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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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圧倒的実力社会

でもこの世界の人間って普通に強すぎる...少なくとも自分みたいな一般人なら片手で殺せそう...

 その瞬間、世界が一瞬だけ暗転した。



 幻覚か?いや違う。これは、環境に対応するための代償だ。



 視界が光に呑まれると、今僕がいるのはやはり先ほどまでいた場所である。そりゃそうだ、ワープなんてしていないのだから。



 暑くもなく、寒くもない。普通の...



 ...否、普通じゃない。そう気づいた頃には遅かった。



「...がっ...いき、が...」



 苦しい。どれだけもがいても呼吸がまともにできることはなく、ただ純粋に、()()()()()()()()()()()()()()



 どれだけ空気を吸い込もうと酸素が不足しているのなら意味はない。水の中で呼吸しても、宇宙空間でも、それは変わらない。



 酸素がなければ、人間は生きていけない。



「...ぷはあ!!はあ、はあ、死ぬかと思った...」

「ご無事ですか、マスター。後もう少しだけお待ちください、現在最終調整を行なっております」

「わ、わかった...可能な限り早くしてくれよ?」

「はい」



 だが僕は事実上人間を辞めている。人型ではあるけど、中身は全くの別物なのだ。



 無論生物である以上酸素は必要不可欠だけど、どうやら僕の体、調整すれば宇宙空間でも生きていけるらしい。



 酸素が必要ないことに加えて、ある程度までなら人間の限界を超えた気温ですら問題ない...



「...はっ、ふう、ふう、ぶ、<呼吸(ブレス)>!」

「......かっ、すううう....けほっ、けほっ...な、なんとか間に合ったか...」



 じゃあそしたら真っ当な人間である<勇者>は一体何者なんだという話にはなるんだけどね。



 え、酸素ない状況でも魔法を使えれば生き残るってどういうこと?自分の肉体を調整すればいい僕も大概だけど、そういう魔法が普通に使われるこの世界とは?



「...まあいいや。今は生き残って、あいつを殺すことが優先だ」

「いつでもいけます」

「ん、調整ありがとうショゴス」

「いえいえ」



 さて...問題はどうやって勝つか、という話からだね。



 現在、あいつは<ダンジョン>そのものと融合している形だ。



「チッ、酸素量の減少ぐらいじゃ死なねえか。なら...今度は他の方法で殺すか!」



 こんな声が聞こえて、そして僕たちがきた方角から大量のペンギンもどきが来たことからも明白。



 いわば、僕たちは奴の体内にいる状態。好き勝手できるわけではないけど、対抗くらいならできる。



 例えば...



「クトーニアン!」



 僕がそう叫ぶと、円筒状の生物が地中から現れた。



 大きさはすでに<魔力解放>済みのもの。それが5体。



 うーん、圧巻。



「ここの<ダンジョン>をボロボロにしてきて!」

「「「「「わかりました!」」」」」



 すぐに地中に入っていき、その直後からものすごい地震。



 掘削中なのだろう。邪魔はしないほうが...まずそもそもできないな。うん。



「そしたら...っと!」



 ヒュン!



 飛んでくる矢。シンプルだがトラップには使われやすいものだ。当たったら痛いし、毒とか火とかつけるだけでさらに強力になる。なんか試行錯誤するよりもまずこれを使ったものを作ったほうがいい。



 弱点は避けられること。着弾地点が点である以上、着弾地点が面である吊るし天井とか落とし穴とかよりも当たりにくい。当たったら強いのは言わずもがななんだけどねえ...






 だけど、壁一面にその矢を発射するためのギミックを取り付けているっていうのは違うきが



「発射!!」



 壁一面から発射された矢。それはまるで壁のように僕たちに襲いかかってくる。



 見た感じ毒矢でも火矢でもないから当たっても痛いだけではあるけど...まだまだ奥の手は持っているはず。ダメージをここで喰らってしまうのはまずい。



 しかし、全方位というのがなかなか難しくて、天井からも発射されているため穴を掘って避けることもできないんだよね。



 ともなれば話は早い。現在の環境は低酸素というだけなのだから。



「ティン!」



 そう叫べば自ずとやってくる狩人は、自らの武器を持って僕へ飛来してくる矢に向かい...



