探し物 探す理由
教室の窓を覗き込む。
すると視線の先で、一人の女子生徒が教室の中をうろうろしていた。
彼女とは、昼間に喧嘩したばっかりだから声をかけずらい。
さっきから行ったり来たりしている彼女は、どうやら大切なお守りをなくしたらしい。
それで、授業が終わったのに一時間以上も自分の教室で探しまわってる。
いいかげん諦めればいいのに。
でも、そんな彼女を一時間も見守ってた私も結構どうなんだろう。
無駄の極みだよね。
最初は、すぐに声をかけようと思ったんだよ。
でも、喋ろうと思った時に運悪く校内放送がかかちゃってさ。
こういうのって一度挫けると、後が大変じゃない。
それで、ずるずるこんな感じ。
はぁ、困ったな。
手伝う事も、帰る事もできずにその場で石造の様になっていた私に、彼女の呟きが届いた。
今まで無言だったのに、さすがに疲れたのかもしれない。
「いい加減、見つかってってば」
イライラしてるようだ。
はい、話しかけるきっかけ一つ消滅。
「まったく。今日は嫌な事ばっか起こるんだから」
つづいてのコンボ。
きっかけまたしても消滅。
現実が私に厳しい。
声に出さずため息をついていると、ちょっとしょげた感じの声が聞こえてくる。
「大事なお守りなのにな。二人でおそろいにしたやつなのに」
その時、私は「あっ」といいかけて慌てて口をふさいだ。
それって、心当たりがある。
初詣、彼女と一緒に行ったときお揃いの買ったんだ。
ううん、そうだとは限らない。別の人と一緒に買ったやつなのかも。
けど「これじゃあ、仲直りしずらいじゃん。喧嘩してお守り失くした人が頭下げたって説得力ないじゃん」とか言ってる。
ああもう。
ほんっとうに私ってバカ。
大きく息を吸って、吐き出す。
簡単な事なのにね。
たった一言、一緒に探すよって言うだけなのに。
何やってたんだろう。
そして――。
意を決した私は、教室の扉を開けた。