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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第三章 勇魔大会狂殺
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処理⑤ 捕捉

8月になりました。暑いです。


(話もほどほどに。そろそろ200m圏内になるぞ)



 心に響くのは、威圧感のある声。久しぶりに聴いたけど、今まで召喚した神話生物の中で一番と言ってもいいほど威厳がある声だね。



「了解。いつも僕のそばにいるクトーニアンにも、お疲れ様って言っておいてくれ」

(覚えていたらな)



 おそらくだがシュド=メルと交代したのだろう。さっきまでずっと顔を出していたクトーニアンがいない。



 まあ走りながらシュド=メルの位置を把握しつつそれを僕に伝えるという重大な任務を頑張ってくれていたのだ、労いというものは必須であろう。



「ショゴス、周りに人は?」

「周囲100mにハいません。が、確かに200mトなるといますね」



 ...今、僕たちがいるのは路地裏の奥を進んだような、とても暗い場所。



 人というよりは、化け物がいたとしてもおかしくはないであろう、恐怖の入り乱れている場。



 建物が乱立し、肉眼で見ることの限られるこの場所に...殺人鬼はいる。



「人数は?」

「2。タだ、どちらとも一瞬で別の場所に移動しマす」



 時間停止中に移動しているのか。そうやって逃げることにより、何があっても犯人はわからなくなる。



 そもそも時間停止をこの世界で何人の人間が知覚できるのか...



「シュド=メル、念の為質問するけど、そいつらが行っている移動は瞬間移動ではないのね?」

(テレポーテーションのことを指しているのであれば、それは違うな。1分ごとに30秒、時間を停止させその間に逃亡している。現に、我がしっかりと追っているからな)



 1分ごとに30秒...クールタイムが短すぎやしませんかねえ。それに止められる時間も長い。



 どっかの吸血鬼だって約10秒なんだけどね。なんでそんなチート能力を敵が持ってるんですか。



(知らん)

「でしょうね...」



 ま、少なくとも追うことはできているんで問題はないか。



 走る、疾る、奔る。



 全ては償いを受けさせるために。



 ...昔はこんなに走れなかったけど、今はずっと走ってられるな。



 訓練とかしてないけど、<到達点>が上がったことによって同時にステータスも上昇。結果的にスタミナが増えて長く走れるようになったのは誰にでもわかるけど...



「それにしても、不思議な世界だなあ」

「何がでスか?」

「だってさ、僕が覚えている限りではあるけど、この世界はゲームの中の世界ってわけじゃないのよ。でも、まるでゲームみたいな、そういう成長のシステムになってる」



 敵を倒してLvを上げ、訓練をしてLvを上げ、そうして強くなったら今まで攻略できなかった<ダンジョン>を攻略する。



 効率的なのかどうかは別として、本当にRPGみたいなシステムなんだよね。



「強さガ可視化されている、と考えれば良いシステムなのデは?」

「いや、システムの良し悪しじゃないんだよ。なんというか...」

(話はあとだ。...奴ら、我々に気付いたらしい)



 っと、それは大変だ。



 気付いたって、僕たちが追ってきていることをってことだよね。



「...確かに。さっきまで走っていたうちの1人が止まっていますね」

(他の一人は我が追うとしよう。ショゴス、任せたぞ)

「!?テ、テケリ、リ」

「言葉戻ってるぞ」

「ア、シ、失礼しマした」



 シュド=メルに任せられたのがよほど嬉しかったんだろうなあ...



 悲しいよ、僕。



「マ、マスターはあくマでもマスターですよ?」

「大丈夫、君は裏切らないっていう確信があるから」

「ハ、はイ...あ、そこの家の屋根を登れバ目的地です」



 急にそういう無茶振りふっかけてくるね、君。



 と考えつつジャンプ。なぜか2m位余裕で飛び越えて...



 屋根に着地。腕をしっかり伸ばし、45度の角度で天高く広げ、背を伸ばせば成功だ。



「...9点ですね。空中であと1回転あれば10の札が上がっていたことでしょう」

「いやいやショゴス...ってあんたがいうんかい」

「それくらいのノリは必要だからね」



 目の前の男...年齢は30代前後、身長は平均的、肉体は細マッチョで紳士的な服装、と。



 今は春。どんどん暑くなってくるのに、燕尾服を着ていて暑くないのかね。



「こんな奴が、とは全く思わないけどさ。あなたが犯人?」

「なんのだい?」

メアリーという人物(母さん)を殺した犯人」



 最初の質問は少し困った顔で、そして次の言葉はとても真面目な顔で言う。



 金のロングヘアー、か。わかりやすい特徴だけども。



(メェーちゃん、あいつが母さんを殺したの?)

(うーん、姿は違ったような気がするけど...)



 ちょっと、わからない。か。



 警戒は怠らずに、会話を続けるとしよう。



「いや、それは僕じゃない。まあ命令したのは僕だけども、実行したのは僕ではないってことだね」

「それはつまり、殺した犯人は今逃げているやつってこと?」



 目を見開いて驚く目の前の人間。



 図星か?いや、それとも...



