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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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少し休憩してすぐ復帰

しないと宝が取られちゃーう。

「...ぷはっ。ふう、生き返るってこういう気持ちなんだね」

「まさか水筒すら持ってきていないとはな。よくここまできたものだ」

「まあ僕実際に生き返ったことあるけど」

「次からはしっかりと水筒と軽食を...待て、今なんて言った」



 とりあえず空の水筒を投げ渡す。難なくキャッチするソルス。



 これくらいじゃびくともしないかあ。さすが<勇者>様。



「それで?なんで僕に水筒を渡した?ああ口はつけていないから安心しなよ」

「いやそれよりも聞きたいことがあるんだが」

「さあね?僕はいつの間にか生き返っていただけだし、詳しいことは知らないよ」

「い、いつの間にかってどういうことだよ...」



 それは僕も聞きたいわ。本当に死んだと思っていたら生き返ったんだから僕としてもわけわからん。



 クタニド様が生き返らせたっことは絶対に言わないけど、ただ本当にどうやって生き返らせたのだろうか。



「はあ...まあいい。で、確か俺がなぜ水筒を渡したか、という話だったな」



「よっと」と言いながら座り込むソルス。どうやら相当に疲れているようだな。



 ...新しい切り傷が顔に5箇所、鎧にかなりの箇所、か。



「理由は単純。「探久の魔王」のところへ早く辿り着くためだ」



 ああ、あのクズ野郎のところに。



「「探久の魔王」って?」



 でも理解していないように振る舞う。カミラの事がバレたら大変なことになるしね。



「<魔王>には名前とは別の呼び名を使って呼ぶことにしている。そして、この世界にいる<魔王>の内の1人である「探久の魔王」を今回はターゲットにしてきたんだ」

「ターゲット、ってことは各<魔王>は監視でもされてて場所はずっと把握でもされてるんですかね」

「...」



 黙秘権を行使するのはわかるが、目が泳いでるぞ君ぃ。



「いやあ、そんな状況に置かれてるなんて、僕も相当な有名人だね。よく考えてみるとあの入り組んでいる路地のどこかにいる僕を君たちは隠れ家から出てきて見つけに行ったんだよね。普通なら時間がかかるだろうけど、なるほど。確かに僕の居場所が筒抜けならすぐにいけるだろうね」

「...」



 軽い考察を披露しながら、さらに脳内で考察を続ける。



<勇者>達は言った。女王の真意を聞いたあの部屋で、確かに言った。なぜお前がここに、と。確か言ったのはマイゲスだったか。でもさっき言った通り僕の居場所は筒抜けになっている。



 では、そこから導き出される答えはなんなのか。



 決まっている。筒抜けにしているのは神聖皇国イマジであり、その居場所は随時送られてきているわけではないということ。



 ちなみにソルスはここに僕がいることは知らなかったはずである。というのも、<ダンジョン>内では外部との<通話>ができないというのを僕はニャージーランドについて調べている時に知った。内部は別にできるんだけどね。



 でまあ、ということは今の状況だとどうやっても僕の情報は来ないわけで。だから知るはずもないというわけ。



 んで、じゃあそうなるとだ。



「そしたらそれこそよくわからないことがある。どうして僕を狙わない?そしてどうして僕を助けるような行動を起こす?君は普通に考えて色々とおかしいことをしていないか?」



<コボルド>の時はしょうがない。僕が助けを求めたのだから。彼らの必死の時間稼ぎと誘導がなければあの作戦は実行できなかっただろう。



 だが、今回ばかりは違う。クトーニアンによって熱から守られてここにきたとはいえ、消耗した体力がすぐに復活するわけではない。特に今回は(体が頑丈なおかげで軽度な)脱水症状ではあるが、だからと言って水筒を渡すのはちょっと違うだろう。



「それともあれか?<コボルド>の時の借りを返したつもりにでもなったか?」

「...そういうわけではない」

「じゃあなぜだ?というかそもそも君は<魔王>を相手にするのだろう?僕が裏で繋がってるとか考えなかったのか?」

「考えなかった」



 断言された。え、僕顔に出てた?



