1.あなたを幸せにする為に
はい、初めましての方は初めまして!
私の小説を知ってる人はこんにちは!
どうも!1番手は私ポカ猫が書かせていただきました!
では、本編をどうぞ!
「あなたはいつになったらしっかり課題を提出できるんですか!!」
職員室でいつものように女教師の声が響く。
その声を聞きながら一人の男子生徒が眠そうな顔をしながら、話を聞いているのか聞いていないのか曖昧な返事をしながら突っ立ている。
「ちゃんと話聞いてますか!?」
「はいはい、聞いてますって〜…… バイトが忙しくて課題どころじゃないんですよ」
「あなたは学生!本文は勉強でしょう!!」
女教師の声が更に大きくなり、顔も真っ赤である。
「とりあえず、罰として明日までに課題の提出とこの反省文を書いてきなさい!!話は終わり!」
やっと女教師から開放された男子生徒は、反省文の紙を受け取りふらついた足取りで職員室を出ていきました。
「北向先生も大変ですね。あんな困った生徒の担当だと……」
男子生徒がいなくなった後、男性教師が北向の机にコーヒーをおいて話しかけてきた。
「あ、後藤先生。ありがとうございます。そうなんです、手のかかる生徒で……」
「一度ガツンと制裁を与えたほうがいいんじゃないですか?」
「いえ、私達がするのはあくまで教育です。制裁なんてするのはまた別のことになりますよ」
後藤にそう言い、北向はコーヒーをゆっくり飲みました。
その輪とした態度に後藤は少し頬を赤らめ、そして背を向けます。
「まぁ、北向先生がそう言うなら様子見という形ですかね。では、私は授業に向かいますね」
そう言って後藤は職員室を後にした。
ほとんど人がいなくなった職員室で北向は自身のスマホでメッセージを確認しながら、時折見られる待受に写っている男性の写真に頬を赤らめるのでした。
男子生徒が自身の教室に戻ると、もうすぐに授業が開始されるというのにカップルが仲良くイチャついている。
「よう、斉川。また北向先生からのお説教か?」
「まぁな、そっちは年中イチャついてて飽きないのか?」
一つの椅子に二人で座り、抱き合いながらまさにバカップルである。
「こんな可愛い彼女飽きるわけねぇだろ。でも、北向先生は一生独身だろうな。あれは男できないタイプだわ」
大笑いしながら男子生徒は自分の彼女の頭をなでている。
「人の心配してないで自分の心配でもしたらどうだ?」
「俺らはこれから先もずっと一緒に決まってるだろ」
「勝手に言ってろ」
斉川は荷物を持って呆れた顔でカップルを見下ろしました。
「お前どこいくんだよ?授業はじまるぞ」
「バイトだよ。お幸せにな」
そう言って斉川はバイト先に向かうのであった。
紅葉がきれいな並木道、季節はもう冬になり始め風も冷たくなってきています。
「今日は帰りが遅くなるからこなくていいよっと……」
寒空の下歩く斉川はスマホで連絡を取りながらバイト先を目指していました。
すると、突然スマホに着信が来たのです。
発信者名を見ると斉川の学校からでした。
「はい、もしもし」
「今どこにいるんですか!?」
電話口からは聞き慣れた怒鳴り声が響いた。
北向だ。
「あ、先生やっほー」
「やっほーじゃないでしょ!!学校に戻りなさい!」
「俺これからバイトなんで戻れないです。ちゃんと課題と反省文書いてくるんで大丈夫ですよ」
おちゃらけたようにそんな見当違いなことを言い、あしらうようにしますが斉川は少し嬉しそうに話しています。
「そういうことじゃないでしょ!さっきも言ったけどあなたは学生なのよ!?勉強が本文って言ったでしょ!」
「あーもうバイト先着くんで切りますねぇ」
強引に通話を切った後スマホの電源を切りネットカフェに入ります。
「おはよーございまーす」
「あ、斉川くんおはよう。今日も早いんだね」
「稼がないといけないんでね、美玲さんもはやいんすね」
仕事着に着替えながら、すでに仕事についている先輩の美玲に話しかける。
「今日は何時間なの?」
「今日はここ4時間ここ入って次に居酒屋を夜10時までですね」
タイムカードを切った後、洗い場の食器を片付け始めました。
