第八十七話~駆除 二~
第八十七話~駆除 二~
ハイパードライブを終えて間もなく奇襲を受けた俺たちであったが、キュラシャーを発進させて戦艦カズサと大型駆逐艦の防衛を構築しつつ、俺たちも出撃するのであった。
カズサから発艦した俺は、愛機を一気に加速させる。カズサと大型駆逐艦の防衛線に関しては、シュネに任せてしまえばいいので気にしていない。そのままある程度敵へ近づいたところできモニター越しに見ると、違和感が二つある。一つは、敵の動きだ。先程のように先制攻撃をしてきた以上、襲う気満々だった筈である。つまり相手は、やる気に満ち溢れていたのだ。
それであるにも関わらず、敵の動きに精彩というものが感じられない。どちらかというと、動揺していると言っていいだろうか。そう判断してしまうぐらいに、動きが変だった。
そしてもう一つ違和感だが、敵の中心にいる一隻の宇宙船がおかしいのだ。その宇宙船自体の大きさは、カズサの僚艦のように大型設計された駆逐艦ぐらいかもしくはぎりぎり軽巡洋艦に届くぐらいだろう。しかし、宇宙船に取り付けられているものが変なのだ。
その宇宙船には、船体に対して明かに大きすぎるだろうと判断できる砲が取り付けられている。その為、宇宙船としてもバランスが悪い。その様はまるで、まず主砲が作られてから後付けで宇宙船が取り付けられたのかと思えてしまうぐらいである。それぐらい、船体とのバランスが悪かったのだ。
「何だ、あれ……シエ。あの宇宙船、どう思う?」
「明らかに本体となる宇宙船の大きさに釣り合っておりません。恐らくですが、強引に取り付けたものであると推察します」
愛機となるツヴァイのコンピューターとなるシエに観測をさせた結果、船体部分の大きさだが大型駆逐艦ぐらいはあるらしい。その宇宙船に対して、不釣り合いなと言いきれる大きさを持つ砲を強引に接続した結果、あのような大きさの割に過剰な武装を積んだ宇宙船ができ上がったようなのだ。
「あまり軍事的知識はないんだが、あれってどうなの?」
「明らかにトップヘビーだと思われますが、ここは宇宙ですのであまり関係ありません」
宇宙では、上下左右などが関係ない。だから地上では何かの拍子で転覆するような船であったとしても、無重力ということも相まってあまり影響は出ないらしいのだ。要するに、重力などの外部要因を考慮する必要がないのである。その為、あのようなバランスが悪い過剰武装も容認されたということだった。
まぁ、だからといって、俺はやってみたとは思わない。何せ、すごく格好悪いのだ。
「ふーん。ということは、先制攻撃はあの船の砲から発射されたのか?」
「確定ではありませんが、可能性として十分にあり得るかと思われます」
なるほど。
だが、カズサはその先制攻撃を弾いたのだから問題はない。連射でもされたら、もしかした問題が出たかも知れないが、あのような過剰武装を満たすだけのエネルギーをたかが宙賊程度が確保できるのかと考えた場合、首を傾げてしまう。それでも時間を掛ければ再チャージできるかも知れないが、戦場でそんなことを悠長にやっていれば撃墜されかねないだろう……ああ、だから最初に使用したのか。
もしかしたら、脅しも兼ねていたのかも知れない。こちらには、これだけの武器があるのだと。しかし損害がゼロである以上、意味はないのだが。
「まぁ、いいか。腑に落ちない点もあるが、そんなことはあとで考えればいい。今は、やるべきことをやるとしよう。シエ、あの不格好な船から叩くぞ」
「了解しました」
幸いなのかどうかは分からないが、敵の艦艇はさほど多くはない。不格好な船の他には、十隻ぐらいだろう。だが、基本的に少数で襲う宙賊のやり口からすれば、多いほうかも知れないが。
取りあえず、手にしているライフルで攻撃しようかと考えた時、ビルギッタの乗るキュラシエ・ファルケⅡが到着する。それから間もなく、祐樹たちもそれぞれの愛機に乗って到着した。するとその祐樹たちから、あの大型砲を取り付けた不格好な宇宙船に関しての問い掛けがされたので、シエの観測結果と俺の考えを併せて告げておいた。
「なら一斉に……は無理か」
祐樹がそう言った理由は、勿論ある。それは、敵の動きだった。俺がこの場に到着した時は、攻撃が弾かれたという衝撃から立ち直っていなかったのか、敵は動揺していたように見えていたことは前述している。しかしながらその動揺も収まったらしく、敵が行動を開始していたからだ。
不格好な宇宙船を除いた半分の宇宙船がその場に残り、残りの半分がカズサの方へ向かっている。キュラシャーを展開し終えているので、問題はないだろう。だが、心配していないわけでもないのだ。
「祐樹。お前たちは、カズサの方へ向かった奴らの相手をしてくれ。俺たちは、あの宇宙船を叩いてくる」
「……分かった」
祐樹には少し不満があるようだが、これも仕方がない。何せ現在稼働しているキュラシエシリーズの中で、一番の重武装を誇るのは俺の駆るキュラシエ・ツヴァイなのだ。その点について祐樹も分かっているからこそ、不満気ながらも了承したのだと思う。少なくとも、そう思うことにした。
間もなく、祐樹は舞華や俊やサブリナ。それと、俺たちと行動を共にするようになってから、護衛も兼ねた付き人となるガイノイドやアンドロイドが操るキュラシエ・アインスやキュラシエ・ファルケⅡを引き連れて、カズサへと向かっている敵を討つ為に接近していく。一方で残った俺は、オルやキャスの兄妹やセレンとクルドが操るキュラシエ。そして、ビルギッタたち付き人が乗る機体を引き連れて、接敵したのだった。
