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AIBO学園恋物語  作者: AIBO学園教育課
2/20

2.ビックイベント

続きましては私、やしかの番です。楽しんでいただけると幸いです。

 朝である。俺にとってビッグなイベント当日である。

 いつもより早めに起きて、髪の毛をいじる。うまくいかない。

 休日にあんなに練習したのに、全然決まらない。

 仕方なく、あまり決まらない髪型で家を出た。いつもは休日にしかつけない香水を付けて家を出た。少しは気分も上がるだろう。




「おはよー、ハル」

 学校に向かって歩いていると、友人の山本に出会った。いつもなら山本が先に学校に着いているが、今日は俺が早く起きたからか、登校時間が一致したらしい。

「おはよ」

「ん?どしたよ元気ねーぞ」

「なんでもねーよ」

「なんでもなくはないだろ。珍しくワックス使ってるし。もしかして香水もつけてない?」

 そう言って俺の髪をまじまじと見つめたり、においをかいだりとせわしなく動く山本。

「そういう気分だったんだよ」

「本当かよー」

「本当だよ」

 許せ山本。今日の俺にはビッグなイベントが待ってるんだ。誰にも知られてはいけないんだ。モブキャラに構ってやれないんだよ。




 チャイムが鳴り、退屈な授業の繰り返し。考えるのは戦国時代のことでも紫式部のことでも動く点Pのことでもない。

 もちろん、今日のビッグイベントについて。俺の脳内にはそれしかない。

 しっかりやれるか、俺。ヘマすんなよ俺。フォローの仕方は大丈夫か。

 そして次に考えるのは……あの子めっちゃかわいい。

 クラスメイトの豊里茜。発表してるときの自信なさそうな声とか守ってあげたくなるし、友達と話してる時の笑顔とか最高。ストレートロングの髪も似合ってる。さらに言うと……。

「なーに考えてんだ岡本春樹。そんな余裕があるなら46ページの問3解いてみろ」

「……はぁい」

 考え事をしていたことが先生にバレた。

 何とか問題を解いて、席に着く。また俺は思考を巡らせる。


 そういえば、駅前のクレープ屋さんが人気らしい。その影響でその近くにある公園はいつも人でごった返しているらしい。

 そうなるときっと落ち着けないだろうから、行くなら駅前から少し歩いたところにあるカフェもいいかもしれない。あそこのワッフルは美味しい。

 その後はゲームセンターでも寄ろうか。プリクラを撮るのもいいだろう。

 最近のプリクラの撮り方の流行りも抑えている。雑誌で見たけど大人気なのは2人でハートを作るポーズ。こう片方の手を……。

「おーかーもーと!今日のお前には心ここにあらずって言葉がお前にピッタリだな。先生もう心が折れそうだわ」

 先生はそう言うと深いため息をついた。クラスが笑いに包まれる。そして俺は笑ってる豊里を見て嬉しくなる。サンキュー先生。助かる。




 昼休みになった。俺は山本と向かい合ってパンをかじっていた。

「ほんと今日のお前どうしたのよ。朝からさー。数学の時も先生言ってたけどなんか浮ついてるぞ」

 山本は自作の弁当をつつきながら俺に尋ねる。

「浮ついてねーし」

 嘘ですごめんなさい本心はとってもとっても浮ついてます。

「浮ついてないんならさ、なんか悩みでもあんのか」

「ねーし」

「嘘つけー!実はあるんだろ?言ってみろよ。進学のことか?それとも好きな子でもできた?俺、絶対にハルの力になるからさ」

 ごめん山本。朝はモブキャラなんて思ってごめん。超いい奴だわ。でもさ。

「悩みじゃないけど、秘密」

 知られてはいけないんだ。




 そしてとうとうやってきた。ホームルーム終了の号令とともにやってきた。

 ビッグイベントが待ち構えている放課後だ。

「ハルー、またなー」

 山本はカバンを持ってすぐ出て行った。所属しているサッカー部の試合が近いと言っていたし、練習にも熱が入っているのだろう。

 俺は帰り支度をして、自分の席に座っていた。1人、また1人とクラスメイトが教室から出ていく。

 そして俺は1人になった。

 ビッグイベントが近づいているという自覚が、俺に緊張感を与える。

 どうしよ、俺ちゃんとできるかな。このビッグイベント、成功させることができるかな。

 ビッグイベントについてのイメージトレーニングはこれまでやってきた。情報収集だってしっかりしたし、今日だって何度もこのことについて考えた。

 今朝髪もセットしてきたし(ただし失敗)

 行く場所も考えたし(ただし一か所に決めきれてない)

 プリクラのポーズだって……(ただしプリクラを撮るかはわからない)

「……あああああ」

 どうしよう、俺、イメージトレーニング失敗してない?

「ちょっと、情けない声出さないの」

 俺の席の横に、女子生徒が一人立つ。

 俺の彼女。豊里茜。みんなには付き合ってるのを隠してる、俺の彼女。

「ほら。女の子を待たせないで。今日もデート楽しみましょ」

「……はい」

「今日は隣の駅のカフェでパフェ食べて、ショッピングモールでワンピース買うの手伝って欲しいな。セールで安くなってるの」

「……はい」

 はい、イメージトレーニング失敗です。いつも通り豊里の発案に俺がついていくスタイルになりました。

「あと、ずっとニヤニヤしてたよ今日。数学の時も怒られてたでしょ。その顔は……」

 豊里の温かい手が俺の頬を包み込む。……そして、押しつぶした。

「その顔は、私だけに見せていてよね。2人の秘密なんだから」

「……ふぁい」

 豊里の温もりを感じる。

 俺のビッグイベント、『俺がリードするデート作戦』は失敗したけど、ああ、大好きだからもうこれでいいや。顔を真っ赤にしてる豊里が可愛いからそれでいいや。


「ハル、これを隠してたのか」

 並んで歩く2人組を、物陰から見つめる山本修平。

「いやぁ、茜のあんな姿初めて見たかも。ダイタン」

 同じく物陰から、山本の横で2人を見つめる女子。豊里の友人の竹下あゆみだ。

 あまりにも怪しい春樹を心配して、山本が物陰で監視していたら、偶然竹下が通りかかり、2人で成り行きを見守っていたのだった。

「え、そうなの?」

「そうよ。テキパキ動く方ではあるけど、あそこまで自分から言わないし」

 興奮しながら竹下は続ける。

「恥ずかしがり屋だから、あんなこといつもならしないって!」

「恋は人を変えるのかねー」

 山本は荷物を持って、その場を離れようとした。

「あ、待ってよ山本君!言いたいことがあるんだけど……」

 ここでもまた、恋が人を変えようとしているようだ。

恋っていいですね。

他の方どうぞ!

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