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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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バグなしレギュレーション

存在自体がバグとか言ってはいけない。

 壁を軽く叩いてみる。



 コンコン



 という反響もしなければ鈍くもない音が聞こえてきた。



 つまりこの壁に空洞はなく、脆かったりはしないということ。



 壁の厚さとかはわからないけど、少なくとも穴を開けることは難しそうだな。



「あの<魔王>、本気を出してきてますね」

「だねえ。別に本気を出さなくても僕には勝てるだろうに」



 神話生物達から僕を引き離せばいいのだからかなり簡単だろう。



 まあそういうことがあった時のためのショゴスなんだけども。



 ともかく、こっから穴を開けて進む以外の進み方を考えないといけない。こういう迷路はむやみやたらに道を進むのではなく、ある程度作戦を練ってから進んだ方が効率がいい。



 ...一度、僕がいるこの場の情報を整理しよう。



 今いるこの通路の道幅は5m、壁は10mほどで天井が生成されている。壁及び天井は破壊不可と思っておいた方がよくて、

 地下はなさそう。階層は今いるここだけっぽいね。



 だから正攻法で進むしかない。壁に穴を開けて進むことはできない。



 ならば...



「ショゴス、僕から可能な限り地面を伝って迷路を探索する場合、どれくらいの範囲がわかる?」

「そうですね。大体20mほどはわかりますが...かなり非効率では?それ以上はマスター自身が動かねばならないので、その分無駄なスタミナを消耗する可能性の方が高いと思います」

「お、言うようになったねえ」



 どうやらショゴスの知能がさらに発達したらしい。あの少女の手を修復した後からだったかな?



 しかも所々発音がおかしかった部分も今ではない。喋ることにも慣れてきたのかもしれないね。



 でまあそれはおいといて。実際ショゴスの言っていることは正しい。20mもわかるというのは、逆に20mまでしかわからないということ。その程度の距離でこの迷路の全てがわかるはずはない。



「ですので、新たな<神話生物>を召喚するのが得策かと」

「だね。そしたら...いや、どうせだしあのお方を召喚するか」

「迷路、いえ迷宮といえば。ということですね」



 おっと、僕の記憶も見れるようになったか?



「マスターが思い出したことであれば」

「それは残念。過去に関しては知りたいことはたくさんあるからなあ...ま、それは今取り組むべきことじゃないな」



 右手にある<ネクロノミコン>を開く。ページ数があるから捜索に時間がかかるが...



 ......あった、これを模写すればいいんだよな。



「...マリア、きますよ」

「えっ?」



 瞬間、右から剣が振られてくる。



 言われたことでそれに気付き、間一髪で避けるが少しだけ掠ってしまった。まあこの程度の痛みでうめく僕ではないのだけども。



「ショゴス!バースト!」



 不定形の生命体がすぐにその剣を振るったものに触手を巻き付け、暗がりにいたそれを引き摺り出す。



 そして、そのまますぐに強大な爪によって引き裂かれた。






 ...今自分がいるこの場所を錯覚する。



 今僕は迷路にいるはず、なのに今僕は崖っぷちにいるようで。



 足を引けば落ちる。そんな場所にいると、頭が勝手に認識した。



「まさか...あの<ダンジョン>の攻略者が、<魔王>、だったなんて...」



 切り裂かれた人間。別に僕はこいつを知らない。



 だが...ただ一つ、言えることがあるなら。



「...越えた、か。僕は一線を超えてしまったか」



 悔いはない。<魔王>であることを運命づけられた時点で避けようのないことではあった。



 ただねえ、齢6歳で殺すとは思わんでしょう、普通。



 いやまあ、確かに盗賊どもはショゴスが食ったけど、あれ生きたまま食ってるからね。



 人間を殺せと命じ、そして実際に殺させたのは、これが初めてと言って過言ではない。



「...さて、呼び出すか。ショゴス、死体処理はよろしく」

「わかりました」



 悲しいとか嬉しいとか全くない、今の僕は冷静に心が死に、そして生まれ変わっただけ。



 ページをめくっていくと、それは自ずと現れた。



 蜘蛛をかたどったその神々しい絵と、それらを呼び出すための<魔法陣>。



 手に<魔力>を込める。3回目といえど時間はない、すぐに描き始める。



 非対称のこの図形群はまるで迷路、いや迷宮のようで。だがよくみると八つの足がかたどられている。



「っ、あ、あれは!?」



 他にもいたか、人間。



 だが...別に殺す必要はないk



「こいつがドリューニさんが言ってた敵か!」

「ショゴス、処理は頼んだ。ああ、生かしておいてね」

「了解」



 右腕がなくなり作業効率が落ちるが、邪魔されるよりはマシだ。



「なぜ私を動かさなかったのですか?」

「あなただとこいつらを殺しかねないから」

「ええ。私なら問答無用で殺していました」



 聞こえる悲鳴。打撲音。



「あ、五体満足の状態にしておいてね」

「もちろんです」






 ...よーし。これで大丈夫、だな。



 描かれた<魔法陣>に<魔力>を込める。それは不気味に、暗闇を発していて。



「さあ神々よ、我の声に答えよ。




 。それは今もなお地球を支配しようと画策する旧支配者が1柱



 。子を産み、育て、植え付け、支配する蜘蛛が如く



 。迷い込み、それを助け目的を達成する迷宮の神なり



 来い、アイホート!」



 瞬間、いやそれすらも生ぬるい速度。いわば刹那で現れた。



 白く丸い体には赤い目がこれでもかと敷き詰められ。



 8本、いや10か、20か。理解できないその脚で僕を撫で回している。



 そして何よりも、周りにはたくさんの蜘蛛。そのサイズ......






 ...わずか、2mm。



 そう。目の前、いや顔に張り付いてから体中を這いずり回ってるこの蜘蛛のサイズは3cmほどあればいい方といったところ。



「ふむ、この私を呼び出すに値する人物ではあるk」

「あら、ゴミ虫がマリアに引っ付いていますよ?」



 いや、そこまで言わんでも。旧神が旧支配者を敵視しているのはわかるけどゴミ虫ではないって。



 というか、可愛いでしょ!この丸っこくて白いところとか!



「私を侮辱するものは何者だ!」



 振り向く...振り向く?ことで目の前の猫を発見するアイホート様。



「この程度であれば私が踏み潰してあげましょう」

「ギャアアアア!猫、猫だあああ!」



 踏み潰そうとする猫とそれを回避して間一髪逃げ延びる蜘蛛。



 床に着地...いや着地狩りが待っている。



「何!?二段構えだと!?」

「死になさい」



 するとアイホート様は糸を発射、くっついたところで糸を引き戻すことでねこパンチを回避する。



 さながらそれは某アメコミヒーローのようだ。



「チッ。芸が細かいやつですね!」

「うおおお!やめてくれええええ!」



 ...もはや遊びのようにしか見えないが、この猫と蜘蛛が狩猟者と餌に分かれて命をかけた追いかけっこをしているのは明白である。



 何せ、片やバイオレンス猫女神。片や強制種植え蜘蛛。実際やっていることは微笑ましいが、これを実寸代サイズでやると異常なことになる。



 ここら一体、更地どころの話じゃないぞい。



「死ね!死ね!」

「ぎいあああああ!」



 ...ところで、アイホート様って結構臆病なのね。バーストから逃げてるし。

アイホート。とある迷宮に住んでいるとされる神です。



出会ったものに死か契約を望み、契約した場合は自分の雛を植え付けて操ってしまいます。



...僕と契約して(ry

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