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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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対バースト① 猫じゃらしあるいはマタタビ

そういえば、某ゲームのスマホ版が開発、発売されました。



アンドロイド版、速く来ないかなあ。

 先に走り出したのは俺だ。しかし当たり前のように俺を抜き去っていく者が2人。



 シュブ=ニグラスとマイゲスだ。



 それを横目に少しスピードを下げる。まずは牽制で相手の様子を伺うのは初見の相手を戦う時に重要な要素だ。



 もちろん俺たちが話し合っているときに行われていた戦いも見ていたが、やはり相対するのと見ているのじゃ感覚が違う。



 その場の情報が欲しい。だからまずは足の速いマイゲスが先制する。



「うらあ!!」



 鋭く挟み込んでくるマイゲスの<挟撃(シザー)>。<魔王>が見せてきたものよりも深いその攻撃は当たればどんなものでも軽く切り裂く...



 カン!



 だが、その攻撃は当たる前に弾かれた。最も刃と刃が近づく瞬間に合わせて内側から弾き返されてしまった。



「...へえ!!」



 その勢いを逆手に取り少し離脱。その隙間にシュブ=ニグラスが入ってくる。



「アハハ!」



 笑みを浮かべながら乱舞するそれはまさに狂っていると言うに相応しい。が、



「...」



 その全てを無言で防いでいくのもまた異常だ。あの攻撃一つ一つが、おそらく金属の盾じゃ受け切れないほどの威力を持っているにもかかわらず、それを全て自らの手だけで受け流しきっているのだから。



「そこ!そこ!!そこ!!!」



 右フック、左ストレート、そしてハイキック。合計で1秒にも満たないほどの速度で繰り出されるその3連撃すら乗り越え、ガラ空きの胴に爪が向かう。



「...っあ!?」

「ヒャハ!」



 ...いやちがう。ハイキックはフェイントで実際は踵落とし、その攻撃をもろに喰らって倒れ、こまずに腕だけで跳び上がる。



 シュブ=ニグラスも同様に踵落としの反動で空中に跳び上がっている。つまり、ここから空中戦というわけだ。



 "...さっきから解説しかしていませんね?"



 いや、それはそうだが。今に関しては相手の観察も含めて...っと、動いたな。まだ10秒も経ってないぞ。



「落ちろ!」



 その掛け声で放たれた回し蹴りで、シュブ=ニグラスが地面へと激突する。



 ...入り込むなら今か。



「っ!」



 死角から跳んでの<即撃(ブート)>。普通ならこれを受け切ることはかなり困難だろうが、目の前の化け物、<神話生物>は普通じゃない。



 空中を一回転すると同時に足で剣を蹴り上げ、しかもそこから無慈悲な爪がやってくる。



 今は空中に浮いている状態。避けることは可能な限り困難で、できることももう何もない。



 だが。こちらには仲間がいる。



 ヒュン!



「...ちっ」



 音速の矢が動いている頭を狙ってやってきていた。それを避けたことで爪が届かなくなり、さらに俺はその矢を蹴ることで勢いをつけ、そのまま地面へと帰還。



 シートがなんとかする。そう思っての攻撃だったが、やはりうまくいったようだ。少なくとも怪我はしなかった。



 だが休憩する暇はない。自由落下してくるバーストの着地を狩るために走る。



 ...とりあえず、攻撃を当てることに専念しろ。



「<円撃(レイジ)>」



<魔力>によって生成された3mほどの刃がアルカマに付き、リーチが伸びた状態で繰り出される回転切り。



 予想着地点まであと2m。バーストはすでに接地まで1m。避けることは困難。



「はあっ」



 だが避ける。曲げていた足を伸ばして着地してすぐに跳び上がり、そのまま俺の頭上へ。



 爪が首に伸びてくる...が当たることはない。



 着地狩りをしにきたのは俺だけではない。シュブ=ニグラスもそうだった。



 バーストは現在空中で頭を下にした状態でいるし、何より爪は俺の方へ向けている。受けるのですら困難を極めるだろう。



 そしてその予想は的中、爪をクロスしてガードはしているもののその反動が凄まじいようで、腕が痺れているみたいだ。



「背中が」

「!?しまっ」

「ガラ空きだぜ!!」



 そんな隙を見逃さないのがマイゲスという男。隙をついた<貫撃(トンネル)>は防ぐことも避けることもままならない...