過剰だと思う武装をしている敵の宇宙船だが、やはり機動は悪いようで反応は鈍い。となれば、まずは周りに展開している宇宙船が相手ということになる。操るツヴァイの速度は緩めずに接敵した俺は、レバンティライフルからの一撃を放つ。するとライフルからの攻撃は、敵船が張るエネルギーシールドによって遮られる。しかし次の瞬間には、そのエネルギーシールドをライフルの一撃が破壊して標的の船体を貫いていた。
このエネルギーシールドだが、宇宙船ならば基本性能として備えている。実際、クルドが乗っていた宇宙船にも装備されていたのだ。基本的に、エンジンの出力が高いほどシールドはより堅固になる。そして俺の乗るツヴァイと比べた場合、敵の宇宙船の方が大きいので普通ならば一撃でシールドを破壊しただけでなくそのまま船も撃破するなどあり得ない。しかし、実際は易々と破壊して撃破している。その為か、敵の動きが不規則になっていた。
そこに、オルたちが到着する。その直後、間髪入れずに攻撃が加わる。オルが乗るアインスのライフルだと、敵の張るシールドは破壊できるが船体そのものには致命傷を与えることは難しい。しかしファルケⅡの持つ大型魔力キャノンであれば別で、そちらで攻撃をすればシールドを破壊できるだけに留まらず、標的にも中破に相当する損傷を与えることができた。
これがもし、エンジンなど重要区画であったならば、大破か撃墜判定だったと判断できるだけの一撃となることは間違いない。その為か、彼我の大きさは別にして明らかに俺たちの火力の方が大きいと判断したのだろう。シールドこそ破壊されたがたまたま小破程度の損傷しか受けなかった敵が、全力で逃げに入っていた。
あっという間に自分が操る宇宙船以外が深刻なダメージを負わされたことを考えれば、寧ろ彼の行動は英断だと言っていいかも知れない。しかし、それを見たセレンがすぐに追い掛け始める。同時に彼女付きとなるガイノイドのファンサも、続いていた。
≪シーグ。追撃を掛けるわ≫
「分かった。ただ、無理はするなよ」
≪当然でしょ。あたしはこれでも、元シルバーランクの冒険者よ。引き際を見誤る、何てことはしないわ≫
それだけいうと、セレンは通信を切っていた。
そちらに関しては任せるとして俺たちが相手するのは、逃げそこなっている残りの敵だ。この場に残っているのは都合三隻となるが、そのうちの二隻は既に損傷を負わせられている。その被った損害度は、よくて中破判定だろう。その二隻に関してはオルとキャスとアリナに任せるとして、俺はビルギッタ共にまだ無傷であるバランスが悪い宇宙船に止めを刺すことにした。
ツヴァイの最高速度で近付いたのだが、流石に気付いたようで敵から反撃がくる。だがしかし、その攻撃は搭載している船体とは不釣り合いな大型砲によるものではなかった。しかもこの大型砲は、固定砲らしい。構造上、艦首方向にしか撃てないようだ。
それでは何が攻撃しているのかというと、近接用の小型砲となる。曲がりなりにも船体は大型駆逐艦ぐらいの大きさを持っているので、数は多くなくとも小型砲を装備していたらしい。
しかしその程度の攻撃では、こちらを捉えるなどできはできないのだよ。
俺は最小限の動きで避けつつ接敵すると、そこでツヴァイの形態を飛行から人型へと変更する。そのまま、パイルバンカーを起動して敵船の艦橋部分へ狙い定める。その直後、腕に装備されている大型盾の裏から杭が放たれ、艦橋どころか船体そのものを貫通していた。
「流石はパイルバンカーだ」
大型駆逐艦クラスの宇宙船を一撃で破壊したことに感嘆しながらも俺は、即座にその場から離脱。すると間もなく、標的となった宇宙船は爆散した。このあとに、残りの二隻もオルとキャスの攻撃で撃破されたので、戦いは終了した。
因みにカズサの方へ向かった敵船だが、俺たちが破壊した宇宙船と同じ運命を辿っている。そもそもカズサと大型駆逐艦は、出力の違いはあっても同じ防御機能を有している。だからこそそちらへ向かった宇宙船程度の攻撃があったとしても傷一つつくことはない。その上、艦を守っているキュラシャーもある。これで俺たちの旗艦となるカズサを落とすなど、余程のラッキーショットを連発でもしない限り、まず無理な筈だ。
もっとも、カズサに接敵する前に祐樹たちに追い付かれて撃破されたらしいので、なおさらに問題にはならなかった。
なお、セレンとファンサの追い掛けた敵宇宙船だが、こちらも同様の末路を辿っている。何せ逃げた宇宙船より、ファンサの乗るファルケⅡの速度の方が上だったらしい。その為、追いついたファンサが牽制して敵を足止めしたところにセレンが追いついたので、これを撃破したとのことだった。
その後、俺はセレンたちが撃破した宇宙船の分も含めて戦場をサルベージしていく。回収した物に関してはあとで調べるとして調べることにして、先に依頼をこなすことを優先することにした。
その後、俺たちは、無事に依頼品のレアメタルを引き渡して報酬を受け取る。ある意味で敵襲は想定内ではあったが、それでも殆ど被害を受けずに撃破したことは悪くない。何より、宇宙に出て初の依頼を成功したことに、俺は胸を撫で下ろしていた。
何はともあれ、本当によかったよ。無事に依頼をこなせて、さ。
奇襲してきた宙賊を、討ちました。
奇妙な船と一緒に、ですよ。
ご一読いただき、ありがとうございました。




