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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第三章 勇魔大会狂殺
120/402

幕間 出荷

総合ポイントが100という大台に乗った後最初の話がこれて...



皆様のおかげです。ここまでありがとうございました。



そして、これからも「冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる」をよろしくお願いします。



毎回めっちゃ短いですけどね!今回は今までで一番長いですけど!

 本名、カミラ。寿命は6年。



 苗字はない。なぜなら、彼女は平民として生まれたからだ。



 いや、厳密には平民でも苗字のあるものはいる。ただ...



 ただ、彼女は、彼女が生まれた一家は、苗字を代々持たない平民だった。



 ============================================



 彼女はかなり元気な状態で生まれた。



 病気にかかった状態だとか、体の一部が欠損しているとか。



 まだ小さすぎるだとか、体重が軽いだとか。そういうことは全くなかった。



 普通、この世界では出産は自力で行う。助産師などこの世界にはおらず、なんとかして自分と、その家族だけで子供を産み落とす。



 最も、これは水準の高い出産技術が世界的に広まっているから。だから、このような元気な状態で子供が産まれてくることは当たり前のことだ。






 だが、残念なことに子供は親を選べない。



 彼女は産まれてすぐ聞いた親の言葉、それは



「ああ、この子こそ<魔王>様に仕えるにふさわしい子だわ!」



 という、ある意味呪いと言っても過言ではないほどの重すぎる言葉。



 まあこの時点では何も思わなかっただろう。まだ生まれたて、1歳にも満たない子供なのだから当然のことだ。



 だが、残念ながらこの世界の人間は1歳を越えると急速に脳が発達する時がある。



 世界中の人々が信仰する、<聖神信仰教会>。そこではこの事象を<飛び越し(スキップ)>と呼んでいるのだが...



 とある研究者によると、この事象は弱肉強食のこの世界だからこそ起こる事象らしい。生きるために、子孫を残すために、有能な子供を限りなく早く作るために。肉体は進化の途中だからまだ無理だが、せめて思考能力だけでも早く進化させようという種が考えた進化の方法。だそうだ。



 現在それが起こる確率は10人に1人。これには転生者は含まれていない、が私としては転生者は含めてもいいと思う。



 なんたって転生者とは...



 ...いや、<勇者>のレポートに書く内容ではないか。全く、なんでこのレポートは一度書いた内容を消すことができない仕様なのだ...



