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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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対バースト④ でもやっぱり飼い主がいちばん

今回も短め。



といか自分が書いているこの小説自体が短めですね。はい。

「アハハ、人間の攻撃で泣き叫ぶなんて、お馬鹿さんみたいだね!」

「く...そ...」

「でーもー...容赦しないからねぇ!!」



 まるで隙だらけのバーストを思いっきり蹴り飛ばし、それに追いついて追撃をかけていくシュブ=ニグラス。



 ...俺たちも向かわなければ。



「餞別だぞ」「持っていくがいい」



 そう言われたかと認識した瞬間、自分の体が不意に軽くなっていく。



 何らかの魔法、いや<魔術>か。



「私のできるバフよりも高性能なバフができてしまうのね...はあ、魔法使いとして少し複雑な気持ちだわ」

「だがここまで色々してくれたおかげで今があるんだからな。これからもよろしく頼むぞ」

「わかってるわよ...さっさと行きなさい!もう決着はすぐそこよ!」

「ああ!」



 すぐに走り出し、バーストの近くへ。



 すると、カミラからの<通話>が来た。



「5秒後、シュブ=ニグラスがバーストを蹴り上げます!空中でシートさんが矢を当てますから、そこで止まったタイミングで止めをお願いします!」

「わかった!」

「了解!」



 通話が切れたその瞬間、思い切り真上に飛ばされるバースト。



 さすがカミラ、状況判断がやはりいい。



 こちらも飛び上がってシートの矢を...と、待つ前に



「<完全射出>!」

「がああああ!!」



 真上から心臓を貫かれ、勢いが対消滅したことで一時的に空中で止まってしまうバーストと相対する俺とマイゲス。



 ...その顔は、憎悪と怒り、そして悲しみに染まっていた。



「いくぜソルス!」

「ああ!」



 同時に切り掛かる。おそらくすでに失血の量が多すぎてまともに動けないのだろう。避けようとして来ない。



 しかし体に張ってある<結界>が攻撃を阻んでくる。あくまでも矢は無視するのに対して近接攻撃は無視しないということだろう。



 だが。



「なら割れるまで攻撃し続けるまでだ!」

「おうよ!」



 すでに一点集中で攻撃し続ければ割れることは知っている。攻撃を当てるところを考えながら、体に負荷をかけすぎないよう動きを最小限にとどめて切り続ける。



 頭、心臓を穿たれ生きる生物はいないだろうが、念の為鎧の類が守っていない腹を真っ二つにする。そのために腹を切り続ける。



「「おおおおおお!!!」」



 空中である以上変な方向に動くバーストだが、マイゲスが動かしたなら俺が、俺が動かしたならマイゲスがそれぞれ反対側へ動かして切りやすいようにする。



 ...接地するまであと7秒。



「...今だ!」

「「<貫撃>」」



 そして、前と後ろから同時に貫く。



 それと同時にようやく<結界>が剥がれ、こちらの攻撃がまともに通るようになる。



 ...確かに、さっき吹き飛ばされた時はこちらの攻撃は意味をなさなかった。まるで何かゴムのようなものに剣を叩きつけたかのように、刃が体を通らなかった。



 しかしだ、俺とマイゲスの同時攻撃を連続ですれば...



「確実に、効いている!例えお前が<神話生物>、魔獣よりも脅威となり得る存在だったとしても、俺たち<勇者>の攻撃が届く!」

「この...人間風情がああああ!!」



 叫びを流し、最後に全力の一文字斬り。マイゲスも同じように両側から薙ぐ。



「「<2人攻撃(コンビネーション)神殺し(マイルス)」」



 七色の光を纏った剣がバーストを切り裂く。



 上半身と下半身が離れ、そのまま地面に落ちる。そして俺たちも体力がないため自由落下。



 ドシン!



 鈍い衝撃が体を襲う。最も、バーストに切り裂かれるよりはマシなのだろうけども。



「が...あ...」



 ーーーーーーーーーーーー


 >وصي القط مجنون<


 HP 0/22222


 ーーーーーーーーーーーー



 バーストは、地を這っていた。



 手だけで、まるで人間みたいな生への執着。すでにHPは0、生物なのだからこれ以上は生きることを考えても無駄だ。






 だからこそ、思う。奴ら<神話生物>はただ生物を名乗っているだけであり、実際は生物でも魔獣でもない、何かなのではないのかと。



 地を這い自らの下半身に到着したバーストは、そのまま下半身を掴んで上半身との切れ目に当てがった。



「く...ふう......」



 そしてなぜか癒着した。立ち上がって、体を動かしているのを見る限り生命活動に問題は生じていない。



 ...わけがわからない。



「さて...よくもやってくれましたね。まさかここまで抵抗されるとは思いませんでしたよ」



 こちらに近づいてくるバーストの目は、さながらゴミを見るような目だった。



 人間が戦いで勝つことができないということとは、こういうことだったのかと。俺はようやく納得した。



 あたりまえだ。死なないのであれば、勝つことはできない。今のような命の取り合いで死なないのなら、俺たちが、人間が彼らに勝つことはまずもって無理。



 最大限できることがあったとしても、おそらくどこか遠いところに飛ばすことでこちらにくるまでの時間稼ぎをするくらいだろう。



 ...いつの間にか腕も、爪も、全て完治しているな。



 ここまでの力量差があるのだから、そうだな、俺たちはできる限りのことをやったんじゃないだろうか。



「ええ、ですからここまでですよ。バースト」



 そう声が聞こえる。声のする方を見ると、俺の後ろにはクタさんがいた。



「何?」

「どう見てもあなたの負けですよ、これ。外神の方々が手を入れてきたのは想定外ですが、確かにあなたは彼らの手によって真っ二つになりました」

「...」

「外神がいる以上、我々がやることは彼らに試練を与えることではなく、彼らに手を差し伸べることです。そうではありませんか?」



 外神。聞きなれない言葉だが、おそらくシュブ=ニグラスやナグとイェブのことを指しているのだろう。



 ...なるほど、確かにあの化け物じみた強さ、神という名に値する。



「...ちっ」



 するとバーストは途端に小さくなっていき、何らかの生物、いやおそらくあれはネコマタの女王が話していた魔獣の姿か。その姿に変貌する。



 姿は小さく、本当に中身があの強大な存在なのかと疑うレベルのものだ。



「命拾いしましたね、人間。クタニドの頼みです、今回のところは諦めるとしましょう」



 そう、言われた。



 瞬間、体に疲れがどっと押し寄せる。



 あたりまえだ。<魔王>との戦闘直後だったにもかかわらずそれよりも強い可能性、いや断言しよう、それよりも圧倒的に強い<神話生物>と戦ったのだ。体力なんて残っているわけがない。



 だが、こんな諺がある。<探索は帰り道まで>。生きて帰らなければ、それに意味はない。



 すぐに立ち上がる。余力を残していたわけではないが...ん?



 今、俺たちがいるのはどこだ?ここは...大穴ではないな。



 ...数多くの倒壊した建物や<創樹>、その断面を見るに...あの場のちょうど真上か。



 だけど...俺は今地面に立っている。もちろん建物なんてないわけだけど、そうなると...考えられることは一つだろう。



「ああ、地面は元に戻しておきました。地下にある通路も全て塞いでおきましたから、後始末はしなくても大丈夫ですよ」



 ...さすがクタさん、とはならないな...



 ...くそ、疲れた......もう眠い......



 わざわざ......立ち上がったのに...もう、起き上がる力もない..........

もう少し、この章にお付き合いください。

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