第七十五話~分析~
第七十五話~分析~
フィルリーアに嘗て栄えた古代文明とは全く違う異星発祥の文明で建造されたと思われる宇宙船の発見に、冒険心をくすぐられた俺たち。早速、調べる為に、メンバーを揃えて現地へ向かったのであった。
シュネいきなりの活躍により宇宙船の入り口が開いたので、警戒しつつ中へと入る。しかしながら、そこは真の暗闇といってよく視界が効かなかった。すぐにライトを取り出すと、肩に取り付けて貰う。こうすれば、フリーで両手が使えるのだ。
果たしてライトに照らされた場所だが、どうやら通路らしい。よく考えれば搭乗口から乗り込んだのだから、そこが通路となっているのは当然と言えば当然だろう。そして通路の先に目をやると、扉らしきものがあるようだった。
「なぁ、シュネ。これさぁ、エネルギーを供給してやれば生き返るんじゃないのか?」
≪……はぁ。あのねシーグ、どうやって?≫
「どうって……そりゃ、繋いでさ」
だって、さっきシュネが宇宙船へと入る扉を開いたではないか。ならば、同じようにすればいいと考えたわけだが、シュネからは半ば呆れたような視線が返ってきたのだ。
≪……だから。どうやって、かしら? この宇宙船が使用している規格も全然っ、分かっていないのよ。裸子化に強引でも繋げればどうにかなるかも知れないけど、そこまでしなければならないほどの緊急事態でもないでしょ≫
「まぁ、そうだな……だとすると、電源もないのにどうして入り口が空いたんだ?」
いわゆるエネルギー不足となっているのだと思う宇宙船の入り口がどうして開いたのか尋ねると、あっさりと答えが返ってくる。どうやら、緊急開閉用の手動装置を使って開けたらしかった。
これは、俺たちの船にもある機能である。電源が全て落ちてしまいどうにも入り口が開けられない場合、中側からもそして外側からも開けられる為の物だ。分かり易くいえば、電車の扉付近にある緊急開閉用のコックである。文明は違っても、その辺りの考えは同じだろうと考えたシュネがセンサーを使って調べた結果、見付かったので入り口の扉を開いたとのことだった。
因みに、緊急開閉用のコックがあったのは入り口の扉に近い場所だったらしい。やはり人種が違っても、考えるところは結構似てくるかも知れないなと思った瞬間だった。
それはそれとして、専門家のシュネが無理だというのならそれは無理なのだろう。だったらごねたりなどせず、さっさと中を進むことにした。
「ところで緊急用の手動開閉装置だけど、全ての扉にあるのか?」
≪さぁ。それは分からないわ。あるかも知れないし、ないかも知れない。何せ、考え方が分からないから。ただ入り口に関しては、同じだったようだけれどね≫
それだったら、あるかも知れないと考えて扉の周辺を調べてみる。だが明かりが少ないこともあって、よく分からなかった。そこで既に実績のあるシュネと入れ替わると、彼女が調査用機器を使って調べ始める。どうやらこの扉にも非常開閉装置はあったようで、彼女はコックを使って扉を開いていた。
するとシュネ曰く、扉には全てあるかも知れないとのことである。ただ、まだ二つしか開いていないので、偶々そうだっただけかもしれないけれども。とも付け加えられていたが。
何はともあれ、扉が開いたのであればまずは問題ない。すぐに中に入ると、そこは左右へ延びる通路となっていた。どちらに向かえばいいのか分からないので、向かって左側に進むことにしようか。
さて何でそちらに向ったのかというと、外見上からの判断からとなる。外から見た場合、そちらの方向にブリッジがあるからだ。無論、この通路がブリッジにまで繋がっているのかなどは分からない。だが、方向が同じなら大丈夫だろうというひどく安易な考えによっていたりする。何より他に手もないので、そうするしかないというのが本音のところだったりするのは秘密にしておいて欲しいものだな。
「で、扉か。それで、開きそうか?」
≪……無理みたいね≫
入り口からの距離を考えるに、この扉の宇宙船の先頭付近となるだろう。ならば、庫の鳶差の先は、ブリッジかも知れないのだ。しかしブリッジであっても違っても、開かなければ中を確認できない。となれば、ここは強引にでも扉をこじ開けるしかなかった。
侵入者用の防衛機能でも働かないのかという不安が無きにしも非ずだが、そんな機能があればとうの昔に働いている筈だ。少なくとも俺たちは、この宇宙船の船長などから許可を得ているわけではない。それは即ち、宇宙船側からすれば侵入者といって申し分ない存在である。その俺たちが艦内を闊歩しているにも関わらず防衛機能みたいなものが働いていないのだから、心配するだけ今さらだった。
「では、やってみるか」
そう言いながら、俺は軽く扉を拳で叩いてみる。その感触から、デュエルテクターを装着している今ならば大丈夫のような気がした。ただ、あくまで俺がそう感じたに過ぎない。絶対に大丈夫かといわれたら、首を傾げるしかなかった。とはいえ、殴り飛ばすなどしてぶち壊すなどは最後の手段にしたい。その前に、やれることを行うことにした。
俺はデュエルテクターに装着されている爪を出すと、扉との境目に添えてみる。そこから力を入れると、それなりの抵抗感はあったがそれでも爪は扉の境目に差し込まれていた。その差し込まれた爪を使って、俺は扉を開きに掛かる。すると、ゆっくりとだが扉が開いていった。
