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冒涜的な魔王の種は今日も今日とて生き延びる  作者: はじめ おわり
第三章 勇魔大会狂殺
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迷ったら一生抜け出せない森

今日も短めです。



が、次回は反動で長くなりそうです。

 森の中、ある程度ではあるものの舗装されている道を歩いた。



 最も、本当にある程度だ。樹木の根や枝が道にはみ出ていたり、道がそもそも割れていたり、なんなら途中から舗装がなくなっていたり。



「ほ、本当にこの道で合っているの?」

「.........合ってる」

「私の前では嘘つけないの、アナが1番知っていると思うのだけど?」

「嘘ですごめんなさい迷いました」



 でもまあ、今は全くもって分からない場所にいる。真白空間定期ではないから精神をすり減らすわけではないけれど、暗闇にいると人間は不安になってくるものだ。



 では、既に森の中を歩き始めて1時間が経過しようとしている今の僕達はどうなのか。



「結構歩いたね。マリアはそろそろ疲れてきたかな?」

「このくらいでは疲れないよ、メアリーさん。今まで色々あったから...」

「何があったらそうなるの?」

「フフフ...大丈夫です、アナさん。僕としてはむしろもっと来て欲しいタイプの異常なので」

「言っていることが訳分からなくなってるよ、マリア」



 僕はかなりおかしくなっている。自覚している分だけ冷静であるとは言えるかもだけど、それを含めてもおかしい。



 というか、頭のおかしい僕が体を操っているのでやばい。メェーちゃんも不貞腐れながら頭の上で寝ちゃったし、クトーニアンは索敵に出てるし。



 冷静な僕は、こうして心の中でひきこもっているしかない。重要な時、いつでも出てこられるように。



「くくく...心の中の僕が何か言っていますが無問題です。今は特に魔獣は現れてませんし、ある意味で安全ですからね」



 実際そうなんだけどなあ。緊急事態というものはいつだって考えておかないといけないことなんだ。



「んな事言ってもね。実際この森の中でここまで安全な場所はありませんよ?」



 そうなんだよなあ...



 そもそも神話生物の中でもかなり...強い?やばい?なんかこう、いい表し方が思いつかないけどとにかくすごい生物(シュブ=ニグラス)が仲間ですからね。



 しかも、だ。エジプトの偉大な猫様と地下の支配者が同伴しているという。むしろここからどう危険になれと...なるな。




「なるなあ...」

「ね、ねえ。まさか、マリアって二重人格だったりするの?」

「あはは、そんなわけないじゃないですか。ほら、ここ真っ暗だから」



 だから、肉体が恐怖に染まっていておかしくなっているんだ。なぜ会話が可能なのは...わからないけど。



「そんなことってあるの?」

「恐怖に染まった人間は、時に人間としてありえないような行動も取る。ってどこかの聖職者は言ってた」

「アナ、そんなこといつ聞いたのよ...」



 人格分裂はかなり酷い後遺症だけどね。ただ、何かしらの精神攻撃から身を守るために精神を分裂、本来の精神を殺さないように身代わりの精神を作り出す人間は前世にも少なからずいた。



 ...そう考えると、よく僕の精神は保っているな。明らかにやばい存在が目の前にいるのに。



「ほんとにね...ん?足元に誰か触れている?」



 誰だろう。しゃがみこんで確認してみる。



(...クトーニアンか。何かあったかい?)



 そこに居たのはミミズ。つまりは索敵してくれてたクトーニアンたち。



 そう、索敵してくれた。そして今ここにいるということは、だ。



(リーダーより言伝です。魔獣がこちらに向かってきているとの事)

(距離は?)

(遠いです、が速いのですぐに接敵するかと)

(方角は?)

(あちらの方向から)



 地上に出ている体を曲げて方向を指し示すクトーニアン。なるほど、進んでいた方向からそうズレていない右側かららしい。



(ありがとう。そしたら、そのまま魔獣との接敵までをカウントしてもらっていい?)

(了解です。34、33、32...)



 カウントは結構余裕がありそうだけど、意外と30秒というのは早くすぎていくもの。



 思考の余地はそこまでないだろう。



「魔獣です、警戒を。カウントはしていますから、戦闘の準備をお願いします」

「魔獣?でも私の感知範囲には......いた。あっちからで、しかも結構速い」

「ん、それは目的地に結構近づいた証拠だね」



 各々準備を進める。アナさんは短剣を、メアリーさんは試験管を...試験管?



「メアリーさんは武器を使わないんですね」

「それを貴方が言う?まあ、そうだね。あんまし武器得意じゃなくてさ、だから私はk」

「話の途中ですがカウントします。5、4、3、2、1!」






 瞬間、その魔獣は目の前に現れた。



 ゴツゴツとしたデカい体に茶色の剛毛、黒光りする爪と牙。



 丸い顔には可愛らしい三角形の耳が2対あり、同時に目も4つ。



 若干おかしくなっている部分はあるが概ね熊という生物であろう魔獣は、こちらに来た勢いのまま突進を繰り出してくる。



 もっとも、



「ほっ」



 という掛け声と同時に投げられた薬品によって止まったけど。



 その薬品はどこからか煙を発生させ、一時的に視界を阻害している。



 敵を見失った訳では無いが、このままだと避けられる可能性も高い。そんなことを思ったのか、くまは突進をやめた。



「ガオオオオ!」



 そして咆哮。気合を入れて、相手を怖気付かせる精神攻撃。



 がまあ、それにビビるはずもなく。



 その時点で、僕とアナさんは熊の後ろ側にいた。



 もちろん、僕は既に<魔力撃>のためを行ってる。が、早く動いたのはアナさん。



 無言で振られるその短剣は、いつの間にか暗闇では明るすぎる赤色を纏っていて。



 恐らく攻撃を当てようとしたのだろう。青く光っている爪を振っていたその腕ごと切り裂いた。



 しかし痛みに震える意味は無い。残っている腕で即座に切り返す熊。



 が、その時既に僕は。否、メェーちゃんは既に眼前にいた。



 ボゴァ!



 思いっきり殴られた顔は、首がその勢いに耐えられなくなりちぎれた影響で吹っ飛んでいく。



 首と腕1本が無くなった熊。もちろんだが、そんな状況になって生きることが出来る生命力は持ち合わせていないらしく。



 力尽きたその生命体は、ついに背中から倒れ込んだのだった。



「さて、それじゃ血抜きしなきゃね」



 と言いながら、<インベントリ>から試験管を取り出すメアリーさん。



 クスリの色は、水色。血抜きと言っていたけど...



 熊の死体に薬品をかける。すると、先程まで噴水のように飛び出していた血の吹き出しが止まった。



 ...薬って意外と万能なのかもしれない。

でも万能薬ってないんですよね。


不思議なものですわ。

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