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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
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始まりの始まりの始まり

また短めです。

「...ふう、過去のことを語るときはやっぱり綺麗な口調になってしまうな。これでも、妾は昔この世界の歴史について研究していてな、少し歴史マニアなところがあるんだ」

「そう、なんですか...」



 驚きを隠せず返事が曖昧になってしまうソルス。



 僕はこの世界についてよくは知らないが、<ドリューニ商店>が一体どんなものなのかはニャルラトホテプから聞いた。



 何でも...



「ど、<ドリューニ商店>つったらこの世界で5本の指に入る大商会じゃねえか!こんなやべえことやってたのかよ!」



 文字通り、"生活必需品の全てが手に入る"というのをコンセプトに売買していて、衣服食料住居はもちろん、最高品質とまではいかないものの高品質な武器防具もあるそうな。



 挙げ句の果てには奴隷まであるっていうんだから、これはもう本当に何でも揃うだろう。身の回りのもの全て<ドリューニ商会>で揃えている人だっているかもしれない。



「奴隷は金になるからな。年々拉致数が増えているのを考えると、商業は順調のようだ」

「まったく順調になってほしくないんだけど」

「嬉しいのか悲しいのか、妾たちネコマタの商品価値は上がっていく一方らしいからな」



 奴隷、というものを深く考えれば最高の商品というのがよくわかる。



 労働させるのもよし、趣味に使うのもよし、欲の放出に使うもよし。



 維持費はほとんどかからず、壊れたらもう一度買えばいい。さながら機械と同じものだな。



「待って、商品価値が上がっていくことを知っているってことは、その情報をどこからからか得たってこと?」

「言っただろう、この国は実質<ドリューニ商店>が支配しているというのを。今はされていないが、ほんの数ヶ月前までは国政にも手を出していたぞ」

「ああ、だから僕も僕のクエストの依頼主もこんな状況になっていることを調べられなかったのか」



<ニャル&ホテップ商店>もかなりのもの。全国的に展開している以上少しはニャージーランドの情報が入っているはず。それなのに入らないというのはおかしいと...



 ...ん?



「ちょっと待って、その事実上の支配下に置かれたのが200年前で、その間ずっと外界との交流が一部の人に限定されていたわけだよね。となると、この国に来た人って...」



<勇者>達、冷や汗をかく。ものすごいダラダラ流れているけど、大丈夫だろうか。というかそれは冷や汗と言えるのか。



「まあ、奴隷になってるか殺されてるかはしてるだろうね」

「なぜそこまで冷静でいられるんだ...」

「場数が違うのだよ、場数が」



 こちとら死んだ回数も死にかけた回数も君たちより上である自信がある。



 何たって前世の分を含めれば......あ?



 前世?僕、前世で死にかけたことがあったのか?



 前世、前世....思いつかないな。まだ思い出せてない部分にあるのかもしれない。



 ...もしや、あの妙に気になる人と出会った夢と関係があるのでは?



 可能性は高いな。何でかはわからないけど頭にこびりついているあの声。



 ...そろそろ気になってきたし、本格的に僕の前世の記憶を取り戻す努力をしてみるか。



 閑話休題、話を戻そう。



「あと気になることといえば、あれだね。なぜこんな紛争地域みたいになっているか」



 ずっと気になっていたことであり、理由なんて分かりきっていること。



 だって、商店側から攻め込む理由なんてないわけで。



「単純、反旗を翻したのだ。裏で戦力を募り、強化し、何とか<安全区>から<創樹>までを3ヶ月で奪還したが...」

「今まで頼ってたものが完全にない以上、食料倉庫の底が見え始めてきたかな?」

「そこまでわかるか」

「これだけ情報があれば、流石に誰でも察しはつくよ」



 分かりやすいのは、およそ頼む側であろう僕たちにすらお茶の一杯も運ばれてこないこと。



 底どころか、もう何もない状態が続いているのかもしれない。



「最近は3日に1度食べられればいい方だからな...」

「敵側からの略奪で何とか補給しているのね」

「そういうことだ」

「そういうことだ、じゃないわよ!本当にやばい状況じゃない!」



 3ヶ月ともなると餓死者も相当数出始めててもおかしくはない。



 これは、やばそうだね。うん。



「バースt」

「言うまでもありません」

「はい分かりました!」



 その場で立ち上がる。全員の目線がこちらへ向く。



 ...こういうこと、<魔王>として本格的に動き始めたらよくやるようになるんだろうなあ。



「僕はこれから<ドリューニ商店>を潰しにいく。それが僕がこの国に来た理由だしね。<勇者>、君たちはどうするんだ?」



 そういうと、ソルスが立ち上がった。



「お、おいソルス」

「俺たちがきた理由も、<ドリューニ商店>に関することだ。あまり気は乗らないが、一緒に行かせてもらおうか」

「ソルスさん!?」



 ほう、そうくるか。



「僕、敵だけどいいの?」

「そも、君には俺達を助けてもらった借りがある。早めに取り除いておかないと、戦闘になった時に躊躇ができてしまう」



 無理があるなあ。



 でも、まあいいか。



「<勇者>...人間の味方はしないのか?」



 真っ当な質問を<勇者>にする女王。そう、<勇者>は人間側の陣営。



 僕はバーストの命令もあるしいいのだけど、魔獣とのハーフであるネコマタは世間的にはよろしくない。



 外界の情報をどうやって入手しているのかは謎だが、この国での唯一の手段で得ていたのなら情報操作が行われている確率も高い。



 故に、<勇者>を敵としてみる可能性は極めて高いだろう。でもこの女王は護衛の一つもつけずに目の前にいる。



 それだけ切羽詰まっている。猫の手、いや人間の手を借りたいほどに深刻な状況なのだ。



「...あなた方もまた人間であり、俺たちが守るべき人たちですから」



 頷く弓使い。覚悟は足りたか。



「それじゃあ潰す...の前に、と」



 鍵を取り出す。もはや時間的猶予は一切ない。



 空中に挿し、一回転。すると瞬く間にドアの出来上がり。



「な、こいつは!」

「ミ=ゴ!毎回毎回悪いけど、今度はいつもよりハードだ!よろしく頼むよ!」



 で、そのままこの部屋のドアを開け外に出る。



 そして、橋から飛び降りる。



「よっ」



 時間がない。のであれば、可能な限り最短距離で。



 探索は諦めて、敵は全て殺す方針で行こうか。

次回はいつもより長くなります。お気をつけください。

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