「君はとてつもなく優しい心の持ち主だ。それを味方にしか見せないというのはいささか残念でしかないが、少なくとも女王が奴に攫われた時点で君が敵の敵であることは明白だ」

「待て、あの時君はあの場にいなかったはずだが!?」



 なぜ、それを知っている?あの場には僕と女王とバーストとショゴスだけであり、カミラとの通信も遮断していたんだけど?



「...知りたいか」

「知りたい。知らない方がいいことがあるのは重々承知だが、今回の場合知らないと僕が殺される」



 まるで言っている意味がわからないような顔をしても無駄だ。実際に多分ここで聞かなかったら死ぬ。バーストに殺される。



 バーストは温厚ではない。実際のところ牙があまりにも鋭いせいで今の状況が甘いように感じるだけだ。



「頼む、教えてくれ。なぜ女王が攫われたことを知っているんだ」






「...マイゲスが、女王の死体を発見していた」



「...は?」



 ドクン!という心臓の跳ねる音が聞こえてきた。



 その瞬間、急激に足が重くなるのを感じる。さっきまで立っていた僕は膝が折れ、そのまま地面に叩きつけられた。座っていいたソルスも同じように地面にめり込んでいる。



 ...だが、これは重力が重くなったりだとか、空気が重くなっただとかそういうことではない。



 重圧。ただそれだけでそんなことになっていた。



「それについて詳しく話しなさい」



 冷徹な声が響いてくる。もはや悪役...いやなんでもありません。



「ま、マイゲスが急に叫んだと思って、そこに応援を駆けつけさせたんだ。マイゲスは俺たちの中でも精神の値が最も高い、なのに叫んでいたのはどういうことかと思ったんだが、そこには女王の死体が、ああっ!!」



 最後の方は叫びに近かったな。というか僕も叫べるのであればそうしている。



 ...そうしないのは、とても単純。叫べない状況にあるからだ。



「がふっ!」



 ソルスが吐血する。肌から血の気がひいているのをみる限り、彼も思いっきり吸い取られたのだろう。HPとMPを。



 多分僕と同じくらいのはずだから、おそらくHPが1になるまで。無論MPは空になるまで。



「そう、ならば問いましょう。なぜあなたはあの<魔王>の元へ向かうのですか?」



 重圧がさらに重くなる。マジでただただ怒っているだけなのにこれだからな、敵に回したくはないものだ。



「か、のじょ、が...報わ、れる、よう、に。お、俺が、<勇者>を、貫くた、めに...!」

「ほう、まともなことが言えるようになったな、人間」

「うぐっ!?」



 身体中でプチプチという音が聞こえ始める。筋肉が裂けている音だ。



 ...僕の体がそう言っているのであれば、ソルスは一体どんな状況になっているのか。想像に難くないことではあるが、考えたくはない。



「だが一応言っておく。お前達は私の下なのだから、せめて敬語くらい使った方がいいぞ」

「は...い...」



 掠れた声でそう答えるほかない。もはや荒ぶる神は誰にも止められないのだから。



「他にも聞こうか。ムギの死体を見つけた人間は一体どうしている?」

「か、彼は、今、ここに、くる、みちの、りの、はん、ぶんの、ところ、に」

「そうか。葬を行わないことは許せないが、今回は悪夢で許してやろう。彼女を見つけてくれたという、恩があるからな」



 もはや見上げることすら叶わず、ただその腕には何かを抱いていた。



 そしてそのまま扉の方へ歩いていk



「<邪魔だな>」



 ...否、<魔力>のこもった声のみで吹っ飛んだ扉の跡を通り過ぎていくバースト様。



 見えなくなっていくが、その後ろ姿はまさに怒り狂った獣そのものだった。



 彼女が怒ったあの時、確かに彼女は本気を出していた。



 ただ、今回は違う。まるで違う。加護を与えていただけでなく、可愛がってもくれたそのネコマタを



「がはぁっ!?」



 て、訂正します。ムギさんを殺されて完全に怒っているのですね。暴走ともいうべきでしょうか。



 少なくとも、あの殺人鬼と戦った時以上の力は出すだろう。あの時は魔法で逃げられたが今回はそうもいかないはず。



「結局、こうなるって、わけ、か...」

え?ちょっと前の話でも同じような展開を見た?



今回は訳が違います。なので全く違う展開です。

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