 ============================================



 1歳になった彼女が初めて知ったこと。それは、彼女の親が、いいや彼女の家が代々<魔王>に仕えていたことだった。



 この世界で、<魔王>は敵だ。なぜそうなのかはわかっていないが、少なくとも<聖神信仰教会>がそう言っているのだから間違いはない。



 そして、その<魔王>および人類が繁栄するのに邪魔な存在を殺すこと。それが<勇者>の使命。これは教科書に書かれるほど有名なことだ。



 ...ここで、私はこのレポートを呼んでいる人に謝らなくてはならない。確かに私は<聖神信仰教会>を世界中の人々が信仰していると言ったが、それは少しだけ間違いだ。



 ある人類学専門の教授が世界中をまわって聞き取り調査を行ったところ、やはり<聖神信仰教会>を信仰している人は99.9%もいた。



 だが、それと同時に0.1%だけ信じていない人がいた。そう、たった0.1%だけだ。



 そして、運が悪いことにその0.1%の確率を引き当ててしまった子供。それがカミラというわけだ。



 だが、カミラは最初それでいいと思っていた。



 善悪の判断がついてからも、むしろ<魔王>より<勇者>の方が敵だと感じてしまった。



 これは、親の英才教育の賜物だろう。何せ、その親はどちらも<魔王>こそ唯一であると信じて疑わない<反聖教>の司祭を努めるほど狂信していたからな。



 教え方もまた、それが正しいと思うように誘導するようなものになる。



 ただ、別にこれだけならいいのだ。これだけなら。



 これだけだったら、ただの狂信者としてほっとかれて蔑まれるだけだった。



 だからこそ、3歳になった時に全てが壊れてしまったのだ。



 ============================================



 彼女は1歳の頃から本を読んでいた。



 もちろん<勇者>の伝説についての本も読んだし、<魔王>が討伐される話も読んだ。



 だが、その度に彼女は<勇者>に憤慨していた。



「なんで...なんで<勇者>は<魔王>様に酷いことをしてしまうの!!」



 たった1年でここまでの信者を作れたのであれば、司祭としてこれほど嬉しいことはないだろう。



 だから、たくさんの本を与えた。たくさんの知識を与えた。



「どうして<魔王>様は毎回殺されちゃうのですか!」「それは<勇者>という醜い存在が<魔王>様を殺しにやってくるからなの」

「どうして<魔王>様は殺されなきゃいけないのですか!」「殺されてしまう運命にあるから、ととある学者は言っていたね」

「どうして...どうして、<勇者>は<魔王>様を殺さなきゃいけないのですか!」「それは、<勇者>にとって<魔王>様が敵だからさ」



 いつの間にか、彼女の頭の中には膨大な知識が溜まっていた。だが彼女は足りなかった。



「<魔王>様だって1人の人間なの。なのに...なんで殺されなきゃいけないの?なんで殺しにやってこなきゃいけないの?なんで...なのに、<勇者>は殺しにやってくるの?」



 謎が解けるたびに謎が2倍になって帰ってきていた。そう、それを解くために彼女はずっと本を読んでいた。



 ...いつの間にか、彼女の知識欲は留まることを知らなくなった。



 ============================================



「ここが...<聖神信仰教会>の教会...」

「一応規則だからね。本当はこんな場所に行きたくはないのだけど...」



 それに関してはカミラも同意だった。



 何せ、ここはあの<勇者>に与する<聖神信仰教会>。本部というわけではないが、大きめの街に住んでいた彼女はそれなりに大きい教会に行くことになった。



 そして...



「おお...これは将来有望な子ですね」

「本当ですか!」

「ええ。やろうと思えば世界を統一すらできる力を彼女は得ることになるかと」



 たまたま、そんなことを言われた。



 カミラ自身、そんなものが欲しいとは思いはしなかった。そういう力は<魔王>に与えるべきと考えたからだ。



 が、残念なことに信者であるカミラはこう思ってしまった。



(そういう力があれば...<魔王>様は死なずに済むのかな)



 だから...家に帰った時。目の前にある真っ白な宝珠を見た時、迷った。



「どうしたのカミラ?なんのスキルが書いてあったの?」

「え、えっと...」



 この圧力からだろう、彼女が引っ込み思案になってしまったのは。



 いやまあ、知識のためならなんでもするようになってしまったのもこのせいなのだが。



 ーーーーーーーーーーーー


[剣術]

[時間魔法]

[基礎四大属性魔法]

[弓術]

[縄術]


 ーーーーーーーーーーーー



 宝珠から獲得スキルはこの五つ...だけではない。



 そう、この時点で彼女は[<勇者>の因子]スキルを持っていない。



 つまりは...



 ーーーーーーーーーーーー


[<勇者>の因子]


 ーーーーーーーーーーーー



 そこには、悪魔が住んでいた。



「...ちょ、ちょっとだけ考えさせて!」

「あ、ちょっとカミラ!」



 すぐに自分の部屋に閉じこもった。



 だって、自分は<魔王>に仕える存在。<勇者>であったら意味はない。



<勇者>は敵。そう敵だ。だから、私がなってはいけない...



 そう考えていた、最初の1日は。



 だけど、少し考えてみると、おかしい事に気づく。気づいてしまった。



「あ...な、なんでそもそも私たちは<魔王>の味方なの?」

「そ、それは...なんで、なのかしら...」

「なんでも何も...代々そうだったから、としか...」



 結果として、彼女が欲しい回答は得られなかった。



 だが、そもそも洗脳されるというのはとても時間がかかるのに解けるのは一瞬であるのだ。



「「「私たち...おかしいのでは?」」」



 彼女の記憶、3歳の時の記憶はここで途絶えている。



 なぜなら、この後すぐに<魔王>側の存在が彼女達を消しに動いたから。



 一体何があったのかはわからない。だが、少なくとも彼女がその街の<反聖教>の拠点の地下牢獄にいた時には...



