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第八十六話~奇襲~


第八十六話~奇襲~



 ラトル共和国の衛星国となるグリット国で、依頼を受けた俺たち。出発するまでの間に関しては、自由行動としたのだった。





 依頼を受けた翌日、ステーションコロニー内にあるギルド直轄の飲食店で、俺はシュネと食事をする。祐樹たちが到着するまでまだ時間があったので、ちょっとしたデートのようなものだ。

 その食事も終わってまったりとした時間を過ごしていると、ネルから連絡が入る。祐樹たちが到着したのかなと思って出ると、何でもギルドからの連絡らしい。それも、急ぎの用件らしい。全く思い当たらないので、訝しげに首を傾げつつも了解する。その後、ギルドに連絡を入れると、応答した受付嬢からやや慌てたように問い掛けられる。その問い掛けとは「まだ、荷を積めますか?」であった。

 問われた意味が分からず首を傾げながらも、俺は可能であることを伝える。すると受付嬢から、どれくらいまで可能なのかと重ねて問い掛けられた。受けた依頼の荷は、それほど大量というわけでもない。しかもあまり大きい物がなかったので、まだ余裕はある。その旨を伝えると、安堵したかのような雰囲気が受付嬢に見受けられた。


「一体、何があった?」

≪実は一つ、依頼をお願いしたいのですが≫

「え? しかし、既に依頼を一件受けているぞ」

≪勿論、分かっています。ですから、追加でお願いしたいのです≫


 どういうことかと思いながら話を聞くと、どうもラトル共和国へ急遽レアメタルを大量に運ぶ必要があるらしい。ただ、最短コースとなる航路をとった場合、宙賊が多数存在する地域も通過しなければならないらしいのだ。

 その上、大型の輸送船を擁するギルドメンバーがこのステーションコロニーに停泊していない。そこで、大型の船を所有している俺たちへ話を持ってきたのだそうだ。


「話は分かった。だけど、今受けている依頼はどうするんだ。まさか、放り出していいわけじゃないだろう」

≪はい。そちらもお願いします。方向は、同じですから≫


 大体の事情は分かったが、何とも無茶な話だ。

 全く依頼を受けていないというなら、まだ分かる。だが幾ら緊急だからといって、依頼を上乗せしてくるとか普通なら考えられない。その点を突っついてみると、はぐらかすかのように受付嬢は笑みを浮かべている。しかも彼女が浮かべている笑みは、酷く乾いているふうに見えた。


「この依頼、もしかしたら強引にねじ込まれたのかも」

「ねじ込むって、だれがだよ」

「依頼した企業、もしくは国か国に準ずる存在」


 隣で端末を覗き込みながら話を聞いていたシュネの言葉が聞こえたのか、受付嬢がピクリと反応する。よく見ると表情は変わっていないように見えるが、頬は引きつっているし汗もかいているように見える。彼女の反応を見れば、シュネの言葉に間違いがないというのが容易に判断できた。


「どうする? シュネ」

わたくしはどちらでもいいわ」

「そうか。うーん、報酬が多いに越したことはないよな……よし、受けよう」

≪ありがとうございます。詳細はこちらで≫

「了解した」


 受付嬢との通信を終わらせたあと、シュネを促して会計へ向かった。

 基本的に、金銭のやり取りは行われない。電子決済が当たり前なのだ。いわゆる、キャッシュレス社会となる。その上、ギルドに所属している者がギルド直轄の運営店で飲食や買い物をした場合、一割から二割引きで利用できるという特典もあるので利用をした方がお得であった。

 決済を終えた俺とシュネは、その足でギルドへ向かう。道すがらネルに連絡を入れて、詳細を伝えておいた。暫くのち、ギルドに到着したので中に入る。先程話をした受付嬢がいる窓口で話し掛けて詳細を聞いたあとで、緊急という依頼を正式に受けたのだった。

