15.この世界から出たくないから〇〇〇〇
秋風です
書きたかったやつです。ロリキャラ書きたかっただけですすみま
せん。
ねむたぁい。ねたいよぉ。せんせいの話おもしろくないよぉ。
カクンカクンと目を細めながら頭をゆっくり、ゆっくりと上下させている1人の少女。俗に言う舟を漕ぐという状態でなんとか耐えしのいでいるが、いつ完全に目を閉じて『世界』に入ってもおかしくない。
幼く見える背丈の小さな少女ーー安藤 夢はいつもこの調子だ。睡眠時間が足りていないかといえばそうでもなく、逆に過剰睡眠といえるだろう。夕方八時に世界に入り、七時に世界から出される。
世界から出されるといっても自力で目覚ましなどで起きるわけでもなく、隣の家、そして今も隣にいる幼馴染の彼が起こしにやってくる。母親や姉妹が呼び起こすより、彼が起こす方がいいと夢が言うので仕方なく彼が起こしにやってくる。
十一時間の睡眠を夜中に行なっているのにそれでも夢はまだ眠たいのだ。通学中の電車の中でも立ち寝、座り寝。教室に着けばすぐに座って腕を枕にして寝る。授業が始まればなんとか耐えしのごうと努力するが結局、半分以上寝ていて話を聞いていない。だってねむたいんだもん。
そんな夢の横では今もカリカリと夢の分も板書された文字を写している幼馴染の背丈が小さな彼ーー神崎 遊。必ず幼小中高で全て同じクラス、隣の席で毎日寝がちな夢の面倒を見ている。
「……ゆめ、ゆめー。ゆーめ。もう昼休みだよー。お弁当二人分食べちゃうぞー」
微かにだが声が聞こえてくる。世界から少しだけ顔を出してその声の主は隣の遊なのだとすぐに理解した。だから起きた。
目を擦って「んー……」と唸り声を出しながら、目をなんとか開けて遊の姿を確認する。ピンク色と水色の布で包んだお弁当を両手で一つずつ持ってピンク色の方を差し出してくる。
夢はそれを受け取ると慣れた手つきで布を開いて箱を空ける。今日のお弁当のおかずにハンバーグがあることを臭いで確認して夢の機嫌がよくなる。
「ぬふふ~ん」
「ハンバーグほんとに好きだよね。ハンバーグうれしい?」
「うん」
「よかった」
「うれしいから遊のあたまなでなでー」
寝起きの声で喜び返事し、そして遊の頭を撫でる。
その光景は最早日常の一部となっていて、クラスメイト達はそれを見て癒される。学園まで仲の良い兄妹がやってきたような光景。背丈が落ち着いた女子や、ヤンチャなことがしたい男子の中にここまで純粋で清潔な二人なんていないだろう。
二人は今二年生。この行事の噂は学園内でかなり広がっていてそれを眺めにくる生徒もいるぐらいだ。耳を澄ませば聞こえてくる後輩の声が。
「あの二人見てると本当に癒されますねー。美穂先輩は毎日これが見られるなんて幸せすぎませんか?」
「ほんとくろうしてるかいがあるってやつだわー。ずっと見てられるもんあの二人」
「ねー。美穂先輩もあんな感じのいい恋愛できたらいいですねー」
「んー。ん? ちえみ? 彼氏いないの馬鹿にしてるなら殴るぞー?」
幼馴染二人同士のやり取りを邪魔しないように、クラス内では他のクラスメイト同士声を潜めて話している。癒されて語句や語彙が失われつつあるこのクラスで、二人はそんな様子を気にすることなくご飯を話しながら食べる。
大体の話の内容は夢の、世界で見た光景の話でそれに遊が楽しそうに返事をする。でも、話し方はゆったりとしていてスローペースだ。だからだろうか。食事が済んだころに予鈴のチャイムが鳴る。そして遊が弁当を片付けると「おやすみぃ……」と夢が世界に戻る。
すぐに寝息を立てて、笑って、世界を旅しているようだ。
それを見届けると、机の横に掛けてある夢のカバンの中から次の授業の教科書を取り出して置く。ノートも取り出したが、置いた場所は自分の机の上。その後に自分の授業の用意を始める。ノートを二冊広げ、教科書を開いて予習する。クラスメイト達は予習する光景を見て予習を始めた。
ある少年が来るからだ。それはまた、別の機会に見せよう。
そして放課後になってクラスメイト達が下校する中で、二人は居残り、一人は帰りの話の時には既に世界の中で、一人はそんな人を見ている。
起こすことはなく、時間いっぱいまで遊は夢が起きるまで見守っている。
「……んー。遊、どこぉ?」
「ぼくはここにいるよー」
寝言だろうか。目を瞑りながら話かけてきたので一応返事したが、それ以降の会話は、夢の動きはない。自分の腕を枕代わりに顔を伏せて眠っている。
数秒後、またしても寝言なのか夢が話しかけてきた。いや、話しかけてきたと言うより一方的な発言と言い表すのが正しいだろう。
「ゆーう。んー……遊。大好きだよ」
心臓が跳ねたような感覚。唾を飲み込んで速くなる心臓の音。音、音。
また唾を飲み込んだ。まだ心臓の音は速くなって息が漏れる。それを落ち着けようと深呼吸するが息が震えていて、体が僅かに震えて上手く落ち着けない。
これだけ一緒にいるが「好き」と言われたのはハンバーグなどのおかずについてだけだ。遊本人に対して言われたのは初めてで、上手く表現できない。恥ずかしいけど嬉しいこの感覚。その感覚の中で遊は自覚した。好きだと、、大好きだと言われて自覚した。
ーー自分は夢の事が好きなんだと。
チャイムが鳴った。
下校のチャイムが鳴った。
自分の体を揺らされていることに気が付き目を擦って挨拶する。
「おはよぉ」
「……うん」
遊は顔を逸らして返事した。
時計を見た。まだ完全下校時刻までは時間がある。それなのに起こしてくるなんて珍しくて、私は遊を、僅かに開いて瞬きしている目で見ながら聞いた。
「なんかあったの? まだねむたぁい」
「あっ、な、なんでもないよ。時間見間違えちゃってさ、ごめんね。まだ寝てていいよ」
「うん、ならもうちょっとだけねるぅ」
なんでもないみたいだ。
また世界に入るために目を閉じて腕に顔を当てる。んー、まだねむたぁい。
その時、一言小さい声だったが確かに聞こえた。
「ぼくも夢のこと、大好きだよ」
寝れない。目が覚めた。
夢も、先の遊と同様の状況に陥る。だけど、顔はあげない。だってはずかしいから。
寝れない。でも顔をあげて起きれない。恥ずかしい。
いつもならどれだけでも時間があって欲しいと思うのに、今だけは最後のチャイムが鳴ることを望んでる。
寝れない。
顔が熱い。
寝れない。
タイトルの〇の中身はもう分かったと思います。
次の方よろしくです。