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第九十六話~予定~


第九十六話~予定~



 無事に依頼を完遂させたあとの自由時間で、不意に俺は宇宙船の数でも増やそうかと思い立つ。そこで無意識に呟いた言葉を偶々たまたま聞いていたシュネが賛同したこともあって、宇宙船を建造する為のドックについての情報収集をギルドにて行ったのだった。





 ギルドで首尾よくドックについての情報を得らたわけだが、しかし今回のことで問題が一つ浮かび上がったと言えるだろう。それはズバリ、金銭の問題だ。

 今回のように宇宙船を建造するたびにドックを使用する為に高い賃貸料を払っていては、出費がかさむことはなはだしいといった事態になることは間違いない。ならばその旨を、解消する必要がある。そこで何か方法でもないかとシュネに尋ねると、彼女は少し考えてから口を開いたのだった。


「ある……と言えばあるわよ」

「本当か? どんな方法だよ、シュネ」

「拠点を得ればいいのよ。フィルリーアでもそうだったでしょう?」


 まぁ、確かにそうだな。

 シュネの言った通り、拠点があった方がいいと言えるだろう。それぐらいは、流石に分かる。実際、俺たちが使用しているカズサなどの宇宙船も、先代のシーグヴァルドが残した研究所で建艦したのだ。

 とは言うものの、今いるのは宇宙空間である。いきなり拠点を作ると言っても、そう簡単にできるものじゃないってことぐらいは幾ら何でも想像がついた。だからこそ俺は、その点をシュネに指摘したわけだが、すると彼女は至極あっさりと作ればいいと言い切る。その気軽とも感じる言葉に反して、言葉の持つ意味はとてもではないがそうとは思えなかった。

 言葉にすれば拠点を作る、ただそれだけだろう。しかし実際には、そう簡単に実行できることじゃない。何より拠点を作れば、どうやっても行動が制限されることになる。自由気ままに旅をしたいと思っている俺としては、制限何てあまり受けたくはないのだ。


「拠点が大事と言うのは、まぁ分からなくはない。だけど拠点などを作ったら、以降は動き辛くならないか?」

「いいえ。必ずしもそうだとは言えないわよ、シーグ。だって……機動要塞を作ってもいいのだから」

「……え? 機動要塞……今、機動要塞って言ったか? シュネ!!」

「う、うん」

「そうかぁ。機動要塞かぁ」


 ああ、そうだな。確かに、シュネの言った通りだ。

 機動要塞なら、問題はないだろう。何せ、自前で動いてくれるのだ。これなら、行動の制限を全く受けない……とは言わないが、大分軽減する。それに何より、ロマンだろう機動要塞という代物はさっ! 

 というわけで俺は、まだ見ぬ機動要塞に思いを馳せてしまったのである。

 いいよなぁ……機動要塞。その意味も、言葉が持つ響きも


「だけど、シーグ。流石にすぐに、というわけにはいかないわ。それこそ、色々いろいろと足りないものがあるから」

「そ、そうか……」


 シュネの言葉を聞いて、爆上がりしたテンションが一気に下がるのを感じていた。

 ド畜生!


「だから、拠点を作る前に工作艦でも建艦しましょうか。順番は、戦闘空母を建艦したあとになってもいいけれど」

「工作艦ねぇ……ところで、シュネ。工作艦って、何だ?」

「え? あ、知らないの?」

「知らん」


 工作などと言われても、俺がパッと思いつくのは学校の授業で受けた図画工作とか小学校時代の長期休暇、ぶっちゃけて言えば夏休みに出た宿題の工作、それぐらいだ。

作ったよなぁ、本立てとか。

 と、それはそれとして、今は工作艦についてだ。名称に艦とつくぐらいだから、船なのだということぐらいは疎い俺でも分かる。しかしながら、その工作艦がどういったたぐいの船なのかが見当がつかない。所詮、俺には、軍事的な知識などあまりないのである。

