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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第三章 勇魔大会狂殺
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"終了"

ゴールデンレトリーバーとか柴犬とか想像している方。



残念ながら違います。どちらかというとフr

<時属性>というのはなんでもできるらしい。時間を止め、加速し、あるいは戻すことだって可能。



 本当にクトゥルフ神話生物がいなかったら死んでいたな...まあ本当は僕が殺したかったけど、少し考えればそういうことをしてくる可能性を考慮できたわけで。



 少し頭に血が上っていたのかもしれない。怒りや悲しみが心の中で渦巻いていたから...



 などと考えつつては動かす。そもそもあの殺人鬼が置かれている状況はチェックメイト(詰み)、急ぐ必要はないのだが、



「...もう少し速く描けないのですか?すでに10分は経っているというのに」

「見ながらだし、何より<魔力>で<魔法陣>を描くことにまだまだ慣れていないんですよ!」



 一応半分、いや3分の1くらいは終わったはずではあるものの、如何せん手から何かが継続的に出てくる感覚などの体験回数が少ないことがたくさんある。



 前々回までは血で描いていたからねえ。そっちの方が楽ではあるんだけど...



「イゴーロナクを召喚した時にも使ったでしょうに」

「僕はクタニド様のように天才ってわけじゃないんです...」



 クタニド様も言っていた通り、神話生物の方々に泥を塗るのは嫌だ。今まではそれ()以外で描くことができなかったからそうしたけど、今は<魔力>で描くことができる。



 ...ただ、前回は適当だったんだよね。<魔法陣>。



「<ネクロノミコン>に描いてあるものと同じものでないとうまく召喚できない...だとしても細かすぎるけども」

「対象を特定した召喚なのですから当たり前でしょう」

「ほんと、ショゴスってすごいんだなって」



 こんなに大変なものの型を作れるのはやはりショゴスだけだ。



「...あ、いた!おい、マリア・ヒルド!」



 声が聞こえる。路地の入り口の方からだ。



 聞いたことはある、なんなら何度も聞いた声だ。



「何?別にあんたらに手伝って欲しいとは思っていないんだけど。ねえ、<勇者>様?」

「俺だって別に手伝いにきたわけじゃないぞ、マリア・ヒルド」



 人数は足音からして5人、つまりは全員集合状態。



 まあもっとも、



「ん?なんでクタさんがここにいるんだ?」

「まあ、保護監督義務がありますから」



 クタニドにメェーちゃん(頭の上で寝ている。可愛い)、猫状態のバーストに地中にはシュド=メルとその配下。ついでにミ=ゴ。



 まず勝てる...いやどうなんだろう。相手は<勇者>だしなあ。



 ま、戦う気はないだろうし問題はないだろう。



「じゃあなんでここにきたの?忙しいから、さっさと帰って欲しいのだけど?」

「殺人鬼、本当にいるのか?」



 わーお、単刀直入。しかもこっちが話してから間髪入れずに。



 奴ら、なんの理由があるのかはさておいて相当焦ってるな。



「いる。厳密にはさっきまでいた、になるけどね」

「...やっぱり。じゃあ、さっきの波動は...」



 波動?それって...



「時間が止まったり、加速したり、あるいは奴が過去に戻ったか。ということなのであれば、答えは是だよ」

「!?じゃ、じゃあその殺人鬼は<時属性>を使ってるの!?」

「別に驚くことじゃないだろう...よし、こんなものでどうでしょうか」

「......悪くないわね。十二分にあの犬は召喚されるでしょう」



 よーし、クタニド様の太鼓判もらったわ。これは自信がつくぜ。



「な...まさか、忙しいって今から召喚を行うということだったんですか!?」

「当たり前でしょ。僕が何やってるかくらい、どうせエリート集団のあんたらならそれくらいわかると思うんだけどね」



 頷く魔法使い。それとわかってなくて驚いている他4人。



 それくらい解ろうぜ。もし僕が目の前でとんでもなく蹂躙に特化した生物を呼び出そうとしてたらどうするのさ。



「そ、それで?一体君はどんな<召喚獣>を呼び出そうとしているんだ?」

「言うと思うか?......と、言いたいところだけど、今回は教えてあげよう」



 体を動かして<勇者>達が<魔法陣>の全体を見えるようにする。



 前に描いたイゴーロナク召喚のための<魔法陣>と同じく、基本は円形となっている。その中に数々の文字やら記号が入っている。のだけど、僕自身はどう意味なのかは全くわかっていない。



