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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第五章 狂恋少女常守
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1年以上経過した後にようやく関わってくるヒロインというのはもはやヒロインと言わない可能性がある

さあさあ新章です。

 ところで。



 僕には日課がある。と言ってもそこまですごい事ではないけどもね。



「朝起きたらジョギング5km、これを毎日続けている人間はそういません」

「そうでもないと思うけどなあ」



 もちろん<ダンジョン>の探索だったり面倒ごとに巻き込まれたりしている時はそういうことはできない。だけど、日常的に過ごしている今現在は行っている。



 6歳でやることかと問われると怪しいけどね。この世界に来て人間の年齢のラインが低くなった気がする。



 例えば、地球では基本大人にならなければ仕事はしなかった。もちろん高校生になったらバイトをする人もいるだろうけど、別に全員がしているわけではない。



 しかしこの世界では僕くらいの年齢になると全員魔獣を討伐できるようにならなければならない。というか、そうしないと生きていけない。



 ジョギングを行ってニャージーランドを見渡していると、よくわかる。



「また門から魔獣が入ってきたんだって?」

「門番の人も死んでしまったそうよ。また魔獣も強くなったのかしら」

「違うさ。どうもあの門番、日々の鍛錬を怠っていたそうだよ」

「あらそうなの。なら可哀想だけど、仕方ないわねえ」

「魔獣とは会ったら戦わなければいけないのにね」



 結構死に対して何も感じていないというか、なんというか。地球人ほどの強い感情がない。



「ねえ聞いて!実戦訓練でうちの子死んじゃったのよ!」

「ええ...実戦訓練とかいうやわな戦場で死ぬとか、そいつはなんのために生まれてきたんだ?」



 それどころか死が結構軽んじられている。もう会えないとかそういう事ではなく、日常的にあることと化している。



 やはりとんでもない世界だ。



「そろそろ2.5kmに到達します」

「お、じゃあ帰りながらもう半分行こっか」

「はい」



 今は夏、カリナー()の月。この世界では別にミンミンゼミが鳴いていたり蒸し暑かったりするわけではなく、今まで通り何もない。



 季節というものがあまりない、というのが正しいのだろう。冬だからといって雪が降るわけでもない。



 まあ流石に温度変化はあるようで、夏は半袖冬は長袖が常である。



「マスターは体を構成している物質の内99%が(ショゴス)であるため気温に無頓着なだけです」

「かなあ」



 それはまあ、しょうがないか。生き延びるためには必要だったことだし。



 ...しかし、僕はどんどん人間じゃなくなっていくなあ。



「と、着いた着いた。ただいまー」

「誰もいませんけどね」

「そんな寂しいこと言うなって」



 そう本当に誰もいない。今借りている、というか貸してくれる事になった家は普通の一軒家。



 の、ように見せかけて実は玄関のノブを余分に4回、計5回回す事によっていつもの隠れ家に行けるようになっている。



 がしかし。本来の住人であるサオさんは「ちょっと大事な会議に行くので留守にするっす。あまりいじらないようにするっすよー!」と言ったっきり帰ってこない。相当重要なのだろう。



 そして次にいつもいる10人であるミ=ゴは現在このニャージーランドで主治医代理兼院長代理兼女王のかかりつけ医という休みもないブラック企業で働いている。そりゃあここに帰ってきたって誰もいないはずだ。