「私は<魔王>様の敵私は<魔王>様の敵私は<魔王>様の敵私は<魔王>様の敵私は<魔王>様の敵私は...」

「お、おい」

「死ななきゃいけない死ななきゃいけない死ななきゃいけない死ななきゃいけない死ななきゃいけない死ななきゃ...」



 彼女以外、誰もその拠点にいなかったのは言うまでもないだろう。身寄りのない彼女は、<聖神信仰教会>直属の孤児院に引き取られることとなった。



 ============================================



 彼女の身に何が起こったかは言うまでもないが、彼女は一体何をしたのか。



 簡単だ。[<勇者>の因子]を獲得してしまったのだ。じゃなかったら<聖神信仰教会>は孤児院になんて入れてくれないだろう。



 首が飛ばなかっただけマシ、と思うのが普通だが彼女は違う。



 そもそも<反聖教>ではもう一度洗脳を行おうという痕跡があった。だが、なぜかそれは行われなかった。



 普通ならわからないだろう。敵側の理由なんてこれっぽっちもわかるはずのないことだ。



 だが、今回は違う。敵側だからこそわかる。






 彼女は、[<勇者>の因子]を獲得してしまったからこうなったのだ。



<勇者>は<魔王>の敵。であれば、彼女は殺しておいた方がいい。



 だけど、それも行われなかった。彼女は、あらゆる魔法を耐え切った。耐え切ってしまった。



 ーーーーーーーーーーーー


 魔力抗体 白金


<魔力>そのものをぶつけられても全く効かなくなる、最高級の防御スキル。

 習得すれば、<魔力>を扱う攻撃である魔法の全て及び<魔力>扱った行動の全てが効かなくなる。しかもon/off可能。

[鑑定]に耐性を持たないスキルではあるが、別に弱い魔法を受けても動じなければこのスキルを持っていると考えていいだろう。

 ただ、一つ問題があるとすれば、確かに毒などを付与する魔法などでは死なないが、HPやMPが減らないだけで肉体的、精神的ダメージはしっかりと入ってしまうということだろう。


 ーーーーーーーーーーーー



 ーーーーーーーーーーーー


 対呪術 銀


 呪いなどを受けてもなんともなくなる。持っておくと大概の<呪>に抵抗できるようになる。

 ただ、とてもじゃないが後天的な習得は困難だろう。なぜなら...


 ーーーーーーーーーーーー



 おそらくだが、この2つのスキルと[応急処置]に関連があると思われる。



[魔力抗体]。このスキルを持っていたおかげで彼女は生きながらえたのだろうと思う。魔法であれば処理も簡単だろうからそれで殺そうとしたが殺せなかった。



 で、物理的な攻撃で殺そうとしたが高いHP及び体力と[応急処置]の結果殺害に至らず。



 ...えっと、<呪>ってなんだっけ...



 ============================================



<呪>とは、<魔力>を使わない魔法のこと。



 構成要素のほぼ全てが人間の意思になっていて、それら全てをまとめて敵にぶつけるのが<呪>というわけだ。



 ...あっているよな?よし、あっている。



 魔法もだめ。物理もダメ。



 そうなったら<呪>を使ってみるか、ということで使ったのだろう。



 あくまでも<魔力抗体>は魔力を使った攻撃のみ無効化するもの。



 残念ながら、ほぼほぼそれで殺されかけてしまったのだろう。



 だが、なぜか彼女は生き残った。一体なぜか。



 現在の彼女の精神の値は16だが、おそらく本来はもっと高いのだろう。



 そう。<呪>はあくまでも意思、つまりは精神をまとめ上げたもの。物理的に干渉することができない以上、精神攻撃になるしかない。



 そして、彼女は耐え切った。耐え切ってしまった。本来は高かったのであろう精神がぎりぎりで耐えてくれたのだ。






 ...ところで、人間に限らず生き物を殺すのにもっとも確実なことは一体なんだろうか。



 ナイフで心臓を刺すか?それとも魔法で焼き殺すか?