 ...全てを弾いた。音もなく、一瞬で。



「へえ?その犬っころはやっぱマジで強そうだな。こいつはもうちょっと強化しねえとダメかもなあ?」



 発射口が壁へと格納されていき、そしてまた発射口が出てきた。



 ...そこから見える鏃は、どこか滑っている気がする。やっぱり毒矢もあるか。



「発射だ!」



 またもや同時に放たれた矢は、しかし熟練の狩人であるティンダロスの猟犬によって阻まれた。



 ...<勇者>もどうやら凌げているらしい。角に集まることで矢が当たる方向を限定、少なくなった矢を払っているようだ。



 まあ流石に全方位カバーするティンがいかにやばいかというこt



「次弾装填!発射!!次も、その次も用意だああ!!」



 次々と発射されていく矢を弾いていくティン。それでも弾いてくれるのはやはり強さあってこそだろう。



 だが。装填に慣れてきたのだろうか。10回目の射出時から、いやその前からだんだんと発射間隔が短くなってきていて、しかも毒矢以外のものも含まれてきた。



 ただの火矢や折ることの叶わない鋼鉄の矢、羽を違うものにすることで速度を変えてきたり、あるいはそもそも矢じゃなくて石が飛んできたり。



 流石のティンとて難しいのだろう。徐々にではあるがいくつかの矢が打ち落とされずに僕の方へ飛んでくる。



 まあこれくらいなら避けられるから問題ないし、むしろ負担になるのであればこれくらいの矢をあえて見逃して僕に避けさせても大丈夫よ、ティン。



 もしも君がいなくな理でもしたらそれだけで僕の戦力が...とと、容赦無く見逃してくるね。これくらいがちょうどいいのだけど。



「まだまだまだあ!!」



 とは言っても...まずいな。発射される矢を全て受けきる前にティンの体力が尽きそうだ。あえて矢を見逃しているから少しは楽になっただろう。が、それでもきついことに変わりはない。生物であるのだから体力は有限、いつかは蜂の巣にされるし、その時は僕も死ぬ。



 他に今いる神話生物...メェーちゃんは強いけどこういう細かいことはできない。やろうと思えばできるのだろうけど、今はこの部屋の外、ペンギンもどきと戦った部屋でソワソワしている。本来のシュブ=ニグラスの体であれば問題ないだろうけど、今の人形のような体であれば、通常の矢はまだしも鋼鉄のやに撃ち抜かれただけで死んでしまうだろう。



<魔力解放>を行うMPはあと...1回ってところか。いや、厳密には誰に<魔力解放>を行うとどの程度MPを消耗するのかを知らないから、予測でのあと1回だけど。ただそういう予想が立てたれる以上、この<魔力解放>は止めに使いたい。



 なら...あ。



「おっと、すっかり忘れてた。アイホート!出てこれる!」

「うむ。すっかり忘れ去られていたアイホートだ」



 いやほんとごめんて。さっきからずっと異常な場所だったから出て来れないものとして考えていたんだよ。



「まあ、しっかりと私を覚えているだけいい。私は忘れ去られることも多いからな」

「あえて記憶消してるんでしょうが」



 まあそりゃそうだよね。リスクは避けたいだろうし、人間の記憶は簡単に消えるし。



 最後の最期まで記憶は消しておいたほうが自然な情報が得られるというものだからね。



「でですね。とりあえず矢の発射口を可能な限り塞いで欲しいんだけど...」

「糸でということか。任せておけ」



 タタタと床を駆けていく蜘蛛。小さいので本当に気をつければ矢には当たらない。これで一応矢の数が徐々に減っていくはずだけど...わかりやすく減ってくるのはもっと先の話。



 アイホートに頼んでいる間にも矢は飛んでくる。その一切合切の負担をティンに押し付けているのは僕なのだから、早めにティンが休める状況を作らなくてはならない。



(そっちの進捗はどう?)

(イゴーロナクと話しながらやっていい場所を掘っていますが、まだまだ時間はかかりそうです)

(目安は?)

(あと10分ほどです!)



 10分。短いように聞こえるこの数字だけど、この10分はあまりにも長い。今の状態が続くのなら、たった10分後には僕はこの世から去っているだろう。



 だからそれまでにこの状況を打破する必要がある。アイホートおよびその子蜘蛛たちが全ての発射口を埋めるのには相当な時間がかかるのはアイホートも理解しているはず、つまり僕の方に来る矢の発射口を優先的に処理してくれている。



 なら...だんだんと余裕の出来始める空間で何をすればいいか。



「ティン、あと5、いや3分だけ、全力で耐えて。僕の方に1つも矢を寄越すな」



 そして本当に飛んでこなくなる矢。体力が一体どれだけ減っているのか予想する材料がないからティンがどれだけ疲れているのかわからないが、とりあえず今の所動けるようになった。



 そしてそれを理解してすぐに



「クタニド様!」

「なんでしょう、マリア」

「本気、出せますか?」

「んー、久しぶりなのとこの体ので本気を出すのが初めてだから、少し被害が大きくなると思いますが?」

「それで大丈夫です。派手にやっちゃってください!」

「そう...なら、いいわよ」



 右手に<魔力>を溜め込み、それをクタニド様に捧げる。



 僕の全MPを渡したが...



「うーん、あとちょっと欲しいですね」



 ドクン!という心臓のはねる音。それと同時に倒れ...ずに踏ん張る僕。



 やはりそうなると思った。残っていたMPを全て使ってもHPの...半分持ってかれたか。



 これ、MPが最大でも多分足りないな。どうにかしてMPの最大値も上げなければ...






 とか思っていた次の瞬間、目の前が光に染まった。

次回、クタニド様の真の姿。

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