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AIBO学園恋物語  作者: AIBO学園教育課
11/20

11.誰より一番

どうもやしかです。

甘い後には辛いものを。

一番を目指したいですよね。

「好きです、付き合って下さい」

 雅ひなは、目の前のクラスメイトに向けてハッキリとそう告げた。

 ひなには自信があった。自分の美に対する意識は誰にも負けない。一人っ子でちょっとした会社の社長の娘で、着るものも化粧道具も美容道具も簡単に手に入る。

 そして、このクラスメイトの美貌なら自分にふさわしいとまで計算していた。

「ごめーん、俺そういう感情あなたに持ってない」

 じゃあ俺行くところあるから、と、クラスメイトは手を振りながら去っていった。



「ありえない」

 ある意味、ひなにとっては死刑宣告と同じようなものだった。

 ひなに告白する男子生徒は少なくない。しかし、自分にはふさわしくない男性ばかりだった。

 身だしなみに気を使っていない生徒。そこらへんに多くいそうな何の取り柄もない生徒。何度か皆にかっこいいと噂されている生徒もいたが振ってきた。

 私にふさわしくないから。私のイメージを悪化させるような人ばかりだったから。

 かっこいいと噂されている生徒は女たらしで有名だったし、何の取り柄もない生徒と付き合いたくない。身だしなみに気を使っていない生徒なんて論外だった。

 だが彼、彼だけは釣り合うと思った。浮ついた噂もなく、高身長の美少年。

 自分なら落とせる。絶対付き合える。ひなには自信があった。

 だが、実際はどうだ。悩みもせず、喜びもせず、淡々と事実を伝えると去っていった。そんなこと、あり得ない。事実を受け止めきれなかった。



 告白した教室に残っているのはひな1人。ずっと立っているのもバカバカしくなり、自分の席に座った。目から涙がこぼれていく。

「メイク……くずれちゃう……」

 ひなはメイクポーチを出した。まだ完璧に崩れていないが、このままだと崩れていくのは時間の問題だった。

 ひなはメイクを直そうとするが、流れる涙が邪魔をする。かろうじて崩れていなかったメイクは、あっという間に崩れていった。

「嘘でしょ……」

 ひなはメイク落としを取り出すと、顔面を拭きとった。そして鏡を取り出す。学校の誰にも見せたことがないすっぴんが鏡に戻る。

 最近できたニキビ跡が少し目立つ。コンシーラーで隠していたのだが、何も隠していない状態だと、よく目立った。

まだ、涙は止まらない。



 最初にあのクラスメイトがいいと思ったのは、彼氏に別れを告げた次の日だった。

 今まで気にはしてなかったが、高身長の、浮ついた噂のないクラスメイト。しかもかっこいい。これ以上ない好条件だった。

 それから数日間追っていた。といっても授業中も休憩中も1人ぼんやりと空を眺めたり寝ていたり、休憩中は図書室に行って寝ていたりと、目立った行動はなかった。友人がいないわけではなく、昼食は友人と食べることが多かった。

 彼女がいるわけでもないようだ。これはチャンス。そう思った結果がこれだ。

 涙を流す羽目になろうとは。悔し涙を流す羽目になろうとは。

 何度も思い出すあの姿。そしてあの無表情な顔。

 涙は止まらない。目を閉じてじっと泣き止むのを待つ。


「雅さん?」

 突然ひなに声をかけられる。同じクラスメイト男子だ。名前は……忘れてしまった。ひなは慌てて顔を背ける。

「こっち見ないで」

「えっ、えっ」

「今すっぴんだから」

「……泣いてる?」

 なぜバレているのだろう。

「なんで」

「声、震えてるし、顔隠してるし」

「……っ」

 指摘されて悔しい。でも事実であったから悔しい。

「話、聞こうか」

「……」

 普段なら、こんな名前も覚えていない人物に自分の汚点を晒したりしない。だが、なんだか今日は調子が狂う。

「メイクだけさせて」

「いいけど……」

「メイク終わるまでこっち見ないで」

 ひなは冷たくそう言い放つと、手早くメイクを済ませた。



「……という訳」

「そうか」

 ひなは、話しかけてきたクラスメイトと向かい合って今までの話をした。淡々と話をしている途中、ひなは思い出した。彼は安浦泰司だ。声をかけられた時思い出せなかったくらい、興味も何もないクラスメイトだった。

「雅さん、振られたのか……辛かったな」

 聞き上手というのだろうか、彼と話すのは話しやすかった。普段ならば言わないような、自分の考えまですべて話してしまった。

「うん……」

「でもさ、俺、雅さんが本当は彼のこと好きだったんじゃないかって思うんだよね」

「え?」

 ひなは、自分とクラスメイトが釣り合うと計算したことも話した。その上でこんな回答が来るとは考えていなかった。

「だって、そうじゃないとこんなに泣いてないよ」

 そう言ってほほ笑む安浦。

「計算してってのはさ、きっかけだったんじゃないかな?」

「……そうかな」

「そうだよ」

「……そうだったんだ」

 ひながそう言うと、安浦は立ち上がった。

「じゃあ、俺は行くよ」

「え」

 ひなは思わず声を出してしまった。なぜか、この時間が終わるのが寂しかった。

「いや、俺がずっといても邪魔かなって思ってさ」

「そんなことない」

 ずっと話していたい、ひなはそう思ってしまった。

「なんで?」

「わかんないよ」

 つい声を荒げてしまうひな。咳払いして誤魔化す。

「話してると、自分の考えが整理されているというか……」

「じゃあ、もっと話そうか」

 笑顔でそういう安浦。世間話から先生の愚痴まで、いろいろなことを話した。

 落ち込んでいたひなも、段々と元気になっていき、最終的には笑うようになった。

「そろそろ、帰らないとね」

「そうね、楽しかった。ありがとう」

 そう言ってお互い立ち上がる。

「元気になってよかった。また話せたらいいな」

 そう言う安浦。

「そうね、話上手もいいステータスよね」

「そういう計算はやめなって」

 そう言って、安浦は苦笑いする。

「そうだったわね」

「でも次は、話していて楽しい人にしたいわ」

 そう言って2人は帰路についた。

ではでは、次はどんな話なのでしょうか。

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