 いいや、答えはそのどれでもない。単純、何も食べさせないことだ。



 記録によると、回収された時にはすでに丸1週間は何も食べていない状況だったらしい。本当に<反聖教>の信者は彼女を殺したかったのだろうと思う。



 だが。残念ながら元々の高いステータスと<聖神信仰教会>の回収によってそれを阻止された。<勇者>もといカミラは、完全な敵となってしまったのだ。



 彼女は、こう語った。



「お前、親に会いたいならしっかりと反省するんだな」

「あ...あ...」



<反聖教>では大体こんな状況だったと。



 まあ別に今の彼女はどうとも思っていないらしい。まあそりゃそうだ、すでに彼女は神話生物なのだから。



 そうして、彼女は孤児院に引き取られた。が、結局のところその状況は変わらなかった。



「早く洗濯と掃除をしな!!全く、あんたなんてトロい奴はいつ死んでもどうだっていいんだからね!!」

「は、はい!」

「おい、葉巻もってこい」

「えっと、どちらの葉巻きですか?」

「そんなことくらいわかるだろ!!だからお前は使えないんだろうが!!」 ガシャーン!!

「あがっ!...す、すみません!」

「おーい奴隷!今日の夜も部屋にこいよな!こなかったら...」

「わ、わかりました!」



 はっきり言って、どっちの方がいいとかない。どちらとも地獄であり、彼女にとって生きた心地はしない場所だ。



 ただ、<反聖教>と違って少なくとも命だけは保証されている以上逆らうわけにはいかない。



 彼女は、あらゆる仕打ちを唾を飲み込みながら耐え切った。



 そう、耐え切ったのだ。



「今年は...<国立学園>の...」

「は?お前なんかが行けると思っているの?馬鹿じゃね?」

「...え?」



 そんなことを考えた時期があったとか、なかったとか。



 彼女は、唯一学校に行けなかった<勇者>だった。運命に翻弄され、ただただ踊っていた。



 ただあの時までは彼女は後悔していなかった。この時点ですでに<魔王>が敵であり<勇者>が世界の味方だと信じていたからだ。



 なぜなら、それこそ世界の常識。この世界で生き抜いてきたのなら、その思考になるのは()()であり()()



 神話生物である我でさえ、マリアに会う前までは<勇者>は人間の味方だと思っていたのだから。人間の少女であれば間違いなく6歳までにはそういう思考になっているであろう。



 だから、別にあれが起きなければ何もなかったのだ。



 ============================================



「俺はマイゲスだ!よろしく頼むぜ!」



<勇者>の初顔合わせの時。奇跡が起こってしまった。



 ...いや、彼女にとっては奇跡ではない。偶然あるいは運命だ。じゃなかったら、それは確定事項ということになる。



「おう、カミラ!これからもよろしくな!」

「あ...う、うん...」

「何かあったのか?」

「いいや?ただの幼馴染さ。な、カミラ!」

「う、うん...」

「不思議な子もいるのね。こんなに物静かな子も<勇者>にならなきゃいけないなんて」

「ですが、<勇者>であることは誇りに思うべきですよ」



 幼馴染?そんなわけないだろう。



 彼は、孤児院で自らを奴隷として扱っていた人間。名をマイゲス。



 憎んでいたわけではない。あの時は生きているだけで良かったのだから。



 生きていれば、親にも会えると思っていたのだから。



「さて...今日ももちろんいうことは聞くよなあ、奴隷」

「は、はい...」

「ま、奴隷は奴隷らしくしっかり奉仕しなきゃいけない。もしもしないのなら...俺はしっかりと他の<勇者>に()()すっからなあ?」

「は、はい...」

「ちっ、つまんねえな。もっと返事のバリエーションはねえのかよ」

「ご、ごめんなさい」

「...ああ、でもそりゃそうか。なんたってあんなクズ親がお前を育てたんだよなあ」

「...」






「しかも?お前を育てきらないで死んだときた。そりゃあ奴隷にもなるわなあ」

「...え?」

「手が止まってるぞ。しっかり動かさねえと...」

「あ...ご、ごめんなさい...」



 親は死んでいた。死体はこちらが独自に調べた結果燃やされたことが発覚している。



 ...親。かけがえのない存在。会いたかった。生きていれば会えると思っていた。



 でも...死んでいた。



 いや、でも嘘かも。そう思っていたけど...



