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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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<ダンジョン>攻略③ ただの迷路

そんなわけがないんだよなあ

「...何時間、歩いた?」

「まだ1時間しか経っていません」

「本当?体感だと5時間ぐらいなんだけども」



 歩く、歩く、歩く。



 一生歩く。そんな感じ。



 天井があるおかげで日が落ちているのかもわからず、光は一定間隔で取り付けられた壁掛けのランタンだけ。しかも同じ行動(歩く)を繰り返しているともなれば時間の流れが速く感じるのも必須である。



「そろそろ休憩しますか?スタミナは切れる前に回復させたほうがいいとは思いますが」

「いや、体力は残っているから問題ないさ。ただ...」



 汗を拭う。結構前よりも暑くなってきたような気がしてならない。



<地殻融解>という名の通り、もしかするとゴール地点はそれほど熱いのかもしれないな。



「ここら辺は地熱が伝わりやすいのかもしれませんね」

「可能性はあるなあ」



 こまめに水分補給をしつつ歩き続ける。



 ゴールへはあと1歩、そんな気がするんだ。



 "とおいよー!"

 "まだまだだよー!"

 "かわるよー!"

 "あるくよー!"

「わかってるよ...今はやる時かやらない時かの話ならやる時だ」



 しっかり歩を進める。今の僕は安全性に保たれているのだから、何も心配せずにただただ進むだけ。






 そんな甘い考えが、その一歩を踏み出した直前まで考えていた。



「......はえ?」



 瞬間、体の中の水分という水分が蒸発した。そう考えていい。



 その後ようやく感じる、とんでもない暑さ。異常としか言いようのないその暑さ、いや熱さはまるでマグマの中にでも入った気分だった。



「ショゴス!もどれ!<インベントリ>の中に!」



 すぐに叫ぶが、少し遅く。すでに左腕はドロドロに溶けていた。



 ショゴスは見た目の通り、体の中のほとんどが液体(のような筋肉)。こんな熱のある場所ではひとたまりもない。



 自分の肉体は体の中の水分が消え失せていることにようやく気づいたのだろう。体に力が入らなくなる。



 倒れる...のを意地で踏みとどまり前を向く。



「人間ステーキになるのは...ごめんだ...」



 一体どれほどの温度なのかわからないが、少なくともすでに肉体が人間を辞めていると言っても差し支えない僕のこの肉体が悲鳴をあげるほどの温度ではある。



 ドラゴンのブレスとは比べ物にならないくらい涼しいが、だがあっちが直火だったのに対してこっちはゆっくりと火を通してくる。



 しかもすでに他の神話生物は<インベントリ>の中。ははっ、そりゃそうだ。ただの蜘蛛や猫にこの熱が耐えられるわけ...



 ...いいことを思いついた。ただそれができるかどうかはわからないが。



 少なくとも今のこの状況に耐えて歩き続けるよりましか。



「クトーニアン!!」



 乾燥しきった喉で無理やり叫んだためか、喉が裂けるような痛みに襲われる。



 でもそんなことに気を取られている暇はない。すぐに<魔力>をためて<魔力解放>の準備をする。



「はいただいま!」

「飲み込め!!!」



 叫び、その右手でグーパンチ。



 すると瞬く間に<ダンジョン>の地面が崩れ、1匹のクトーニアンが現れる。



 そして、僕を飲み込んだ。



 ============================================




「言っただろう。俺はお前の味方だ」




「...これ以上、君を面倒なことに巻き込みたくない。それくらいの優しさがあることを君は知っているはず。なんで、僕を止めるんだ」




「...一応言っとくが、もしお前がそこから飛び降りたら俺はさらに面倒なことに巻き込まれるぞ」




「...どうして、あの時」




「ん?」




 どうしてあの時助けてくれたのか、聞きたかったけど、やめた。




「やっぱりやめた」




 そして柵をまたぎ、彼の方へ。




「...そうだな。あえて答えるとするなら」

「聞きたくない」

「な、そこまで言わなくてもいいだろう!」




「...でも、うん。■■ならきっとやるって、僕は心のどこかで思ってた」




「飛び降りを止めにきて、しかも僕を飛び降りさせない。ってか?」




「...」




「...まあ、俺も飛び降りたくなる気持ちがわかる。俺も一回飛び降りようとしたし」




「...」




「大事なのは、勇気。それと味方がいることを、味方を、信じる心」




「僕は君を信用しなかったことは一度もないよ」




「あったりまえだ、なんたって俺は、正義の味方だからな!弱いものを助け、悪しきものを挫く。それが俺のやり方だ!」




 ============================================



 目が覚めると、そこは密室...



 いや密室どころの騒ぎじゃない。なんらかの筋肉に囲まれた空間だった。



 もはや僕に動く猶予はなく、ただただ伸びた状態でそこにいる。



「つまり成功した...かふっ」



 まだ喉の痛みは引いていない、しゃべると血が出てきた。でもそれは僕が生きていて、とりあえずあの状況をなんとかした証。



(お目覚めですか!ああ、よかったです!死んじゃったかと思いました!)

(死んでないから安心していいよ...こうして心で話すのも久しぶりだな)



<ダンジョン>内部はどんな場所であろうと基本空気中の<魔力>が濃くなる。その影響もあってクトーニアンは普通に喋っていたわけだが...



 この状況、喋ったら僕が筋肉に押し潰されて死ぬだろう。



(ああ、そうだ。このままアイホート様に言われたルートを辿っていってほしいんだけど、いける?)

(すでに向かっております!あともう少しで着きますのでお待ちください!)



 まあ熱いままだろうけどね、あの<ダンジョン>。いやあ、それに知ってもこの中でもかなり暑い。



 先ほどまでの温度とは比べ物にならないが...待て、そういえば僕はどれだけ気絶していた?



 いつも通り変な夢も見たが...



(30分も気絶していません!)

(30分でも大概なんだよなあ)



 ...あの夢では、僕がどこからか飛び降り自殺をしようとしていた。



 でも、またあの男だ。あの男が僕を助けた。



 顔までは鮮明じゃないあの男、夢の中の僕の姿と似ていた...もしかすると制服かあれは。



 ブレザーとかで統一されているのなら、可能性はある。つまるところ、年齢は青年と言って差し支えないか。



 ...正義の味方、か。



 僕には絶対にありえない言葉だな、うん。



(着きました!外に出ますか?)

(ああ、出る出る。30分弱も寝ていれば、さっきまでの体力も回復しているってもんだ)

(わかりました!吐き出しますね!)



 すると、筋肉が動いて僕を上へと押し上げていく。なかなかに面白いが、面白くないのはそれがどんどん加速されていることだ。



「!?」



 そして吐き出される頃には音速を超え、そんな状態で吐き出されたのだから扉にぶつかるのは必須。



「がっ!いったああ....」



 体が頑丈なおかげで怪我とかはしていないけど、ただ痛いものは痛い。



 で、だ......ふむ、そんなに暑くないな。どういうことだ?



 扉に触る。この扉は見た感じ鋼鉄でできているように見えるけど、熱が伝導したりも全くせず。



 なんなら冷たいまである。マジでどういうことや。



「遅かったな、来るのが」



 声が、聞こえた。すぐに振り返ると...



 ...そこには。容姿端麗の男がいた。



 綺麗...いや少し溶けている鎧を身にまとい、腰には聖なる剣をぶら下げて、僕を見つめていた。



「...あの熱さでへばっちゃってね。それより君はなんでここにいるんだい?ソルス・バミア」

「君と同じように、俺もここに迷い込んだからだ。マリア・ヒルド」

なんだかんだ一緒にいるなこいつら...

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