ラストバトル!!
禁止カード
すみません、裏で資料(この小説のもの)を読みながらやっていたので時間をかけ過ぎてしまいました。
約5時間後までもう少々お待ちください。
あまりにも早く速い一撃が<勇者>を襲う。対象はソルス・バミア。
「ぐ、うう!!」
爪による一撃をなんとか弾き飛ばすが、そこに襲いかかってくる次の攻撃。
力くらべに圧倒的な大差で負けている相手の攻撃を弾き飛ばしたのだから体勢は良くない。回避は困難だろう。
「っあ!!」
おお、体を捻って足の裏に爪をそわせることで避け切ったぞ。戦闘センスの塊だな、ありゃ。
しかし流石に無理な回避だったのだろう。体勢を崩したことで地面に倒れ込んでしまった。
そして第三の攻撃...は、マイゲスが受けきったか。
「ちっ、腕が痺れるくらいに強いなあ、おい!」
しかし今度はソルス・バミアと違って余裕がある。マイゲスの攻撃が彼女に向かう。
「...」
だけどまあ避けられる。体を少し横にずらすだけというとても消極的な避け方だ。
「メーノ!」
「ぶ、<火球>!」
メーノの魔法による火の球が現れ、バーストに向かっていく。
「...」
無論避けられる。もはや意味がないまであるくらいだ。
...一通り行動は終わったか。ならば。
「メェーちゃん!」
そういう前に彼女はその戦闘へと乱入する。
音もなく、黒き飛来物が<勇者>達の元へいき...
...バーストを叩いた。バーストは防いだようだけど、ある程度は貫通したかな。
「メェーーーー!!」
「ニャオオオオ!!」
山羊と猫の威嚇。それだけで空間が震え、僕の体を萎縮させる。
メェーちゃんはまだわかるとして、バーストのあの獰猛な肉食獣のような鳴き声はまるで聞いたことのないもの。
やはり旧神の中で1番の危険思想を持っている存在はただ者ではない、ということなのだろうか。そういうことを言ってもおかしくない存在なのは理解してても、実際に認識したらそれはそれで恐怖を味わう。
普通に死の恐怖が僕を襲っていると、そういうことだ。が、そんなことに時間を浪費するわけにはいかない。
すぐに<勇者>の元に向かう。あいつらも今何が起こっているかわからないだろうし...
「っ!<魔王>!こいつはどういうことだ!」
マイゲスの攻撃。流石に単調すぎて避けられるけど...いやいや、なぜ僕を攻撃するんだよ。僕だって被害者だぞ。
「知らん!けどバーストがとてつもなく怒り狂ってるのはわかる!」
「じゃあ止めろよ!」
「か弱い人間である僕に神をどう止めろと!」
しかも今回は普通であれば人間に味方する旧神が相手。もちろん旧神であるクタニド様は力を貸してくれないし、さっきまでの「久苦の魔王」との戦いでこっちの体力も魔力もそこが見えている。
メェーちゃんを抱きしめていれば回復は早いだろうけど、そんなことをしていたらバーストに喉を掻っ切られて即死。しかも他にバーストと近接戦闘でやりあえるやつがほぼ存在しない。
ほら、今だってメェーちゃんが防戦一方になってるし、まともに戦うのなら確実に<勇者>に協力してもらわないと勝てっこない。
「そもそもあいつと戦うこと自体が無謀だと思うが」
「ソルス・バミア。僕は言ったよね?本気を出している神々を止めることは」
「誰にもできない。ああ覚えている。だが、一度剣を交えただけで...」
手袋を外して見せるソルス・バミア。そこには真っ赤に破裂した手のひらがあった。
骨が見えているし、おそらく強力な一撃を弾いたことによる反動だろう。受け流せばどうなっていたかは議論の余地はあるけど、まあ今は結果だけを見るべきだな。
「な、すぐに<治癒>をするからもっと見せて!」
そう言って<魔法陣>を彼の手に浮かばせ、治癒を開始するメーノ。回復も攻撃もできるのか、頼もしいだろうなあ。
「い、痛くはないんですか!」
「これくらいならね...足はもっと酷い」
「それを先に言いなさいよ!」
もう一個、左足...って、よく見たら踵が抉れているな。どういう肉体ならその状況で立てるんだか。
...いや、これまずいな。
「マイゲスもそうじゃないか?」
「ああ、そうだな。手の痺れがさっきから止まんねえ」
マイゲスも手の痺れが止まらないのか。前衛がほぼ死んだ状況なのはやばいな。
「...あれ?傷が治らない...?」
「やっぱりか...バーストの爪は猛獣の、あまりにも猛々しく荒々しいもの。それによってできた傷はそんじょそこらの治療じゃ治ることすらないぞ」
「ば、化け物ですね...」
「それが<神話生物>だよ。だけどこのままじゃ...っ!」
メェーちゃんが吹っ飛んでくる。もちろん受け止めるけど、その勢いは弾丸を超えている。
一緒に吹っ飛んで壁に激突。痛みがないのを見る感じ、ショゴスが衝撃から身を守ってくれたんだろう。
「メェーちゃん!大丈夫!」
「装甲...久しぶりに見たなあ!!」
あ、やっべ。
瞬間、僕の目の前が暗転し、そして復活する。たった一瞬ではあるけど、何が起こったか理解するのには十分すぎる情報だ。
ガキンガキンガキン!!!