すると、美玲が斉川の肩を触り耳元に吐息を吹きかけます。
「毎日毎日大変ね。バイト終わったら私の家に来ない?たくさん労ってあげるわよ?」
「美玲さん。俺好きな人いるって言いましたよね」
美玲を振り払い、軽くにらみつける斉川の顔は怒っているようにも見えます。
一瞬たじろいだが、すぐに自分の仕事に戻った。
それから二人は特に会話することもなく、自身の仕事を淡々とこなすのだった。
「お疲れ様でした〜」
斉川がバイト先の居酒屋を出たのは予定の時刻を1時間も過ぎた11時でした。
フラフラと歩きながら、寒空の下を歩く頭上にはその姿を照らすように満月が顔を覗かせています。
バイト先から斉川が一人暮らししているアパートまでは徒歩で30分はかかり、最初の頃は帰りながら周りの景色を楽しみながら帰っていたのですが、今ではバイトの掛け持ちの疲れがたたり早足で帰る日々がつづいいています。
「はぁ……さっさと帰って先生の反省文書かないとどやされるな……」
やっとの思いで斉川が自身の住んでいるアパートに着くと、アパートの隣に一台の車が止まっていたのです。
「はぁぁぁ……」
呆れた声を出し頭をかきながら、斉川はその車に近づいて行きました。
すると、車の中から一人の女性が出てきたのです。
「今日は遅くなるから来なくてもいいて言いませんでしたっけ?北向先生」
「うっ…… だって会いたかったから……」
恥ずかしそうに顔を赤らめる北向は、下を向いて小さな声でそうつぶやきます。
「全く、本当に仕事中とは性格が違いますね。北向先生は」
おちょくるように笑いながら斉川が北向の頭を優しくなでます。
車の中にいたとはいえ、北向の体はとても冷たくなっており触っていなくても震えているのが分かるほどでした。
「二人きりの時は名前で呼んでよ……」
「いやぁ〜だって、今日学校で怖い先生に反省文渡されちゃったから今からそれ書かないとなぁって」
「ごめんって……仕事の立場上そうするしかないでしょ?真だけ特別扱いはできないの!」
若干涙目になりながら、北向は斉川の体に抱きつき弁明します。
「わかってますよ。俺は美保の真面目なところ好きですよ」
「んんん……!わ、私も……真のそういうところ好き……」
そう話す二人の姿は生徒と教師ではなく、一般的な恋人のそれです。
「でも、寒い中ずっと待ってるのは関心しないですね。風邪でもひいたらどうするんですか?」
「だって……」
「だってじゃないです。だから、これ……あげます」
そう言って斉川が北向に渡したのは一本の鍵でした。
「これって……」
「うちの合鍵です。これからはもし待つならこれを使って部屋の中で暖かくして待っててください」
「うん!わかった……!」
そうして斉川は北向の手を引いて自分の家に入っていきました。
北向が彼の家から出てきたのは日の出過ぎでした。
「課題どころか反省文もやってきていないってどういうこと!?」
本日もまた職員室に北向の声が大きく響きます。
怒られているのはもちろん斉川です。
「いやー昨日は夜ちょっと事情があってどっちの手につかなかったんですよ……」
いつもどおり眠そうにしながら弁明をする斉川ですが、顔は妙に生き生きしているようにも見えるのです。
「ほら!!反省文一枚追加!課題も必ず今日中にやって来ること!!」
「はいはい、今日中にやってきますよ」
北向から反省文をまた受け取り、帰ろうとした斉川ですが何かを思い出したようにまた北向のところに戻って耳打ちをします。
「寂しがりやの美保先生のために呼び出す口実作って上げてるんですから感謝してくださいね?」
それを聞いて、顔を真っ赤にする北向とニヤニヤと笑いながら帰ろうとする斉川。
「さ……」
「さ?」
「3倍!今日の課題は3倍です!!3倍3倍3倍!!」
再び職員室に大きな声が響き渡ります。
この二人の恋、彼が卒業するまでまだまだ長く続きそうです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次の短編は私以外の誰かが書きますので楽しみにしててください!