「なるほど....これは困った、あいつもすでに捕捉されているのか」

「そう言うことですねえ...逃げ場はないので、正直になった方がいいのでは、と思いますが」



 僕が知りたいことは山ほどある。なぜ母さんを殺したのかとか、それ以外の人たちを殺した理由だとか。



「うーん、でも君は僕から聞くことはできないんじゃないかな」

「...は?」



 歩いてくる男は、しっかりと持っているステッキを片手にゆっくりと。



 バランスがいいのだろう。瓦の上をこけることなく近づいてくる。



 ...気味が悪いな、少し離れて...



「マスター、そレ以上後ろは...」

「っあ、落ちるってことか...」



 いつの間にか退路がなくなって...いやそう言うわけではないか。



 すぐに飛び退いて別の屋根へ。もちろん奴もついてくるが。



「驚いた。君の左腕から声がするとは......ああ、そういえば君は確か>キメラティック・フォレストアンドオーシャン・キングズ<を単独で討伐した...」

「そこまで知ってるのか...」



 そういうと、やつはニヤリと笑う。



「もちろん。君のことはこの世界じゃあかなり有名だよ?真っ黒で、ドス黒い、この世の裏とも言える人なら、君は要注意人物に指定されるほどの存在だよ」

「それはそれは、ありがとう」

「褒めてはいないんだけどなあ」



 マジか...要注意人物扱いか...



 裏社会で暗躍とか、<魔王>としてやってみたかったんだけども。この分だと出来なさそうかなあ。



「でも、そう言うとこまで知ってるのになんで僕を追ってきてるの?危険だってわからない?」

「そう言う君だって、なんで僕から逃げるんだい?逃げる理由なんt」

「質問を質問で返すって言うのはいささか不作法じゃない?僕はいつだってあんたを殺せるんだからさ」



 若干の脅しを含みつつ、殺意を相手に向ける。



 ...こんなことをしたのは初めてだけど、さっきまで全く流してしなかった汗を少しだけ流しているのを見る限りは、成功したと言って然るべきかな。



「殺すって、いやいや。君は武器はおろか魔力だって練っていないじゃないか」

「質問しているのは僕だ。答えろ」

「...あらあら、躍起になっちゃって。短気なのはいけないよ?<魔王>なんだからさ」



 ...そこまで知っているのかよ、畜生が。



「それなら尚更わからないな。なんで僕に向かってくる?僕は<魔王>、君なんて一瞬だぞ?」

「あ、ここまで言ってもわからない?そっかー、それじゃあ言っちゃおうかなあ」



 ピタリ、と足を止める奴。それと同時に僕も止まる。



(っ!マリア・ヒルド!こちらの追っていた反応が消えた!)

(な、マジ!?)



「簡単だよ、君を殺すためさ」






 気付いた時には、そいつは目の前にいた。



 だが姿がだいぶ違う、背恰好や服装、髪の毛に顔の形、何から何まで全く違う。



 銀髪童顔、背は低くて足が長く、胴体はかなり小さいものの腕が長い。そして何より、これまでにたくさんの人間を殺したと認識できるほどのおびただしい量の血で濡れている、シーフが着るような軽装。



 間違いない、こいつは別人。だが、目の前にあの男...燕尾服の男がいない。



「っしゃあ!!」



 ヒュン!



 という音とともに僕に襲いかかってくる横なぎの剣。



「無色透明ではアりますが、なんらかの液体が塗られてまスね」

「お、おう。[思考加速]状態の僕の思考と語り合えるのは別として、これが僕や母さんを殺した毒か」



 しっかりと避けたのちに直線的な蹴り上げを奴の持っている剣の柄に対して行う。



 が、当たらない。まあ近接戦闘とか持っていないもんね。当たるわけがない。



 けど、それを避けさせるために後ろに退かすことはできた。



「っと、あっぶねえなあ。この毒が俺に当たったらどうするつもりだよ?え?」



 声も、口調も違う。まるで煽り倒すかのようなこれを好きになるようなやつはいないだろうな。



 だが...一体どうやってすり替わった?いや、もしかするとすり替わったのではなく...



(シュド=メル、時間停止は?)

(反応が消えてからは行われていないぞ)



 となると...つまり。



「...いや?僕はお前を殺すためにきたから。その毒が当たったら、それはそれでラッキーかな」

「おーおー、おっかねえな!」





 瞬間、奴が消える。



 一体どこからか。それは...



「わからないけど、こっちにいけば避けられる!」



 目の前へダッシュ。すると、元々僕がいた場所に大穴が開く。



 下からではなく、上から。つまりは奴が上から降ってきたのだ。



「時間停止っていうのはほんと便利だね。真上にも行けるんだ」

「<静止(ストップ)>っていいうんだぜ?限られたやつしか使えない<時属性>の魔法っていうんだから、かっこいいよなあ?」

「はっはっは。ああ、そうだね。そういう趣味嗜好に関しては君と気が合うらしい」



 聞いたことのない<魔法属性>だな...教科書に載ってるのか、後で見なくちゃ。



 あと限られた者にしか使えないのは普通にいいよね。強そうだし。



「そうかそうか。じゃあ、俺の仲間になるか?」

「んな訳ねえだろ。さっき言ったの忘れたのか?」

「忘れてねえよ?俺を殺すためにきたんだろう?なあ!マリア・ヒルド!!」

それにしても、暑いです。



でも下手に冷房をガンガンにつけると腹痛になるので、みなさまも注意してくださいね。

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