 その後、ギルドの建物を出て船へ向かう。やがて到着した俺は、何とはなしにカズサを眺めた。傍から見ると、カズサが戦艦だとは到底思えない。パッと見たところ、武装が見当たらないからだ。


「仕様だとは言え、戦艦には見えないよな」

「見た目、武装が皆無だからね」

「だけど戦えば、半端ない戦闘力を有する船だから詐欺だよな」

「ウサギの皮を被った狼、とでも言って欲しいわ」

「狼ぐらいで済めば可愛い話だけどな」


 とはいえ、自分たちの戦力が敵より上というのは実にありがたい話だ。楽に勝てるのならば、それに越したことはないのだから。

 そろそろ乗り込もうかとシュネに声を掛けてから搬入口の方を見ると、既に追加依頼分の運び入れが行われている。元々、カズサは戦艦なので、積載量自体は同じくらいの大きさを持つ輸送船には及ばない。しかし大きさが大きさなので、それなりの量を船内に抱え込むことができるのだ。その搬入されるさまを横目で見ながら、俺とシュネは搭乗口より乗り込みブリッジに向かった。

 カズサのブリッジ内では、艦橋担当の者たちが忙しそうに働いている。その様子を、艦橋上部にある自分の席から眺めていた。


「それでネル。あとどれぐらい掛かる?」

「およそ半日も掛からずに、積み込みも終わって出港できるかと」

「それで、祐樹たちは?」

「間もなくかと思われ……今、ステーションコロニー内に到着しました」


 どうやら、祐樹たちも惑星上から戻ってきたらしい。オルとキャス、セレンとクルドは昨日のうちに戻っているので、これで全員が揃ったことになる。となれば、あとは彼らの到着を待つだけだ。既に同じステーションコロニー内にいるので、何らかの事故があったとしても対応できる。何より不測の事態を考えたところで、どうにもならないのだ。

 それから暫くしたあと、祐樹たちの到着が伝えられる。その彼らも、カズサの艦橋へと入ってきた。


「ただいま」

「おう」


 戻った祐樹たちは軽く挨拶をすると、各々おのおのが艦橋にある自分の席へ腰を降ろしている。因みに俺たちの席は、二段ブリッジの上部に集中していた。

 兎も角、全員が揃った艦橋で、雑談などをしつつ時間を潰す。するとネルから、追加依頼分の搬入が終了した旨が伝えられる。その言葉に頷くと、艦橋下部にいるオペレーター担当のガイノイドが監理局へ出港の許可を得る為に連絡した。まもなく監理局から許可が下りたので、カズサは僚艦の大型駆逐艦と共にステーションコロニーから発進したのであった。



 暫く通常航行を行い、ステーションコロニーからある程度離れるとハイパードライブを使って超光速運転を行う。なおハイパードライブ時に宇宙船は、ハイパースペースという特殊な空間へ入ることになる。そのハイパースペース内だが、通常の宇宙空間ではないので星などは全く見えない。代わりにというわけではないが、派手目な光がハイパースペース内を乱舞している。始めて見る分にはいいのだが、何度も見るとそのやや極彩色の光景に飽きてくる。その為、今は誰も見ていなかった。


「あとは、このまま向かえばいいな」

「問題が起きなければね」


 シュネの言葉に、俺は自分の後頭部を掻いた。

 確かに、問題が起きる可能性はある。もし問題があるとすれば、ハイパースペースから通常空間へ出る時ぐらいだろう。基本的に宇宙航海図に乗っているような決まった航路を使う場合、ハイパードライブが終わる地点というのは大体似たり寄ったりとなる。その為、その近隣で待ち構える宙賊というのも中にはいるようなのだ。

 因みに、ハイパースペース内に留まっている時間だが、今回の場合は三日ほどになる。その後、通常空間へ戻ってから大体半日ほどすれば、緊急依頼の受け渡し先となるギルドの支部がある。そこで荷を渡せば、緊急依頼はそれで終わりとなるのだ。

