表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第三章 勇魔大会狂殺
124/402

処理⑥ 正体

戦闘パートでございます。

 右、上、左下。



 シュンシュンシュン!



 襲いかかってくる剣の軌跡を読んで回避する。



 当たれば僕のステータスじゃ一撃死、油断なんかできっこない。



 そして...<魔力撃>を使う隙間なんて





 あるわけが、っ!



 ガァン!!



「ちっ、全然当たんねえじゃねえか」



 地に大穴を開けながら、目の前の殺人鬼はそう言った。



 ここまでどれほどの数時間停止を食らったか覚えていない。だから、奴が僕に対して奇襲を仕掛けてくる時は感覚で避けることがだんだんとできるようになってきた。



 すでに戦闘時間は10分を超えた。体力にはまだ余裕があるけど、僕が攻撃できる隙がないからただのジリ貧になっている。



「<静止>してんのに動きやがるお前の<召喚獣>がとんでもなくめんどくせえな!」

「でも、その代わり時間停止さえしなければ襲わないだろう?そういう命令(お願い)下している(聞き入れてくれた)からなんだよ」

「んだよ、舐めプってか?」

「違う、お前を僕自身の手で殺すためだ」





 ...下と右から!



 シシュン!!



「ちぃ!」



 避ける。ただ避ける。でもそれだけだと勝てない、こちらが攻撃できないから。



 だけど。勝算がないのにこんなことをやってるわけじゃない。



「マスター!!」

「あぁん?」

「...きたか」



 右手に<魔力>を溜めながら周囲を見渡し、その人たちを発見する。



 すでに戦闘は激化し、開戦時にいた場所からもかなり離れている。



 音はかなりひどいものになっているだろうし、もちろん大通りの上も通った。



「な、なああれって...」

「戦闘か?でも誰が...」

「女の子と男が戦ってる!?」

「うーむ、白」



 なんかやべえ奴がいるのは仕方ないとして、だから僕達の戦闘に興味を持った野次馬がこうやって見にきた。



 そして案の定、奴の手は止まり片腕で顔を隠すようにしている。



「...なるほどな。俺は暗殺者、顔を見られるのは困るんじゃねえかって考えたのか」

「そうすれば、隙も生まれるはず。ともね」



 真正面から<魔力撃>を当てる。



 ドオォォォン!!





 大きな音が鳴り響く。煙とかは何にも出ていないけど、少なくともやつは5mほど吹っ飛んだ。



「...でも目立った外傷はない、か。やっぱり魔獣と人間は違うんだね」

「当たり前でしょう。僕も装備はしっかりと着ているのですから」



 瞬間、後ろから物体が飛来してきた。



 体を右足を軸に捻って避ける。飛んできたのは...氷?



 そして目の前にいるのは、燕尾服を着た男。



 ただステッキが若干異なっている。なんらかの宝石の類が埋め込まれているのか、キラキラとしている。



「僕はあんたを殺したいわけじゃないんだけど?」

「あいにく、僕と彼は一心同体でね」



 そう言って氷の槍を出現させる男。その数は1ダース。



「<氷槍(フリーズランス)>」



 飛んでくる前に屋根から屋根へと移る。もちろん槍は僕へと向かってきて、それをさらに他の屋根に移ることで回避する。



「まあそんなことしても無駄なんだけどね」

「っ!?」



 追ってくる槍。まさかのホーミング性能まで持っていたとは。



 ...でも、そこまで早くはないな。このまま逃げ続けていれば...







「ねえ、あれって...シウズ王宮魔法使いの...」

「うっそお、え、でも何でこんなところで戦ってるの!?」



 ...まじ?え、あの燕尾服のおっさんそんな有名人なの?



 それは...まずいな。殺人鬼から燕尾服にチェンジさせれば少しは戦いやすくなると思ったけど、逆効果だったか。



「というか、あの戦っている少女って...」



 あ、ヤッベ。



「ショゴス、左腕を可能な限り削っていいから、僕の顔を別の顔で覆い隠せ」

「イエス、マイマスター」



 瞬間、左腕の感触が消える。もとより僕の左腕はなかったものとすら感じる、気持ち悪い感覚。



 だけど...これで最悪の事態だけはない、と願いたい。顔が作り替えられていく感触を味わいながら、そう考える自分がいた。





「おっと、隠しちゃったか。せっかく社会的に抹殺できるかなと考えたのに」

「されたとしても、なんとか生き延びるのは自明の理では?」

「でもそれならいつでもお前を殺せるじゃねえか」



 ヒュン!!



 あっぶね。いつの間に変わったよお前、というか...



「顔見られたくないんじゃないのか?」

「特段見られても問題ない顔ではあるんだよね、実は」



 そしてまたいつの間にか切り替わった男の<氷槍>を避けていく。



 ...一心同体、ねえ。



「さしずめ二重人格者ってところかな?」

「だいせーかーい!」

「っあ!」



 間一髪、刃が肌に触れずに避けれた。



 ...二重人格者。人格を2つ以上持っている、特異な者。



 大概人格というのは突発的に切り替わるらしいけど、それを自由に行うのは賞賛に値するところがあるし。



「切り替えると肉体すら変わるとは到底信じられなかったけど、そんなこともあるんだね」

「あったりめえだろうが!僕らは2人いて完璧なんだからね」

「話している途中でもか!」



 魔法を避け、同時に剣も避ける。



 剣だけだともうダウ部読めるようになってきてるし、ホーミング弾だけというのも簡単。だけどその複合となると...