 そう確信していた。だから驚いた。



 何か、透明なものが、言うなれば膜のようなものがマイゲスの<貫撃>を弾いた。



「なっ...」



 相当に驚いたのだろう、マイゲスも声を出してしまっている。



 ...このままだとマイゲスが危ないな。空中にいるのはどちらも変わりないが、攻撃あるいは防御体勢を取るのが速いのは、マイゲスの攻撃を全く意に介さなかったバーストの方が先。



「...おおお!!」



 とりあえず今出せる最大の切り上げをバーストに向かって繰り出す...



 が、弾かれる。音もなく、ただただ弾かれる。



「何..?」



 感覚としては、勢いが全く逆の方向へ向く、そんなイメージ。投げられた石がまっすぐ前へ進んでいるのであれば、その勢いが全て反転、真後ろである投げたやつの方へ向かっていくような、そんな感じ。



 冷静だからこそそう思考できるが、おそらくこの状況で冷静さを欠かずにいられるのは相応の精神力がいるだろう。



 ...さっきから無視していたが、何より恐怖と威圧のオーラが凄まじい。近づいただけで焼けこげそうになるのだから、1m以内にいる自分は一体どうなるのか。



 気の迷いで考えてしまったことを全て忘れ、すぐに今の状況を打開する策を考える。



 しかし、今俺はまさに窮地に立っている。



 バーストの標的は俺。攻撃2回分という十二分な時間を手に入れたバーストは、体勢を戻した上で両手でシュブ=ニグラスの攻撃をいなしながら、両足を使って俺に掴み掛かった。



「ぐっ!」

「掴みましたよ」



 シュブ=ニグラスに手刀を振り下ろす。相当に力のこもったそれは、ガードのためにクロスした腕ごと胸を切り裂いていく。



 しかも



「<突風(ブラスト)>」



<無詠唱>。バーストは高く舞い上がっていき掴まれている俺も同時に吹き飛ばされていく。



 その時間、およそ10秒。それだけあれば...ニャージーランドのはるか上空まで飛ぶことができるだろう。



 ...空気が薄い。体の芯から凍らせてくる寒さもある。<ダンジョン>で味わったものとは、また別のものだ。



「だからこそ、あなたは満足に動けない。でしょう?」



 グサ



「がは、ぐっ!!」



 流れていく血を横目に袈裟斬り。しかし当たったところで跳ね返る。



「いやはや、まさかこの程度の<護魔術>を乗り越えられないとは、弱い生物ですね。人間なら銃などを使えばいいのにまさか剣で生きる世界だとは、流石の私も、フフ」

「く、そ!」



 何度も切りつける。今できることがそれくらいしかないからそれだけやる。意味不明な言葉に惑わされず、ただただ斬り続ける。



 が、駄目。その全てが弾かれる。



 どれだけ速くとも、どれだけ強くとも。一切合切が意味をなしていない。



 ...だが反応はいい。同じ箇所を斬り続けた甲斐があった。



「まだそれだけの余力を?人間にしてはタフ...」



 その瞬間、まるで何かを割りながら進むかのように剣がバーストに肉体へと吸い込まれていった。



「ほう、やりますね」

「う、おおおおお!!」



 おそらくこの一撃を逃したら攻撃は当たることがないだろう...



 しかし。だがしかし。



「...残念、でしたね」

「く...そ....」

ささ、まだまだ続きますよ。

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