 これが、戦艦や巡洋艦や駆逐艦とかならばまだ分かる。だけれども、それ以外の艦種となるとあまり想像できないのだ。何せ俺は、コルベットとかいう船のランクもよく分かっていなかったのである。シュネから説明を受けたことで、今は理解している。けれども、もし説明を受けていなければいまだに分かっていなかったかも知れない。ゆえに今回も、俺はシュネに工作艦についての説明を俺は求めたのだった。


「そうねぇ……要は移動工廠かしら」

「移動……工廠?」


 しかし、シュネからの言葉もすぐには理解できなかった。

 それゆえに俺は、もう少し具体的で分かり易いい説明をお願いする。するとシュネは小さく溜息をついてから、頷くと改めて説明を始めた。その話を簡単にだが纏めると、整備や修理などが行える艦船のことを工作艦と言うらしい。同時に工作艦は、艦内に旋盤などの工作機械も搭載するので、軍需品の開発や生産も可能だとのことである。だから工作艦は、の別名を持っているのだそうだ。


「それと工廠というのは、軍直属の軍需工場のことよ」


 ついでの注釈とばかりに、シュネは工廠の意味について教えてくれた。流石だ、首を傾げつつ漏らした言葉の意味を正確に理解している。実は、工廠の意味もよく分かっていなかったのだ。

 それだけに、補足説明は有難かった。


「なるほど。それで、工作艦が移動工廠の別名を持っているのか」

「そういうことよ」


 シュネのお陰で、工作艦という艦種については一応理解した。それについては理解したのだが、そこで疑問がある。どうして工作艦が必要なのか、それについて分からない。将来的な話になるが、どうせ機動要塞を建造する予定があるのだから、そちらを建造することで全てをまかなってしまえばいいと俺には思えるからだ。

 その疑問をぶつけてみると、寧ろわたくしたちだからこそ工作艦があった方がいいと言うのがシュネの出した答えである。その言葉に対して不思議そうに俺が首を傾げると、彼女がさらなる説明を続けたのだ。

 まず機動要塞についてだが、それこそいつになれば建造に着手できるか現時点で皆目見当かいもくけんとうがつかない。材料という点でもそうだし、費用という点でも同じだ。そこで、それまでの繋ぎとして工作艦があった方がいいというのがシュネの考えとなる。

 俺たちが乗船している船だが、この銀河で普通に流通する艦船と比べて完全に一線を画している。消耗品のような物ならば、まだ共通性があるからいい。だが宇宙船の核心部分、即ちエンジンなどの主要部分や船体に使用する資材となると簡単にとはいかないかも知れないからだ。

 幸いなことに、宇宙船の主要部品で損耗したという話はない。それに、予備部品もあるのでいまのところは問題とはならないのだ。しかしいずれは、問題が噴出してくる可能性がある。それぐらいは、機械などといったハードに疎い俺でも理解することはできた。

 しかしその懸念も、工作艦があれば大分薄れる……らしいとのことである。

 本当か?


「シュネ、それは、何でだ?」

「えっとねぇ、シーグ。もしかして私の話、聞いていなかったの? 工作艦は、移動工廠なのよ」

「えーっと。工廠は確か軍需工場のことだったから……ああっ! そうか!!」


 要するに、色々いろいろな物品を自前で揃えられるということだ。勿論、全てを工作艦があれば揃えられるとは思ってもいない。だが、特殊な物も含めて様々さまざまなな物品が自前で調達できるとなれば、動き易くなることは間違いないのだろう。そう考えてシュネに伝えると、彼女は笑顔を浮かべながら頷いていた。


「そうシーグ、そういうことよ」

「なるほど……だったら、戦闘空母を建造するより工作艦を先に建造した方がよくないか?」

「正直に言えば、そうね。ただ、後先が逆になっても、金銭以外ではそんなに困ることもないわ」

「つまるところ……シュネは、どっちでもいいと言うわけか?」

「そうとまでは言わないわ。だけど、建艦する順番に関しては、それほどこだわっていない。ただ、それだけよ」


 いや。

 それって、建造する順番はやっぱりどっちでもいいということじゃないのか?