 少し、いや結構難しい。今までに慣れてきていたからなおさら。



 ピッ



「ヒット!!」

「っ!しまっ」

「そこだね」

「ごふっ...う、打ち込むねえ」



 右腕に剣がかすったところに脇腹目掛けて飛んでくる槍。もうただただ痛い。



「でも動くか...君は予想以上にタフみたいだね」

「あいにく、こんな程度で死ぬような人間じゃないんでね...」

「人間?お前が?ありえねえなあ!」



 だがそんな僕に優しくするわけもなく。ここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくる。



 なんとか避け...ることは叶わず、どんどん傷が増えていく。



 ...しかも、毒も回ってくる。動きが鈍くなり、そして攻撃も深く食らうようになる。



 毒、早すぎるだろ。



「...あーあ、つまんねえの」

「何が...だ...?」



 声が掠れてくる。思考もまとまらない。[思考加速]は、いや使うだけ無駄か。



「いや、だってよ。もうお前避けれねーじゃん。心臓にブッ刺せばもう死ぬだろうが」

「まあ...そうだね...剣が掠ってまだ1分も経ってないのに、これだからね...」



 体の筋肉が弱まる。足が折れるようにしなしなになって、その場でしゃがんでしまう。



 もう、逃げることはできないだろう......そう、逃げることはね。



「...でも、残念ながらこっからが楽しいんだよ...」

「んなわけねーだ...あ?」

「その反応、彼女が来たみたいだね...」



 とは言っても、誰が来たとかわからないんだけどね。時間停止対策でメェーちゃんは<インベントリ>にいるけど、それ以外だと...



 近づいてきたのか、音が聞こえる。足音が、どんんどん近づいてくる。



「めんどくせえ、でもまあいいか。お前は殺せるんだしな」



 ザク!



「あぐっ...がはっ!」

「色々面倒くさいことにはなったが、これで依頼は完了だな。私を襲った人物として、マリア・ヒルドという人間は処理される」



 い...たい。痛い。心臓に剣が刺さる感触がこれほどの痛みを伴うとは。



 ...だけど、まだ死んでいない。痛みを知覚している間は、否が応でも生きている。



 ......なぜ、死にたくないのかはわからないけど。それが運命なのだろうと、直感が告げている。



「だから...まだ死なないのか?」

「あ...たり......前だ。死にたく、ないんだよ...僕は、っ!」



 刺さった剣で切り上げた男。痛み?これは、痛みなのだろうか。



「ーーーー!」

「声も出せないのに、まだ足掻くのか...しぶてえやつだ。とっとと死ねよ」



 その状態でさらに首を切られる。瞬間、体の感覚と頭の感覚に別れる感触。しかもそれらは全て半分づつ。



 繋がっていないのに同時に存在するのは、いささか気持ち悪いな。おそらく地球にいたら味わうことのない感触だろう。



「ちっ、まだ生きてるのか。一体何をしたらこいつは死ぬんだよ...念の為、<鑑定石>を使っておこうか」



 銀色の宝石を取り出した男。それを空から眺める自分。



 魚とかが見る世界って、こんな感じだったのかなあ。目と目の間にだいぶ差があるけど。



「...ん、これh」

「っ!!」



 そしてそれを見た瞬間、何者かがそれを弾き飛ばした。短剣で。



 それと同時に僕の頭も両方とも地に落ちる。片方は地面に落ちてるけど...あれ、地面に落ちた方の頭が動いてる。



 一体何が...いや、今は目の前のものを見るべきだ。



 フードを深く被った人。その人はナイフを構えている。



 ...見たことのある、姿だ。



「おいおい、手を出すなよ...確か、アナとか言ったっけか?」

「...なんで、知ってるの」

「殺害対象の身辺調査は大事だからなあ。親についてだけわからなかったが、っと言いすぎたな」



 ナイフを構える殺人鬼。同時に、アナさんも構える。



「俺はあの女を殺してえんだが...邪魔すんのか?」

「当たり前。彼女は...メアリーが、命をかけて守ったもの。私だって命をかけられる」

「そうかそうか。じゃあ、君も殺すとしよう」

「!?」



 大量の<氷槍>が生成され、雨のように降り注いでいく。しかも屋根を貫通せず、下の住人に対して被害は行かないように。



 自分の地位をよくわかってるらしい。その地位を守れば、最終的に自分達が勝つとも。



 アナさんは近接戦闘を得意としている。もちろん回避に関してもうまい。



 だけど、いささか数が多すぎる。僕の時はあんなに出していなかったのを見るに、手加減していたのだ。というか、今もしている。



 毒剣と魔法の同時攻撃を行なっていないのだから。



 かすり傷ではあるが、どんどん真っ赤に染まって、穴が増えていくローブ。



「...邪魔」



 それを脱ぎ捨て...






 現れたのは、耳。猫耳と、尻尾。



 ...あれ?でもあの空間にいた時とか寝る時とか、頭を露出させていた時はその姿じゃなかったような?



「ほう、ネコマタだったか。おそらくだが、耳や尾はメアリーが作っていた薬でg」

「もう、あんたとは喋らない」



 そう言ってナイフをさらに1本取り出すアナさん。



「...殺す」

ネコマタとは、つまり...次回解説!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