「やっぱりそういうの使えるんじゃん!バーストお!!」
「当たり前でしょう。伊達に守護者をやっているわけじゃないんですよ」
爪と爪が打ち合う。しかし傷が増えるのはメェーちゃん、いやシュブ=ニグラスの方だ。
今はお姉さん形態だけどそれは<魔力解放>をしている状態。だから僕のMPが一気に持っていかれて、足りないからHPも持ってかれたのだ。
今日だけで何回死にかけているのかなあ、僕。
「大丈夫か!?」
「これを見て大丈夫だと思えるのなら回復役はいらないよね...」
「そうか...なら、これをつかえ」
そう言って投げ渡されるのは、液体が入った瓶。
<ダンジョン>内でバーストが暴走し始めた時に自分の傷を癒すために飲んでいたやつか。
「な、ソルス!?」
「今彼女に死なれたらこっちが困ることになる。あの化け物を野放しにすることができないのはマリア・ヒルドも同じみたいだしな。メーノはとりあえず俺とマイゲスの回復を優先してくれ」
「よくわかっているじゃん...ぷはっ、情報分析も完璧」
うーん、味はまあまあかな。だけどみるみるうちに削られたHPとMPが回復していくのがわかる。
「止める方法は?」
単刀直入だねえ。こっちは病み上がりなんよ?
「戦闘以外に方法は...ないかなあ」
「はあ!?どうやってあいつを止めろっていうんだよ!戦闘に参加できる4人じゃ戦力が足りねえぞ!」
マイゲス君、地味に頭いいんだよね。そう、このままじゃ戦力が本当に足りなさすぎる。
ではどうするか。
「一応戦力、こっちにもいる」
「あの...山羊?以外にもか?」
「さっきまでの戦闘に参加していたじゃないか...クトゥグア!ティン!」
そう呼ぶと、しばらくして二人ともこっちにくる。どっちもしゃがんでいる状態だと流石に大きすぎる体格だなあ。
ただ...ううむ。
「でも戦力足りないよなあ」
「俺がいるじゃねえか!」
「熱に耐えうる生物が猫科にはいる。おそらくクトゥグアを<魔力解放>しても対応されるし、それにティンを<魔力解放>したところでステータスが違いすぎる」
「そんなに違うのか」
「割と真面目にアリと恐竜くらい違うと思う。<魔力解放>後のステータスがどんなもんか知らないけど、まあ確実にそうだろうね」
神格とクリーチャーには明確な差がある。じゃなければあの世界の世界情勢は混沌そのものだろうからね。
ともなれば...メェーちゃんに託すのは流石に難しいか。見ていると確かに拮抗しているように見えるけど、確かにメェーちゃんは装甲と言っていた。
もしそれが本当ならおそらくHPの差自体は相当なものになっているはず。どちらも同様の強い攻撃力があるのだから、防御できるかできないかはたった少しでも大きな違いだ。
「呼び出す...か?」
「今日これ以上呼び出せばマスターの体が持ちません」
「だよねえ」
上限はないだろうけど、今日だけで2体呼び出している。
肉体が蒸発することを条件にすればできるけど...ううむ。
「ねえ...もしかして自分のMPを使って毎回召喚しているの?」
「ん?そうだけど?」
いやだって、そうじゃなきゃ召喚できなくない?
「はあ...あなた、召喚について基礎の基礎も知らないのね...」
「義務教育受けていないんでねえ」
いまだに<結界>だって<魔力撃>だって勉強中ですよ、ばーか。
「...敵に塩を送るつもりで?」
「本当は私だってしたくないわよ。だけど、はっきり言って私たちだけじゃ無理。それはシート、あなただって理解しているでしょう?」
「それは、そうですが...」
「そそ。だから僕もすぐにメェーちゃんで時間稼ぎし始めたんだから」
「あれで時間稼ぎなのか...」
「倒せないからね。しょうがないね」
メェーちゃんが無理やり<魔力解放>していなかったら多分やってなかったしね。
「まあだから、とりあえず召喚の基礎の基礎...<魔法陣>について、この魔法の栄えた国であるマウ国の「あーあーあー」...ごほん!とにかく、この私が直々に教えてあげるわ。感謝しなさい」
「ところでさっきなんて言ったんですか?めっさ大きい声で全然聞こえなかったのですけど」
「それは...秘密よ」
誤字報告、毎回助かってます。本当にありがとうございます。
...運営が誤字報告があることをもっと見やすく...僕がミスしているのが悪い?いやまあそうなんですよね...