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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第四章 猫又狂獣人叫
134/402

支度

さささ、やってまいりましょう。

 装備の確認、まずは服装から。



 箪笥を開き、一着の服を手に取る。母さんが買ってくれたものではなく僕が買った、ある程度頑丈な服だ。



 前回のクエストでは確かにあの洋服を着ていたが、あれはあくまでも母さん達が一緒にいたから来ていたのであって、本来は探検などで着ていくものじゃないだろうし。何より母さんたちの着ていた、ゲームとかで表すなら冒険者然とした服装に憧れがあったからだ。かっこいいし、かわいいし。



 出発日は今日だが、それまでに何度も着ているから着用方法は手に馴染んでいる。まるで普段着のようにするすると着ていく。



 全体的に黒く、またその黒は厳密には30色以上の黒が混じっているという恐ろしいこの服は、当たり前だが<ナイル&ホテップ商会>ではなく洋服を買った<服屋キイ>にてオーダーメイドで注文させてもらった。



 ...無論、母さんとアナさんの死も伝えた。その時の様子は...考えなくてもわかるだろう。



 店主のキイお姉さんが言うには、どうもこの服は若い頃(現役時代)の母さんが着ていた服の意匠をアレンジして制作したらしい。そもそも元の服の設計図が店の奥深くにしまってあったということで、完成に1ヶ月もかかってしまったわけだが。



 だが、待った甲斐はあった。僕は昔の母さんを知らないからなんともいえないが、不思議とこの服は僕にフィットしているようにも感じる。



 着慣れている、ともいう。まあ完成してから5日、ずっと着たり脱いだりを繰り返していたからねえ。



 そしてわかったのは、この服は近接戦闘用の服装ではないということ。どちらかというと後方支援用に仕立て上げられている。



 なので機能性も抜群。特に腰に巻いているベルトにはある程度小物を入れられるようになっており、<インベントリ>以外からも物が出せるようになっている。



 ...<インベントリ>があればこういうものはいらないような気がしてキイお姉さんに聞いたけどはぐらかされたのは置いといて。



 僕は一応学園では<結界魔法>を習っている。授業は受けていないけど。



 それで、<魔力撃>を校長から習ったときに知った<魔法母体>に関することと今までの経験から察するに、<結界魔法>というのは<魔道具>でも使用できる。はず。



 なので<結界魔法>を自由に使えるようになった時のため、いわゆるお札的な何かが入るようなベルトにしてもらった。結界といえば符という、そんなイメージがあるからだ。



 ちなみに、<ポーション>も<魔道具>の部類に入るらしい。つまりは母さんの進んだ道に近い道を僕は進むことになるわけだ。



 そこはかとなく嬉しい。



 さて、服が着れたのなら次は<インベントリ>のチェック。



 ーインベントリーーーーー


 金 00.00.10.00


 (ショゴス)

 人形(メェーちゃん)

 (バースト)

 (ティン)


 特別通行許可証


 ーーーーーーーーーーーー



 よし、全員いないな!まあ当たり前なのだけど。



 この中にいないのは基本的に外で活動している神話生物達だ。イゴーロナク、シュド=メルがそう。



 というかそもそも僕が召喚していない、自分から来た神話生物もいるしね。クタニド様とか、ミ=ゴとか。イスの偉大なる種族に関してはそもそもこの世界に(文字通り)最初からいるわけだし。



