客観的な見解
今回は久しぶりに2つの視点で語られます
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二重人格、というものがある。
別に詳しく調べたことはないけど、それはある何かしらの理由で人格が分裂、そのまま1人の人間の中に2つの人格が入っている人間のことを意味する言葉だろう。
そして大概その人格は真逆の性格、あるいは普通の人間と極端な人間であるとも。クトゥルフ神話を調べていくうちに知った副次的な知識だから合ってるかは知らないけどね。
「ええと、ということは、いつの間にかマリアはその二重人格になってしまったと?」
「とも言えるけど...なんか違う気がする」
「どういうことですか?」
「おそらくだけど、僕自身の人格は分裂していない」
「え?」
「そもそも僕が知っている二重人格というのは、片方の人格が寝静まっている時にもう片方の人格が現れるもの。つまり、」
つまり、こんなふうに共存はしないはず。そもそも精神と肉体が違うっていうのも二重人格って言うのか知らないし。
というかなんでこんな状況になった。僕、なんかした?
「いや、していないはずだよ。さっきたまたま流れでそう言ったからそのまま呼ぶけど、精神の僕もこの肉体の僕もどっちも同じ存在であるはずだし」
...敵になりうる存在がどっちか作り出した、とかは?
「...流石にそれもないと思うけどね。そんなことやったら真っ先にショゴスが気づくはずだし。でしょ、ショゴス」
「え、ええ。それはまさしく攻撃に等しいことですから、精神攻撃に対することならばお伝えしますよ」
だよねえ。
「えっと、さっきの二重人格の話であるのなら、確か主人格というものがあるというのは聞いたことがあります」
「ああ、本来の人格のことだろ?」
それもなあ...別にどっちに違いもないというか。
だって、ねえ。k
「ハスター」
うん、出てくるよね。どうも記憶は合一のものを使用していて、精神性、とくに僕の場合でわかりやすいのはクトゥルフ神話に対する興味関心だけど、それも人一倍ある。
そして僕がほとんど思考していないのに答えを言い当てたという点から、思考をリアルタイムで観測している、つまり思考領域が同一であることもわかる。
「...k」
アトラク=ナチャ。
「うん、その仮説は正しいだろう。思考の内容が入ってくるというか、まるで自分が思考しているような感覚があるだろ?」
うん、ある。これはもう仮説を立証したと言っていいだろう。
そしたら...あとは...
「あ、あの...」
「ん?どうしたリーシャ」
「ふと思ったんですけど、この訳のわからないことに動揺しないんですね」
「ああ、まあ<神話生物>がいるくらいだからね。これくらいで動揺していたら何もかもに動揺しているよ」
「あ、えっと、そうではなく...なんというか、慣れているように見えたんです。こんなふうに精神と肉体で会話することに」
「まあそりゃあ...ああ、そういうこと」
あれかな?もしかして前世関連かな?
「前世ですか?」
「これでも転生者なんだよね」
「それは知ってます。でも前世関連っていうのは?」
端的に言えば、僕には前世、つまりこの世界に転生してくる前の世界の記憶がないんだよ。
生まれた時からね。
何度も何度も思い出そうとするけど...なぜかそこまで思い出せない。
「まあクトゥルフ神話に関しては別だけど」
「は、はあ...」
で、つまりその欠落した記憶に何かヒントがあるのでは、と思ったんだ。
まあもし本当にそうなら、今まで思い出した記憶から考えて二重人格である可能性も出てきちゃうけど、まあそれはそれでよし。
「いいんですね...」
「別に日常生活に問題はないし、そもそも思考自体が一緒なら同じようにものを考えることはできる。ショゴスが僕の体の再生を行えるのと根本的なところでは似てる話だけど?」
「確かに。肉体を操っているものと精神そのものが違うという話ということはわかりました」
「ならよし」
そうなったら...とりあえず今後の方針としては僕の失われた記憶を埋めていく形でいいかな。
「それでいいと思うよ」
よし、ならそれで行こう。
「...すごい適応力ですね」
「それがマスターの強みでもあります」
そう。肉体方面は弱いけど精神面は強いのだ。
「そうなんだよねえ。僕自身は弱いわけで、多分この体の中での優位性は精神の僕にあるかな」
え?結果として行動に移すのは肉体なんだから優位性は肉体の僕にあるんじゃないの?
「え?」
え?
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「お帰りなさいませ、<勇者>様」
「ああ、ただいまk」
「いやあ、久しぶりに帰ってきたぜ、神聖皇国イマジ首都ルードに!」
「あのねえ...今回はあまりはしゃいでいる暇はないわよ」
「そうですよ!巫女様の神託を受けに、私たちはお忍びで来ているんですから!」
「あなたも、内心浮かれてるでしょ。声がいつもの1.1倍になってる」
「あはは!」
「はあ...先行きが不安d」
「お、ミズドのおっさんが屋台やってる!おっさん!くし2本!」
「あいよ!」
「だからそんな時間ないんですって!」
「い、いいのか?あんなにはしゃがせて」
「...頭痛が痛い」
「だろうね...一応頭痛薬はあるぞ?」
「お言葉に甘えていただくとしよう.........ん、美味しい」
「亡くなった母さんが製作した特別なレシピの頭痛薬だよ。結構効くのに美味しい、まさに良薬なのに口に甘し。そんでもってそいつは母さんの作った最後の一個だから、まあ少なくとも間違いなく最高の味だろうよ」
「そうか...すまないな、そんなものをもらってしまって」
「いや、いいさ。僕は頭痛持ちじゃないし、レシピ通りに作れば誰だってできるはずだからね」
「...どこかであったか?」
「?どうして?」
「いや、気配が知っている気がするんだ。それもかなり深く繋がっているレベルで」
「いや、僕の記憶の中に君はいないけど。僕はただの門番だし、君は<勇者>様だろ?」
「...そう、だよな。ああ、流石に違うか...」
「一応聞くけど、その知っている気配って誰のものなの?」
「ああ...まあそれくらいなら知っても大丈夫か」
「え?何それ禁忌の知識みたいn」
「マリア・ヒルド。シウズ王国の<国立学園>に所属する召喚師だ。知ってるか?」
「......」
「どうした?」
「...いや、なんでもない。まあ少なくとも僕は知らない名前かな」
「そうか」
「<勇者>様はなぜここに?今は確か次の<魔王>に向かっているって聞いたけど?」
「...まあ、ちょっとな。悩みがあったんで巫女様から神託を授かろうと思ったんだ。この街で補給も兼ねてるが」
「ふーん」
「そうだ、念の為名前を聞いておこう。優しくしてもらった以上礼は返したい。俺の名前はソルス・バミアだ」
「自分から名乗るとは。まあいいけど、僕はキラ・グリズさ」
「ありがとう、後日自宅に金一封を送らせていただく」
「うわあ、マジかよ」
「それではこれで」
「あ、うん。じゃーねー.........ちっ」
「...ん?」
「どうかしたか?」
「いや...今日って門番俺たちだけだっけ?」
「確か3人だぞ...あれ、1人いなくね?」
おっと?