 少なくとも、俺にはそう思える。そしてそれは、俺の気のせいではないだろう。だけどその点を突っ込むと、何かと理屈をつけて論破されそうなので黙っておくことにする。俺もわざわざ、シュネに論破されたいとは思わないのだ。


「じゃあ、先に建造するのは工作艦にしよう」

「あら。いいの? さっきも言ったけど、本当に順番はこだわっていないのよ」

「ああ。それは分かった。だけど、工作艦が先でいい」


 元々、追加で宇宙船を建造しようなどと考えたのは俺の思い付きだ。それならば、建造に掛かる経費など、減らせるところは減らした方がいいのだろう。だからこその賛成だったのだが……そこで俺はシュネに肩を叩かれることとなったのである。


「そう。じゃぁ、頑張ってね」

「頑張るって……何をだ?」

「勿論、決まっているでしょ。お金儲けよ、お金儲け。お足は幾らあっても、困ることはないのよ」


 お足……つまるところ金か。

 確かに金と言うか資金がないと、何にもできない。だからこそ、ドックがある星系に行くまでのついでとして依頼を受けたのだ。

 とはいえ、新たに一隻建造することを考えれば今いる星系から遠くまで出向くというのもあまりよろしくはない。そこで移動した先の星系、もしくは近隣の星系に出没しているだろう賞金首を狙うのが妥当な線と言える。それ以外で言えば、レアメタルを狙うという手があるにはあった。

 しかも幸いと言っていいのか分からないが、目的地の星系から見れば辺境というかラトル共和国の国境が近い。流石に国の領外に存在する小惑星とかからの採掘であれば、文句を言われることもないだろう。だから、そこからレアメタルなどを得ていいのだ。

 もっとも、そこまでするよりは近隣で宙賊狩りにいそしんだ方がいいし、はっきり言って手っ取り早い。何といっても、国境を越えるわけではないので、移動距離が短くて済むのだ。


「分かった、シュネ。宙賊狩りでもするよ」

「方法について任せるわ。だけど、ラトル協和国内でレアメタルの採掘だけはやめておきなさい。もし行うなら、国の外でね」

「わーってるよ。俺も盗掘で犯罪者など、ご免だ」

「そうね。ちゃんと分かっているなら、いいわ」


 実は宙賊の手口だが、主に二つ存在している。一つは、宇宙空間を航行中である民間船や貨物船などを襲って荷を頂戴するという手だ。もっともこの狙われた荷についてだが、実は搭乗している人も含まれていたりするのでたちが悪い。

 襲撃した船に搭乗していた人物がもし金持ちだったならば、身代金も期待できる。そして金持ちでなかったとしても、売ることができるのだ。ただ、殆どの国家で、法律上は人身販売やそれに類する行為は禁止されている。しかし、蛇の道は蛇というわけではないが、裏ビジネスは存在する。その裏ルートへ売ってしまえば、身代金を得られなくても金を得ることができるのだ。

 そしてもう一つの手口というのが小惑星などからの採掘、いわゆる盗掘となる。本来なら小惑星は、国かもしくは星系の所管となっている。だが、小惑星等が存在している星系で全てを把握できるのかと言われれば、実質的には無理だ。

 数が多いことが主な理由なのだが、その隙を狙って宙賊は盗掘を行う。彼らは盗掘行為で得たレアメタルを、今度は闇商人に流すのだ。無論、判明すれば公的権力からの取り締まり対象になる。しかし通常は、余程あからさまでもない限りは半ば黙認されていた。いわゆる、表もあれば裏もあるというやつである。表裏一体、奇麗ごとだけで社会は回ったりしないのだ。

 因みに、シュネが止めておいたほうがいいと忠告したのがこれとなる。ただ、俺も初めからラトル共和国内での採掘などする気はなかったので問題とはならないのであった。

別連載を始めました。


タイトルは「劉逞記」

古代中国、漢(後漢・東漢)後期からの歴史ものとなります。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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