 とすると、アイテムはこれで十分だろう。市販の<ポーション>はみた感じだと一個当たり銀貨15枚なので買えないから諦めた。



 というか今の僕は尋常じゃないほど再生力が高いからね。むしろ買う理由がないのだ。



「あとは...特にはないか」



 準備を終えた、とは思うけどもしかするお終わってないかもしれない。



 しかし、僕としてはさっさと向かわなければならない場所があるのですぐに部屋を出た。



 そして、



「準備完了。サオさん、そろそろ外でるよ」

「わかったっす」



 サオさんに報告。一応この隠れ家はサオさんから借りているような物だからね。



 銀の鍵を使い、外に出る。この鍵は念の為<インベントリ>ではなくポケットに入れているからそこにしまう。



 ...出るか。



 ============================================



 青い空、一面緑の草原。そしてスポーンしたりデスポーンしたりする魔獣。



 ...魔獣ってそういう風に湧くのね。



「でも、一人っていうのも新鮮だなあ。いつも誰か一緒にいたから、少し寂しいかも」

「ほう、てぇことはお客さんはパーティを組んでたんですかい?」

「そそ。今はちょうど一緒に行けないタイミングだから、僕が一人で行くんだ」



 そう、今僕が乗っている馬車。要はタクシーには僕と御者さん以外誰もいない。なんなら積荷もない。



<インベントリ>に仕舞えばいいだけだからね、載せる理由もないのだろう。



「おお〜。して、そうなるとニャージーランドに行くのにはなんらかのクエストが?」

「そうだよ。僕でもできそうなクエストを探すのは難しかったけど、あってよかったよ」



 なおこの言葉には訂正がある。少なくとも僕にできないクエストはなかったが、その中でニャージーランドに行ける物がほぼなかった。



 教科書にも書かれてたし壊れかけの図書館でも調べたけど、どうやら外界との関わりをあまり持とうとしない種族であるらしい。そのため希少、そのため売れる。というわけだ。



 いやはや。奴隷ってこうも簡単にいる物なんだなあ、と調べた時に思ったのは言うまでもない。



「どんな<クエスト>を受けたんです?」

「調査だね。詳しくは言わないけど、ニャージーランドで落とし物したそうな」

「あ〜、確かにそれは取りにくいし取りに行きにくいなぁ」

「ものすごく大事な物だったんで、<クエスト>として依頼したんだって」

「それは見つかるといいですな。頑張ってくださいよ、お客さん」

「無論、受けたからには見つけますとも」



 まあ嘘なんですけど。確かに調査ではあるけど落とし物ではない。



<クエスト>を依頼したのは他でもないニャルラトホテプだ。内容は、ニャージーランド原産の素材を十種類以上とってくること。それと下見。



 どうやら<ナイル&ホテップ商店>はニャージーランドにも店を建てる予定があるようで、その地域の特産品を他の国でも売りたい、そしてその地域で何が売れるかわからないから調べてきてくれ、ということらしい。



 ...表向きは、こう。そして裏は...



 ============================================



「あの国、<ドリューニ商店>が牛耳っているんですよ。そのせいで私たち他の商店が近づけないんです」




「はあ」




「なので、ついでに<ドリューニ商店>も潰してきてください。もちろん、報酬は増えますよ。潰さなかったら0ですからね」




「い、いやいや。僕まだ新人だよ?それに学園のギルドに入っているんだからそんな真っ黒な仕事受けられないし、何より僕にはそんなことができるとは思えn」




「そういえば知ってます?<ドリューニ商店>って表向きはたくさんの品揃えを武器に販売していますが、裏では奴隷売ってるんですよね。あ、大半はネコマタだということもお教えしておきましょう」




「マリア、今すぐ受けなさい。そして<ドリューニ商店>を完膚なきまでに潰しますよ」

「喜んで!」



 ============================================



 マジでさあ...後出しでそういうの言うの良くないって...



 一応<耀くトラペゾヘドロン>をポケットに入れてるから、こっちに呼び出せるとはいえ。もしこの<クエスト>を他の人に取られていたらどうするつもりだったのだろうか。



「お客さん?大丈夫ですかい?」

「ああ、大丈夫だよ」



 心配されるほど顔が暗くなってたかな...何か話題を作るか。



「そういえば、どうやってニャージーランドに行くんです?確か外界との関わりは極力持たないとあったのですが」

「ああ、そういや情報統制であれまで書かれないんだっけか。もうそろそろ着くから、ちょっと待ってな。外でも見て、な」



 外、外か。とりあえず御者さん側から顔を覗いてみる。






 森、そう森だ。今僕たちがいるのは森に隣接した草原だが、まるで誰も入ってこれないようにするかのように、木々が生い茂っている。



 しかも木自体がめっちゃ背が高い。前世に昔あった東京タワーという電波塔よりもでかいんじゃあないかな。



 これは...すごいな。隠匿された土地、というのも頷ける。



「この森、<フィンナの森>というんです。この森自体が<ダンジョン>でして、そんなかにニャージーランドがあるんでさあ」

「え、じゃあこの場所のこの<ダンジョン>の中にあるのが隠匿されているんですか?」



 でもそれは隠匿とは言わないのでは...



「お、鋭いですね。実はこの<ダンジョン>、一定のタイミングで場所を変えるんすよ」

「...は!?」



 だ、<ダンジョン>自体が移動するの!?どういうこと!?



「もちろん周期はきちっと存在しますから、こうして行き来がニャージーランド国王に許されているものはどの場所にどのタイミングだといるのかとか教えてもらえるんですわ」

「逆にいえば普通はたまたまでしか入ることができない...でも、誰かがメモを取ったりしてその位置の情報を調べきってしまったら?」



 多分僕はそうする。せざるを得ない。



「心配ご無用。それ以外のやつは森をでた瞬間にニャージーランドについての情報を綺麗さっぱり忘れますから。もちろんメモなんかも全部消去されますよ」

「...それって<ダンジョン>の制限みたいな...」

「いいえ。なんでも国王自らが魔法を行使しているらしいですな」



 マジかよ。どこまで自分たちのことを知られたくないんだ。



「よし、入口まで着きました。あとはお客さん次第ですよ」

「あ、もうなのか。ありがとう、ここまで連れてきてくれて」



 外に出る。確かに森に道ができている。



 ここから入れ、ということなのだろう。



「それが仕事ですから。では、またの機会に」



 そして離れていく馬車。



 ...



 ...



 ...もう大丈夫か。



<インベントリ>から全員出す。それと鍵も使ってドアを出現。



 ドアを開き、頭だけ中に入れて呼びかける。



「とりあえず入口着きましたよ」



 そして、後ろを見るとばk...ゲフンゲフン。神話生物の皆様が連なっている。



 ...いつ見てもこの数は圧巻だな。ショゴスは左腕にいるけど、クトーニアン、クタニド様、メェーちゃん、バースト、ティンがここにいるのだ。



 あとは...号令だけか。



「んじゃまあ、とりあえず<フィンナの森>を攻略しますか」

「「「「おー」」」」

あ、次回は明日です。記念日ですからね。

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