 要はコピペである。



「...なんて描いてあんだ?」



 知らん。これによって召喚できる生物が一体どういう存在なのかは理解しているけどね。



「これ...狩人ってこと?」

「ああ、そうだね。この召喚によって呼び出される存在は狩人と言って差し支えない。犬だしね」

「??」



 魔法使いでもピンとこない様子。当たり前だ、僕はクトゥルフ神話をこの世で最も詳しく知っている人間だからね。およそ僕以外はわからないだろう。



「さて、そろそろいいかな。召喚を始めたいのだけど」



 そういうと、<勇者>達は少し離れた。あくまでも僕の召喚は見ていくつもりらしい。



 まあ対策とか後々練らなければいけないだろうしね。しょうがないね。



(見せてもいいのですか?)

(むしろ見せなかったら殺すとか脅されていると思っていいよ)



 流石のメェーちゃんらとは言えども弱体化はしっかりと入っている。負ける時は負けるだろう。






 ......魔力を流し込む。徐々に光を放っていく<魔法陣>と、それをニヤリとしながら見る僕。



 さて、詠唱(口上)はどうするか......どうせなら、口に出して言いたいよね。



「さあ、神々よ。御笑覧あれ。



 。それは狩人。狩猟本能に満たされた猟犬



 。時を駆け、獲物を殺す、違う次元の生命体



 。誰も知らない、知り得ない、目撃者がいない角から来るものなり



 来い、ティンダロスの猟犬よ!」



 その瞬間、<魔法陣>から煙が溢れ出てくる。



 だが、そんなもの気にも止めない。探せ、あいつはどこからくる。ここは路地、角はたくさんあるのだから...



 すると、おそらく空き箱だったものが破裂する。その瞬間を見れた。



 だが、どうやって出てきたかまではわからなかった。姿は...煙が濃くて見えないな。



「ほう、演出が凝っていますね」



 そう聞こえると、煙が一瞬で吹き飛ばされる。



「見えないのは、残念ですけど」



 さすがクタニド様。これで全体像が見える...



 その姿は、狼男と言って近い。顔は狼のそれであり、筋肉が浮き出ているといて差し支えないその体には数々の武具が取り出せるように装備されている。



 服はない。股間は隠さねば、とも思うかもしれないが、およそ股間についているべきものも、そうでないものも、どちらもついていない。中性、あるいは無性と表現するのが正しいのだろうか。