 そんな俺たちの工程だが、順調にハイパースペース内を移動していた。やがて通常空間へと戻る地点へと差し掛かったとネルから報告がある。するとそのタイミングで、シュネがある提案をしてきた。

 その提案とは、宙賊への警戒だ。彼女は、先に挙げた宙賊の待ち伏せを警戒しているらしい。実はシュネから、今回の仕事に当たって既にある提案を受けている。それはハイパードライブを使っての移動ではなく、ワープを使っての移動だった。急ぎの仕事であることだし、掛かる時間に関してもワープを使った方が早く到着できるからというのが彼女の言い分だった。

 確かにハイパードライブとワープを比べた場合、圧倒的に後者の方が早く目的地に到着できる。だが、緊急依頼とはいってもハイパードライブでも十分に間に合う。ならば、わざわざワープを使うまでもない。そう俺が判断して、ハイパードライブによる超光速航行を行ったのだ。

 それは置いておくとして、今はハイパードライブ終了後についてである。シュネから出た折角の提案であるし、前回は俺が提案を却下している。警戒しすぎのような気もしないではないが、慎重なことが悪いわけじゃないのもまた事実だった。


「うーん……まぁ、いいか。分かった、シュネのいう通りにしよう」


 その後、シュネの言った通りカズサと大型駆逐艦は準戦闘態勢へと移行していた。

 その準備を終えてから間もなく、ハイパースペースより通常空間へと出る。その直後にはシュネが周囲の索敵を命じたのだが、すぐにネルから警告が入った。


「高エネルギー反応。攻撃されました」

「ちっ! まさか、シュネの懸念が現実になるとは! それで損害は!?」

「ありません。全て屈折させました」


 どうやら重力魔術による防御効果で、上手じょうずに敵の光学兵器を屈折させたようだ。とはいえ、常時重力魔術を展開しているわけじゃないので、いつでも上手くいくわけではない。今回はたまたま、シュネの提案があったから問題なかっただけである。そうでなければ、間違いなく直撃を受けていただろう。

 だからといって、即撃沈となるわけではない。何といっても、宇宙を航行する船である。カズサにしても僚艦の大型駆逐艦にしても、しっかり装甲はあるのだ。寧ろ、装甲はかなり分厚く作ってあるらしい。この辺りは、魔術が全く使用できない領域に突入するかも知れない点を考慮したシュネが、万が一を考えて建艦したからだった。


「ちっ! 俺の判断ミスか……済まない、シュネ」

「詫びならあとでいいわ! それより、迎撃よ」

「そうだな。それじゃネル、キュラシャーを出せ」

「了解しました」


 俺の指示を受けて、ネルがキュラシャーと名付けた無人機を緊急発進させていた。

 この無人機だが、今はあまり使わくなったキュラシエの初代機と同型となるキュラシエ・ヌルの廉価版機体となる。この型落ちしたと言っていい機体にAI搭載型のコンピューターを積みこみ、無人で運用することを前提としている機体に再設計したのである。その目的は、旗艦のカズサや今や唯一の僚艦となってしまった大型駆逐艦の防衛用であった。


「シュネ、船は任せる。みんな、出撃だ!」

『おう!!』

『ええ!!』


 シュネにカズサと駆逐艦を預けると、オルたちや祐樹たちに声を掛けてからブリッジを出て格納庫へ向かう。まだ完全に相手が宙賊かどうかは分かっていないが、いきなり攻撃してきた相手に考慮などする必要などない。間違いなく、敵なのだから。


「誰に喧嘩を売ったのか、その身に味合わせてやる。粒子になって後悔させてやるぜ!」


 怒りとも不敵ともとれる表情を浮かべながら俺は、到着したカズサの格納庫で宇宙服の代わりとしてデュエルテクターを纏う。そのまま、急ぎ発進の準備を進めている愛機のキュラシエ・ツヴァイに乗り込むのであった。

タイトル通り、奇襲を受けました。

これから、反撃です。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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