通りかあ。その>キング・ゴブリン<とやらはどこに?」

「大体は巣の奥にいます。もちろんあの大部隊の中にはいないと思います」



 ふむふむ。そうなると...



 むう、今僕が持っている地図だとちょっと狭いな。カウラとニャージーランドの間の地図だし、それにおそらくこの地図の中に<ゴブリン>の巣はない。



 あるとしたら、<生存不可地域>の中だろう。



 ただそこの地図は...うーん、護衛である以上用意はしてこなかったんだよね。もちろん行くんだけど、準備は最寄りの街であるカウラでやるつもりだったし、護衛対象であるリーシャは連れて行かないでやる感じだったし...



「...リーシャにダメもとで聞くんだけど、<生存不可地域>の中の地図って持ってる?」

「持ってますよ?元々行く予定だったので」



 いや持ってた。マジかよ行くつもりだったのか。



「ちょっと見せて?」

「わかりました」

「それとイジさん。このまま直進しておいてください。多分そのほうが危険じゃないので」

「わかっとるわそんなこと。ただこの速度で直進してたら、あと50ほどで接敵だぞ」

「了解です」



 大体5分。結構ヤバめだけど、こういう時に焦ったらそれこそ死は免れない。



「...広いな。どれくらいあるの?」

「少なくともニャージーランドの5倍くらいです」

「目測で東京都中央区と同じくらいあったのに、それの5倍か...」



 さて。シュド=メル、出番だよ。



(...人使いが荒いな)



 あんたは人じゃないでしょう。それにそれだけ強いってこと。あと今回はメェーちゃんも連れて行ってもらうし、それでも苦戦するはずだからあくまでもやってもらうのは時間稼ぎだよ。



(苦戦する根拠は?)



 聞いてる感じ<ダンジョンボス>っぽいんだよね、>キング・ゴブリン<って。それで旧神の中でも近接戦闘能力が特に高いバーストがボロボロになっているのを見た限り、シュド=メルとメェーちゃんだけだと突破は難しいかなって。



(シュブ=ニグラスの<魔力解放>をした場合はどうだ?)



 いけるかもね。ただ念の為リソースは残しておきt



(使え)



 はいわかりました!



「メェーちゃん!」

「呼んだ?」



 よんですぐにくるメェーちゃん。首を傾げている姿もやっぱり可愛い。



「<魔力解放>する...前に、リーシャ、>キング・ゴブリン<の居場所の見当ってつく?」

「...多分、ここと、ここと、ここかな」



 森の中、湖の辺り、山の頂上か。



「メェーちゃん、<魔力解放>したらこの湖の辺りに行って>キング・ゴブリン<がいるかどうか確認してきて欲しいんだ」

「倒してもいーの?」

「まあ難しいと思うけど、交戦しても大丈夫だと思う。やってもらっていい?」

「いーよ!」



 シュド=メルはこの森の中。山の頂上は見に行かなくていいよ。



(誰かに行かせるのか?)



 そうなるけど、今回は召喚しようと思って。



 空飛べるやつ、まともにいないからね。ショゴスはギリ飛べるけどあくまでもドラゴンの姿になった副次的効果だし、こんな状況で空を飛んでもらうわけには行かないから



(...まあ、いいだろう。それとそちらの方に20ほどの反応が急速に向かってきている。気をつけるんだな)



 ね...え?



 その瞬間。



「「「ギイイイギャアアアア!!」」」



 そう言って犬に乗って後ろから突っ込んでくるそれらを視認した。



「<ナイト・ゴブリン>!」



 そう呼ばれたそいつらはニタアと嫌な笑みを見せ、この馬車と並走し始めた。



「このまま乗り込んでくるか!リーシャ!」

「私は大丈夫です!マリアは自分の身を心配してください!」



 いや君は護衛対象なんだが!?



 と思ったその矢先、予想通り後ろの空いているところから乗り込んでくる<ナイト・ゴブリン>が。



 しかも、それはこちらを向いているリーシャの方へ飛びかかっている!



「リーシャ!」



 危ない!






「せあっ!!」



 メリィッ



 変な音が聞こえ、そのままリーシャの回し蹴りで吹っ飛ばされる<ナイト・ゴブリン>



「ね?大丈夫でしょ?」

「いやまあそうだけども!後ろ後ろ!」

「あ、そうでした!まだまだたくさんいます、警戒を!」

「いや違うそうじゃない、いやそうなのか!?」



 もうさ、この人に護衛って要らなかったんじゃないかな。

難易度の高いゲームであるほど数というものは危険です。



ダー○○ウルとかね。

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