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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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新訳:<神話生物>徹底解説!初心者でもわかる(大嘘)クトゥルフ神話のすゝめ!!

さて、勇者視点です。

「マリア・ヒルド...いったいどうやったらこのような強力な<召喚獣>が召喚できるのですか!」



 叫ぶシート。元は召喚師を目指していたからこそ思うところがあるのだろう。



「確かにそれは気になるわね...<召喚獣>は戦闘をあまり得意としないか、できても召喚するのがかなり高難易度であるはず。なのに、見たことのないスキルを5つも持っていてしかもステータスも高い」

「そしてそれと同等に戦っているあの女!あれもあなたの<召喚獣>でしょう!なぜ...どうやって!!」

「うるさいなあ。そもそも<召喚獣>じゃなくて<神話生物>だって言っているだろ?」



 こっちのことを少し睨んでくる。だがその程度。聞く耳は持っている、ということか。



「俺たちには<神話生物>に関する知識が一切ないからな。できればそれについてご教授願いたい」

「...仕方ないなあ」



 呆れたふうにそう言い放つマリア・ヒルド...少し嬉しそうなのはなぜだ?



 ...隠すつもりなし。それほどその<神話生物>の実力に自信があるのだろう。



「そもそも<神話生物>は人智を超えた存在、人間の完全超ハイパーウルトラスーパー上位互換の生命体だよ?魔改造されているとはいえ、なんで一端の人間である僕が召喚できると思っているんだ」

「いや、知らんて」



 そういえば、似たようなことをメッキョで言われていたな。神々を召喚できるわけが...と。



「じ、じゃあどうやって!?」

「それはまあ...召喚?」

「やっぱり<召k」

「どうどうシート。落ち着けって」

「...一応問おうか。なぜあいつを止めない?お前まで殺そうとしているが故にあんな激しい戦闘が起こっているのだろう?」



 ちらりと右を向けば激しい戦闘の真っ只中。



 ...マリア・ヒルド側のあの女性の傷も増えてきたな。時間稼ぎもそろそろ限界なのかもしれない。



「それも君には言った」

「ああ。だからこそ、なぜそんな止められない存在をお前が召喚できるのだと聞いている」



<召喚獣>は元魔獣。どれだけ虚弱なやつでも抵抗しない人間を殺すくらいの力はある。



 だからなぜ戦闘を不得意とするのかは昔から論争が絶えないらしいが、1番の理由は召喚師の方にあるというのが今の一般的な説だ。



 いわく、無意識的に召喚する魔獣にストッパーをかけるらしい。だから自分よりも弱いもの、そもそも召喚師は戦闘自体できない人が多いが、そのせいで応用力はあっても基本である戦闘ができない<召喚獣>が多い...とかなんとか。



 しかし、そうなると彼女は違う。あのマリア・ヒルドは6歳という年齢で<ダンジョン>を踏破した。もちろん俺たちも6歳なわけだが、それはしっかりと訓練を積み、自己を強化し、普通よりも強くなって、そして5人で行ったからこそなせること。たった1人でできるような戦力ではない。



「そんなこと言われてもねえ。実際に僕は今戦闘を行っているバースト様とシュブ=ニグラス様を呼び出した...召喚したわけだしね」



 そんなことはわかっている。だからこそ、もし通説が正しいのならマリア・ヒルドは無意識のストッパーを破っている、あるいはそもそも初めから無い可能性がある。



<魔王>だから、では流石に無理がある。それくらいおかしいことなのだから。



「...止められない、説明もできない。異常に強いしいうことも聞かない。そんな存在を<勇者>に倒させると?」

「そうだね」



 っ、そうだねって...



「あのなあ、明らかにおかしいんだよ、お前の言ってることが。なんで自分で止められない存在を、<魔王>が勇者に頼んで止めてもらおうっt」






「じゃあ聞くけど、あなた方<勇者>はこのままこの世界の人間を全て見殺しにするつもり?」

「...何が言いたい」

「何って、そのまんまだよ」



 近づいてくるマリア・ヒルド。全員が少しだけ警戒を行うが、それでも近づいてくる。



「あのねえ。<神話生物>は<魔王>である僕にだって止められない存在なんだよ?そして、そんな存在が全人類ぶっ殺す宣言をしてる。で、その一番最初の標的は僕とあんたら<勇者>なの。言ってたでしょ?」



 ...確かに言っていた。本気で俺たちを殺しにくると。



 だが...



「...<召喚獣>は自分の召喚主が死んだ場合消えることになります。これは自分が存在するための<魔力>を召喚主から得られなくなるためです。そして、存在するために必要な<魔力>というのは他の何かで代用することができないことがわかっています。つまり、あなたが殺された場合あいつの動きも止まることになるんです。なのにあなたは...!」