 ーーーーーーーーーーーー


 鑑定 金


 見た生き物のステータスを覗くことができるようになる。また、覗いたものの考えていることを読むことができるようになる。

 チートスキル。これがあるから初見殺しということは起こらないが、これがあるからこの世界では暗殺というのがあまりない。

 人間は基本このスキルを後天的に習得することは難しく、持っているものは大概先天的。

 ただ、暴走しやすいため上手く操ることができなければただの枷と化す。


 ーーーーーーーーーーーー



(おっと、マジのこと言っちまった。まあどうでもいいけどな)



 信じるしか、なかった。



 基本的に思考で嘘をつけるものは少ない。そもそも心を読まれる前提で行動する人間自体少ない。



 だから強い。対人戦で心を読めるか否かはかなり重要と言える。



 だから...彼女の弱った精神には、強く響いた。



 毎日、ボロ雑巾のように使われて疲弊しない心というものはない。疲弊しないのであれば、それは自分がボロ雑巾のように扱われていると思っていないか、本当にボロ雑巾のように扱われていないかのどちらかだ。



 ...さっきも言ったが、洗脳というのは解けるのは一瞬。



(<勇者>は...敵?でも、<魔王>も...敵)



 最も、彼女の疲弊した心では洗脳を解くことはできなかった。否、常識を覆すことはできなかった。



(どっちが...本当の...)



 彼女にとっては、敵がどちらなのか分かれば良かった。でも、わからなかった。



「ふうん。意外としっかり使えます、ねっ!」

「だろ?しっかり教え込んだから、なっ!」

「っ!?」



 聞くことはできない。話すことはできない。



「それくらいやりなさいよ。できるんでしょ?」

「あぐう!!......わ、わかりました...」



 もはや、知らないのはリーダーだけ。いや、リーダーもなんとなく気づいている。



「...」

(私のこと...見てる...)



 そんな時...なぜか私は<魔王>に助けられた。



 ============================================



「これは。ひどいですね。もはや慣れてしまっていたのでは?」

「はい...」



 彼女を診察した時。外部だけが壊れていると我は診察した。



 だがそれは間違いだった。彼女は、すでに全てが壊れていた。



「一つだけ、問いたいのですが」

「な...なんでしょうか」

「死にたいですか?生きたいですか?」



 究極の2択を我は迫った。



 なぜなら、彼女にはそれを決める権利がある。



 確かに人間は下等生物。だが、彼女はそれを見過ごしていいほどの仕打ちを受けていたのだ。



「...生きて...いたいです」



 そして彼女は答えた。地獄絵の切符に穴をあけた。



「なぜですか?このままだと、あなたは」

「母さんと...父さんの分まで...生きるため、です」



 これ以降は寝てしまって会話はできていない。だから、これ以上のことは何も知らない。



 ここまでの過去は、全て勝手に記憶を覗いただけ。そのレポートがこれなのだ。



 ...採決を下さなくては。



 よって、彼女という存在は死んだ。



 カミラ。彼女は肉体と精神をイゴーロナク様に乗っ取られ、今もなお生きている。



 敗因といえば、これは内部が原因と言えるだろう。



 大事な、大事な[鑑定]を持つ<勇者>を殺したのは、魔獣でも神話生物でもない。



 ...敵、それは彼女にとって<勇者>。故に彼女はイゴーロナク様と心を交わした。



 混ざりに混ざって、カミラ=イゴーロナクとなったのだ。




Q.彼女は強かった?


A.弱い。だがおそらく他の<勇者>と比べ物にならないほど強い。



まあ、そりゃあそうですよねえ。



イゴーロナクなのですから。





残る<魔王> 4


残る<勇者> 4

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