これならば殴って壊さないで済むなどと考えながら、最後まで扉を開く。しかしてその扉の先にあったのは、微かに幾つかの光が明滅している場所だった。基本となる規格が分からないので何とも言えないのだが、雰囲気的には予想したようにブリッジのような気がする。しかしそこは、どこまでいってもシロートでしかないので、宇宙船を作りだした専門家であるシュネや彼女から教えを受けたセレン。そして、同行しているガイノイドやアンドロイドたちへ下駄を預けるつもりで一歩引いて場所を譲ることにした。
すると俺の意図を汲んでくれたようで、ほぼ同時にシュネたちは動き出してブリッジ(仮)を調べ始める。特にシュネとセレンは、嬉しそうだ。もっとも残りのメンバーはガイノイドやアンドロイドなので、表情に出ていないだけかも知れないが。
とは言え、たとえそうであったとしてもそんなことは分からない。だが、ほぼ無表情な彼女たちの中にあって、嬉しそうなシュネとセレンは特に印象的であったことに間違いなかった。
「……取りあえず、ここは任せるとして船内を調べようか」
≪だめよ! 勝手に歩かないで!! 下手なところに触られても困るから≫
「とはいっても、暇になってしまうんだが」
≪それぐらい我慢して待ちなさい、子供じゃないんだから。それに、この場所で僅かでもコンソールらしきものが明滅していたの。だから、宇宙船のシステムが完全に止まっているわけではないのよ!≫
『……へーい』
≪……はーい≫
シュネの警告に、渋々従った俺たちであった。
正直に言えば、暇である。
無論、シュネからの忠告もあって万が一起きるかも知れないアクシデントに対する警戒はしているが、そういつまでも緊張感を保っていられない。そこで俺たちと祐樹たちでパーティ分けをすると、時間を決めて代わる代わる警戒することにした。とはいっても、実際はこれも暇潰しでしかない。もし二十四時間フルタイムで警戒するならば、ガイノイドたちに任せた方が結果的にはいいからだ。
そしてちょうど、俺やオルやキャスが休憩している時にシュネとセレンと俊が喜びの声を上げる。実は俊もセレンと同じように魔科学に興味を示したばかりか、シュネを師として魔科学を学び始めたのである。
『やった!』
「どうした」
≪やったわ、シーグ! 成功よ≫
シュネのその言葉と共に、今まで持ち込んだ明かり以外は灯っていなかったブリッジに光が灯る。しかしその明かりはいわゆる白色光とは違い、赤みを帯びている。アニメーションとかからの描写だと、いわゆる緊急時の非常灯に近い印象があった。
気になったのでその点をシュネに尋ねると、その認識で大体あっているらしい。色々と問題があって、現状でこの宇宙船が通常状態まで復帰することは事実上不可能とのことだった。
「じゃあ、どうするんだ?」
≪その点も大丈夫。ネルに通信を入れたから、間もなく到着するわよ。それから、エネルギーを供給するわ。この宇宙船の機能等などは、その後の話ね≫
「あー、そういうことね。じゃあ、待っていればいいのか?」
≪ええ≫
ならば待っている間に、シュネから調査の成果について聞くとしようかと思い、具体的にどれぐらいまで分かったのかを聞いてみる。すると、そんなには分かってはいないようだった。
どうも彼女たちは、この宇宙船の中枢の復活と掌握に重点を置いていたらしい。それが先ほど終わって、今はぎりぎりの状態で稼働しているというのが真相のようだった。
「それでこの場合、宇宙船のメインコンピューターでいいのか? その、復活した中枢というのは」
≪その認識でいいわ≫
「そのメインコンピューターとは、ネルトゥースのように会話ができるのか?」
≪できるかできないかといえば、できるわ。正確に言うと、できるようになったと言った方がいいかしら≫
俺はシュネへ、できるようになったとはどういう意味なのかと尋ねる。すると、彼女からは笑いを含んだ返答がされた。
だが本当に……どういったこと何だ?
「なぁ、シュネ。それって、どういうことだ?」
≪それほど、難しいことでもないのだけれど。でもどちらかというと、偶然の産物かしらね≫
「偶然の産物?」
≪うん。調査の過程で分かったのだけれど、幾つかフィルリーアと共通の意味を持つ言語があったのよ。その言語を手掛かりに、言語を訳せるようにしたというわけ≫
確かに、それなら可能かもしれない。ただ、そうなると会話はまだ無理だな。せいぜい、モニター越しに文章でのやり取りぐらいだろう。だが、それでも全く意思の疎通ができないよりは遥かにましなのは間違いない。一々、文章を打ち込まなければならない煩わしさは存在するが、それも仕方がないと割り切るしかないだろう。寧ろ、この短い間に意思の疎通ができるようにしたという方が、凄いのかも知れない。
≪あ、私は大丈夫。調べる過程で、ほぼ覚えたから≫
「マジかよ!」
調べる傍らで一つの言語を通じるようにしただけでなくほぼ習得するなど、改めてシュネは天才だなと認識させられた瞬間であった。
異種文明製と思われる宇宙船の調査です。
そしてシュネが、すんごいです。
ご一読いただき、ありがとうございました。