「だーかーらー。<神話生物>だって言ってるだろ?いい?そもそも<神話生物>の方々は僕なんかいなくてm」



 瞬間、黒い何かが飛来してきた。



<魔王>と俺たち<勇者>の間を音速、いやそれ以上の速度で飛んでいく。



 ...それに気づいた時点で遅かった。



「ふう...時間がかかりましたがとりあえず吹っ飛ばすことはできました。そして、その隙にマリアを貫くことも」

「...かはっ」



 がっくりと項垂れるマリア・ヒルド。様子を見るに気を失った...いや、そんな状況を確認している合間にも血液が溢れ出してくる。



 ドクドクと、まるで中の心臓が外に血液を吐き出しているかのような激しい出血。それを俺たちは間近で見ていることしかできない。



 そして...血が出なくなり、捨てられるマリア・ヒルド。しかしあいつは全く動じることもなく、弱体化や反動の類も一切なく、



「さて...次はお前たちだ。マリアのように軽く散るのではないぞ」

「っ!」



 ほとんどなかった距離を一気に詰めてくる。マリア・ヒルドの言っていた通り、あいつは、いや<神話生物>であるあの生命体どもは、召喚主であるはずのマリア・ヒルドを殺したとしても平然と動いてくる。



 あいつはそれを何度も言った。だが心の奥底で<勇者>はそれを信じなかった。



 なぜなら打つ手がなくなるから。最後の賭けすら無下にしてくる目の前の強敵を、俺たちは打ち倒さなければならない。



 "では、やることは?"

「ここで倒す。マリア・ヒルドが時間を稼いだのだから、その時間を有効活用する!」



 自問自答できる。たった一瞬で、それは本当にできるのかと。



 しかしその答えはマリア・ヒルドが言った。でなければ死あるのみと。



 ...俺の勘が告げている。マリア・ヒルドはまだ生きていると。



 殺したら自分の存在が保てなくなるからではない。<神話生物>の暴走をおそらくマリア・ヒルドは経験してきている、だからああなった時の対処法を最初から準備しているはず。



 それに俺はあいつに言った。<魔王>は<勇者>によってのみ倒されてきたと。つまり、今この場で死ぬはずがない。俺が殺す以外に奴が死ぬことはあり得ない。



 であれば。



 キイイィィィン!!



「...ほう」



 カミラを狙っていたその爪の軌道をずらし、間一髪外させる。



 軽く空を切る、その衝撃だけでも吹っ飛ばされそうになる。



 だが耐える。目の前にいるのは死そのもの、そんな隙を晒したら一瞬で終わりだ。



「人間にしては少しはやるようですね。一番最初に狙うのは最も弱いものだと、そう思いましたか」

「あの場に居たやつの中で一番戦闘能力が低いのはマリア・ヒルドで、その次はカミラだから、な!!!」



 マイゲスの投げた短剣をバックステップで避け、そのまま距離を取ってくる。



 だが。



「選択が正しすぎるね」「単純だと言われたことはないか?」



 まだ現界している<神話生物>...確かナグとイェブと言ったか。その攻撃を避け、こちらに詰めてくる。



 が。



「ああもう、ほんっっと楽しい!!」



 土煙を吹き飛ばしながら飛んでくるそれを受け止め、



「シート!」

「<完全射出>!」



 放たれる白い閃光を纏った矢が飛来しそして...






「...甘いな。外神共も、それで私が死ぬとでも?」



 それを弾く...バースト。



「人間風情が呼び捨てとはな。全く、堕ちたものだ」

「心を読んでくるか。それはなかなか...」

「面倒だぞ。お前たちを殺すのはな。しかし殺さなければ話にならない」



 拮抗していた...それと



「んー、シュブ=ニグラスでいいよ!」



 ...シュブ=ニグラスとの距離が離れ、マリア側の<神話生物>がこっち側にくる。



「...あなたたちに一つ問いたい。対話は不可能か?」

「どっちの意味でも無理かなあ」



 戦いしかない。これもマリア・ヒルドが言っていたこと。



 ...選択肢はないか。



「現界時間は」

「この状態でいられるのもあと1日くらいかな」

「バーストの方は」

「多分余裕で一年くらい。元々あっちの姿の方がエネルギー効率がいいみたいでねえ」



 つまり、継続的に戦闘できるのは長くても1日、いや半日と見積もるしかないわけだ。



「...いいねえ、その顔。お姉さんそそられちゃうよ」

「何がだ」

「昔、そうやって私に戦いを挑んできて、戦いながらこっちの弱点を的確に分析して、あと一歩のところまで追い詰めてきた人間がいたんだよ。もちろん殺したけど...そういう奴ほど強かったからねえ」

「母さんがそそられるのは珍しいね」「それくらい強い、ということだな」



 ...反応に困る、が反応する時間はないな。



「カミラ、指示と解析は任せた。恐らく未知の交戦になるはずだからな」

「は、はい!」

「シートとメーノは遠距離で攻撃の隙を作り出してくれ。ただ、シートは隙があれば<完全射出>を、メーノはこっちの支援を頼む。特にメーノ、回復はいらないからできれば強化系統のものをくれ」

「わかったわ」

「任せてください」

「俺とマイゲスは攻撃していくが、基本的にナグとイェブ、シュブ=ニグラスに合わせるんだ」

「うーい」

「...いくぞ!」



 すでに走り始めていた<神話生物>を追ってこちらも走り出す。



 おそらくだいぶ長丁場の戦いになる。アルカマも気をつけてくれ。



 "ええ、わかっています。ソルス、あなたの方こそ油断しないでくださいね"



 ああ、わかっている。

この流れ...そう、ここから何話かは勇者の視点となります。

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