「だから、そろそろ誰か来ると思って身構えていたら、本当に誰かいるとはね」



 クトゥルフ神話的に、こういうちょっと空いているタイミングというのはよく神格が、特にニャル様あたりが狙ってくるタイミングだ。



 といってもこの世界でのニャル様は商人。別に何かに加担してくることはそう珍しくない。珍しくない。



「...もしかして、私のこと尾けてきたりしました?」

「まさか。あれから2ヶ月、そろそろ何か起こりそうと思っただけだよ」



 こういう時の勘ほどよく当たる。目の前にいる女の子には通じないだろうけども。



「あー、えっと、まず自己紹介を」

「その前に事情聴取からかなあ。ショゴス」



 瞬間、僕の左腕が分離し少女を拘束。



「は、速い」

「普通なら()()には誰も入ってこれないはず......ふむ」



 彼女の容姿だが、これは実に可愛いと言わざるを得ないだろう。



 なんならドストライクで...そして、なぜかどこかで見たことのある顔。



「あの...覚えていますか?」



 そういう少女は椅子に拘束されているながらも僕より背が高く、それも考慮したら年齢は中学生ほどか。



「...思い出した。君、あの塔で捕まっていt」



 そういったその時だった。彼女の目が輝いたかと思った矢先、なんとショゴスの拘束を破って僕に飛びかかってきた。



 そしてハグ。かなり力が強くそして大きい胸に押しつぶされて至福ゲフンゲフン、窒息しかける。



「そうです!私、あの時あなたに助けられたリーシャです!」

「むむむー!」



 腕を叩いてギブアップの意思表示。



「あっ、すみません!大丈夫ですか?」

「ぷはっ...大丈夫大丈夫、これくらいで死ぬやわな体ではないよ...死ぬかと思ったけど」

「それならよかったです!」

「よかねーよ」



 まあいいけどね。可愛いし。



「ちなみに拘束時の時点でかなりの抵抗を見せていました」

「どれくらい?」

「私が本気を出さなければそもそも拘束ができませんでした。」

「マジk」

「ああいや、彼女が手加減をしなければ、に訂正しましょう」

「...ヤバすぎるな、この子」



 ============================================



「では改めまして...私はリーシャと申します」

「リーシャね。覚えた。僕はマリア、マリア・ヒルド。それで僕の左腕のこいつが」

「ショゴスです」



 腕から出てきた触手がぺこりとお辞儀をする。



 なかなかに不気味な光景だが、それがいい。



「マリアさんにショゴスさんですね。はい!存じています!助けられたのは2回目ですからね!」

「え?」



 どゆこと?



「...思い出しました。1年前、マスターが盗賊に誘拐された時に一緒にいた子です」

「ああ...って、嘘だあ」



 まじまじと全身を見つめる。身長が中学生レベルにしては体型が圧倒的なこの姿で、えっと...確かあの時のあの少女ってことは年齢は



「6歳です!年齢的には同い年ですが私が生まれたのはマルフ(3)の月なのでマリアの方が年上ですね」

「そっかそっか...ちょっと待て」



 今、心を読んできたのか。確実にそうだよね?



「はい!」

「いやはいじゃなくて」



 ため息をついてしまう。何故僕がこの世界で会う生物はこうも易々と心を読んでくるのだろうか。



「まあ私の場合は読みたくなくても読んでしまうのですが。ほら、私の<鑑定眼>は暴走しているので」

「ああ、そっか...あ?」



 待てよ、今考えてみるとこの子、リーシャちゃんにショゴス見せるのはまずいのでは?



「あはは、もう遅いですよ。そもそも1年前に鑑定していしまいましたし、ステータスは[<魔王>の芽]まで見えていますし」



 わーお。やばいねこれ。



 一気に危険人物に早変わりだ。



「ところでどうやってここに入ってきた?普通なら入れないように細工が施されているのだけど」

「サオさんに聞きました。彼、快く教えてくれましたよ!」

「命の危機を感じただけなのでは...?」



 たしかに。リーシャちゃんを目の前にして生命の危機を感じない奴はいないだろう。見た目は普通、ゴホン!失敬、筋肉質ではないけど、しかしその筋力は絶大だ。



「そんなことより!」



 どん!とテーブルを叩いて詰め寄ってくるリーシャちゃん。



 一体何?






「私を、マリアのパーティーメンバーにしてください!」



 ...へ?

一体どういうことなんだってばよ。

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