 だがそんなことより、何より異質なのはその全ての姿形。筋肉も顔も深い毛も装備も全て、丸みを帯びていない。



 わかりやすいのは指だろうか。関節と思われる部分がなく、でも関節はあるのか折り曲がったりしている。ただし、折り曲がると言っても0°か90°どのれかだけだが。



 顔を覆う毛に関しては、かなり昔のポリゴンで描かれたかのようなもの。毛一本一本ではなく、全体から見たら見える姿なだけ。毛が風でなびくこともないだろう。



 総じて、ポリゴン体の狼男。と言うべきか。



「えっと、あなたがティンダロスの猟犬であってる?」



 ...喋ったりはしない、か。だが相変わらず直角か一直線を保ちながら頷いているのを見る限り、意思疎通は可能らしい。



「呼び出したのは、もはや言うまでもないね。目の前で時間を跳んだやつがいるんだ、そいつを殺してほしい」



 ティンダロスの猟犬は頷くと、何かを取り出して、それを壊した。



 中に入っていたと思われる粉を嗅いで...あ、木箱の中、その90°の場所に入っていった。



 ...どういうこと、なのだろうか。いや、そもそも理解しようともできないだろうが。



「...あれが、その、テンダロウスの猟犬っていう<召喚獣>?」



 魔法使いが声を出す。他の勇者は...残念ながら、立ったまま気絶している。いや、厳密にはフリをしている奴が一人だけいるけども。



「そう、そして、君の後ろにいるのもそうだよ」

「へ?...きゃあ!?」



 後ろを振り向いて驚いたのか、腰を抜かしてしまう魔法使い。それもそのはず、さっき消えたティンダロスの猟犬が真後ろにいたのだから。



「どどど、どういうことよ!?」

「詳しいことは説明しないよ。情報は僕を殺すための鍵になってしまうだろうしね」



 僕の方へと歩いてくるティンダロスの猟犬。その手には、おそらくここにくる途中で角張ってしまったのだろう生首があった。



 さすが、仕事が早い。僕達から見て-1秒でこなしてきた。



 生首を差してきたので、とりあえずそれを受け取る。受け取ると、それはあの殺人鬼の首となった。



 そして、そのままどこかへ向かっていくティンダロスの猟犬。時折後ろを振り向いては僕を見てくるので、ついてこいとでも言っているのかもしれない。



「ついていくかあ」

「な、ちょっと!私たちはどうするのよ!」

「まあ、これ以上ついてくるというのであれば、やりあうことになるかなあ」



 とだけ言い残してティンダロスの猟犬の後をついていく。



 もっとも、僕はやりあう気はないんだけどね。



 ============================================



 路地を進み、少し開けた場所に出る。



 そこには、なぜか建てられている十字架に磔にされた人間がいた。すでに死んでいるのは明白だが、明らかにおかしいことが一つ。



 一言で表すのであれば、その人間は、十字架よりも一回り小さい十字架になっていた。形がそうであるだけではあるが、だからと言っても不気味である。



「なるほど、こいつがあの殺人鬼。ガウスってわけだ」



 一体、何年ここにいたのだろうか。遠い遠い昔からここにいるのに風化していない訳がなく、おそらく触れたらすぐに灰になってしまうだろう。



 これが、ティンダロスの猟犬の力。そういうわけか。



 そう考えると、なんとティンダロスの猟犬...長いな。よし、こいつのことは今後ティンと呼ぶことにして。



 ティンは首を振る。どういうことなのだろうか...あ、なんとなくわかった。



 意思が伝わったというか、思考の中に割り込んできたというか。つまるところ、本気を出せばこの程度じゃないらしい。



 本気を出せないのはこの世界にいるのと、あとは<魔力解放>を行っていないからだろうな。



「...メェー?」

「あ、メェーちゃん起きた?ほら、新しい仲間(友達)のティンだよ」

「ネーミングがそのままですね...」



 すると、目の前にいるティンが突如折りたたまれた。そして、最終的に箱のような形になった。



 跪いている、ということなのだろうか。



「ん〜...あ、わんこだ。久しぶりだね〜」



 まだ眠いのか、ぽやぽやしながら話すメェーちゃん。かわいい。



「本来の姿は不気味なのに、なぜデフォルメされるとこうもかわいいのでしょう」

「しっ!クタニド様、言っちゃダメですよ!」

ティンダロスの猟犬とは、我々の住んでいる次元とは別の次元(あるいは別世界)に住んでいる狩人です。



時間を行き来したものを捕捉し、対象を殺す。撃退こそできるものの、ほとんどの場合何もできずに殺されるのを待つしかない、そういう生命体です。ちなみに対処法としましては、奴らは角から来るので、角を埋めて丸くした部屋などにいると多分大丈夫です。



今後の活躍は...そもそも出せるかなあ。

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