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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第三章 勇魔大会狂殺
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森の奥深くにて

遅れて申し訳ございません。



こちら過去の分となります。

 ============================================



 ドサリ、と標的が落下する。難しいと聞いていたけど、メェーちゃんの手にかかればこんなものらしい。



 すぐに周りの確認。目に見える範囲には...いない。



(クトーニアン、状況は?)

(半径100mに魔獣の気配なし。200m以内におよそ4体)



 クトーニアンからの報告を聞いて、緊張していた精神が少しだけ緩み、そしてすぐに戻す。



 で、とりあえず死体を回収...でもこれが本当に...



 いや、アナさんが食えるって言ったんだ。食えないわけがないだろう。



(それじゃあこれを持ち帰ろう。クトーニアン、比較的安全なルートを教えてくれ)

(わかりました。まずはそのまま真っ直ぐに...)



 クトーニアンの指示を聞きながら歩いていく。既に昼にもかかわらずこの森の中は暗く、アナさんに渡されたランタンがなければ足元も見えないほどだ。



 それに何より迷う。もしも僕だけだったら、あまりにも同じような木々ばかり且つ真っ暗という迷うには絶好の場所で数日迷う。確実に迷う。




 まあクトーニアンという最強のナビゲーターがいるので問題はないんだけどね。



(次はそこを右です)

(ういー)



 クトーニアンの言うことに従っておけば魔獣に会うことはない。空中の魔獣は僕自身が警戒してメェーちゃんに倒してもらわないといけないけど、それ以外の、つまりは地中と地上の敵に関してはしっかりと教えてくれる。



 しかも範囲が広い。ショゴスの時は50mほどが限界だったけど、クトーニアン達は群れ全体で行ってるが故に200mまでできる。既に2度目であるからなのか、かなり精度も上昇している。



 まあ、



(すみません、この魔獣は接敵しないと広場に戻ることができません)

(ん、わかった。メェーちゃん、応援してるよー!)

(うん!)



 それでも戦わないといけない時はあるんだけど。



 これがショゴスとの決定的な違い。ショゴスは確かに範囲がクトーニアン達の半分以下だけど、50m以内に入ってきた魔獣を迎撃していたからね。さすがショゴス。



 まあどちらも一長一短ではあるから一概にどれがいいとは言えないけど、少なくとも今はクトーニアン達の方がいいだろう。



 一番いいのはどっちも使うことだけどね。



「終わったよー!」

「お疲れ様、がんばったね。ご褒美になでなでしてあげよう」



 撫でる。かわいい。



「メェ〜」



 メェーちゃんも気持ちよさそうでよかった。



 ...そういや、クトーニアン達へのご褒美とか考えてなかったな。ショゴスも同様。



 何か考えとくか。



(まもなく広場です)

(うん、お疲れ様!)



 足を少し進めると、開けた場所に出る。



 昼間のこの場所はかなり平和で、しっかりと見える明るい空とキラキラとした水面を見せてくる池及び滝がいい感じの景色を生み出している。



 おどろおどろしい森とは対照的であり、まさにここは<深森>の中にあるオアシスと言えるだろう。実際に魔獣の1匹すら来ない安全地帯だしね。



 木の根が張っているとはいえ、滝の方に近づけばただの沢。小石をかき集めれば焚き火くらいは使えるわけで、野宿するのにもぴったりである。



「ただいま戻りました」

「ん、よく帰ってきた」



 そんな中、アナさんが行っているのは...素振り?



 ヒュン!ヒュン!



「素振りですか?」

「ずっと座りっぱなしだと体が固くなっちゃって」



 なるほど、そういうことはよくある。体操のようなものが、この世界では素振りなのかもしれない。



「で、例のものは狩れた?」



 そう聞いてくるアナさん。とりあえず<インベントリ>を開いて...



「狩れましたよ。結構あっさり打ち落としました」

「おお!!」



 先ほど狩った()()と思われる生物を渡す。明らかに、どっからどう見ても黒く光っているのだけど、



「ほ、本物だ...じゅるり」



 どうもこの世界では食用らしい。別に虫に対して何か思うわけでもないし、黒光りするこの生物に対しても何か思うわけでもないけども、ただ少なくとも他の転生者はあまり見たくないだろう。



「<ブラックガーデン>でしたっけ。本当に美味しいんですか?」

「なぜか毛嫌いする人がたくさんいるから市場には出回らないけど、少なくとも味は保証できる。少し待ってて」



 と言って焚き火の方に向かうアナさん。調理とかするのだろうか。



 でも簡易的な焚き火でフライパンとか使えるのかな...と思っていたら丸々1匹を木の棒に刺して焼いていた。



 豪快...いや、前世の知識を持っている身からすればただのやばい人だな。



 だって、ねえ。そもそも黒光りするアレであり且つサイズも僕の胴体くらいあるんだからね。



 そう思われても仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。



 ============================================



 一口噛むとバリバリと音がする謎の虫を食べ終わり。



 僕たちは少し雑談をしていた。



「そのドラゴンとは戦ったんですか?」

「もちろん。まあさすがに私とメアリーだけだと戦力不足だったけど」

「あ、やっぱりドラゴンってそれくらい強いんですね」

「金属鎧以上の硬さである鱗とか、下手な位置にいると回避が不可能になる<ドラゴンブレス>とか。困難になる理由はいくらでもある」



 まあそんなドラゴンを僕は倒しているわけなのですが。



 僕の実力というよりは、メェーちゃんとショゴスが強すぎるのもあるけどね。



「...それにしても、メアリーさん起きないですね」

「そろそろ起きてくれないと面倒なんだけどね」

「と、言うと?」



 アナさんが指を差す。その方向には、一輪の花。



 厳密にはまだ蕾であり花は咲いていないけど...ははは。



「<コリアン草>だけではないけど、<薬草>といわれるものは採取が難しい」

「採取...」

「基本的に取ってそのまま食べるなら何も問題はない、ただ下手な取り方をすると<インベントリ>内でも腐敗していく面倒なもの」



<インベントリ>の中で腐敗ですか、<薬草>はかなり繊細らしい。



「ただ採取の正しい方法を知っていて、採取した後それを保管するための容器があれば問題ない」

「あー、なるほど。それを知っていて且つ持っているのが...」

「メアリー。ちなみに、そもそも採取の<クエスト>自体珍しいけどメアリーは完璧な状態で持ってくるからみんなこぞってメアリーに依頼する。今回もその一例」

「僕からしてみれば護衛に近い<クエスト>だったわけだ」

「そういうこと」



 なるほど、メアリーさん達が驚いていたわけだ。



 そもそもメアリーさんがいないと成り立たない<クエスト>だったわけで、そんな<クエスト>をやるのはどうかと言うことか。



「まあそもそも<深森>がかなり難易度の高い場所であると言うのもあったのだけど」

「魔獣が結構たくさんきましたからね」



 今頭の上で寝ているメェーちゃんを<魔力解放>してなかったらやばかった。



 それのせい......うん、やばかった。



「そういえば、マリアはこれが初めての<クエスト>だよね。どうだった?」

「え?これが2回目ですけど...」

「...え?」



 2回目...いやクリアするのは初めてか。



「実は<シウズ王国守護騎士団>から極秘の...あー」

「...それ言っていいやつじゃないよね」



 うん、違うね。何やっているのかな僕。



 まあ、でもいっか。



「そうですけど、アナさんなら別に問題ないですね。実はちょっと前に...」



 そうして説明するは僕の母さんと養父母の悲劇。



 否、劇ではないな。むしろ劇であればどれほどよかったことか。



「...なので、とりあえずそいつをとっちめて生き地獄を味合わせようかと。具体的にh」

「そこまではさすがに聞きたくないかな」

「っと、すみません」



 ついつい脳缶とかグール化とか殺して蘇生とか言うところだった。



 そりゃあ誰も聞きたくないよね、今後は気をつけないと。



「でも...魂と肉体を殺す、か。私でもそんな方法は知らないけど...」

「ですよね...僕もマナお姉様もエリカ先輩も、そもそも学業優先しろと言われたとはいえ全く何もわからないんですよね」



 なぜ殺すのかとか、どうやって殺しているのかとか。本当に何もわからない。



 すごいのはヒントすら残していないことだ。大概こういう事件の推理小説とかシナリオとかってヒントがどっかにあるはずなんだけど、それすら見当たらない。見せようとしていない。



 つまりは完璧にプロが行なっている。わかるのはそれくらいだ。



「...まあ、死人に口なしだからね。それを行なっている状況を見た人も聞いている限りではいなさそうだし」

「ほんと、一体どうやって調べろt」

「はっ!!」



 そして急に起き上がるメアリーさん。マジで急すぎる。



 だけど...これでようやっとことが進みそうだ。

メアリーさん、グットタイミング。

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