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第六十七話~作戦~


第六十七話~作戦~



 各国に散らばっていた悪魔全ての招集もいよいよ完了し、アシャン神皇国の首都となる聖都襲撃の準備を漸く終えた俺たちは、ついにこの惑星フィルリーアから離れる前の最後の大仕事を行うのであった。





 かつて悪魔の本拠であった施設には、飛空艇が一隻鎮座している。この飛空艇は、斗真が勇者であった頃に使っていた艇である。そして、およそ九か月前にアシャン神皇国の聖都襲撃に使われた飛空艇でもあった。

 なおこの施設に集まっていた悪魔は、殆ど全て俺たちの研究所へと移動している。ゆえにこの施設に残っているのは、最低限のメンバーでしかない。具体的にいえば、斗真と悠莉。それと、斗真の親衛隊長である男性の悪魔ハムーサと、悠莉の親衛隊長となる女性の悪魔シュルンである。つまり、俺たちと斗真が戦った時にいた男女の悪魔だ。

 なお、もう一人の女性悪魔で四魔将最後の生き残りとなるサラサだが、彼女はこの場におらず研究へ移動している。それは斗真の代理として、悪魔全てを纏めるという役目を担っている為だった。何といっても、宇宙船を作っていたのは俺たちの研究所である。彼ら悪魔を宇宙船に乗せるには、研究所へ移動させる必要があったからだ。

 その悪魔全員も、研究所を司るネルトゥースの管理下にある。もし彼ら悪魔よからぬことを考え行動でも起こすようならば、もれなく研究所の総力を挙げて鎮圧するつもりだった。その点を考慮し、初め俺はシュネとオルとキャスとセレン。それから祐樹と俊、舞華とサブリナに研究所へ行ってもらうつもりだった。

 流石に、現地人であるオルとキャスとセレンとサブリナにアシャン神皇国襲撃を行わせたくはないという思いもある。何より、俺たちの本拠である研究所に幾ら共闘から一歩進んで同盟に近い関係を悪魔と結んだといっても、その前までは敵同士だったのである。無条件に彼らを研究所へ移送することは、あまり気分のいい物でもない。その意味もあって、シュネをリーダーとして研究所に移動させ、ネルトゥースと共に対応を任せようと考えたのだ。

 また、祐樹たちを戻すとした理由はというと、酷く単純な理由だったりする。何せ彼らは、もろにアシャン教の関係者となる。そんな彼らを連れてアシャン神皇国聖都襲撃などしては、何が起きるか分かったものではない。その不確定要素を排除する為、彼らを研究所へ送ったのだ。

 しかし、シュネを除く彼らは揃って難色を示す。元々(もともと)、悪魔と共に研究所へ移動するというのはシュネが俺に提案したことだ。ゆえに、シュネが難色を示す筈もない。結局、俺とシュネに説得され、彼らは悪魔たちと共に研究所へと移動したのであった。



 悪魔たちの本拠地であった施設内は、ほぼ伽藍洞であり静けさが漂っている。その状況に斗真と悠莉の二人は、若干の寂しさを内包した表情を浮かべているようだった。

 

「……こんな寂しくなるとは」


 何せ悪魔が揃って移動するに当たり、殆ど全てのものが持ち出されているので施設内には碌なものが残っていない。有り体にいえば、これから出撃する飛空艇以外には施設の外壁ぐらいしか目ぼしい物などないのだ。

 幾ら全ての悪魔も宇宙へ旅立つとはいえ、ほぼ根こそぎ持っていくというのは普通ではない。ならば何ゆえにそのような状態になったのかと言えば、フィルリーアに何も残したくはないという思いが斗真と悠莉にあったからに他ならなかった。

 彼らが一方的に、しかも意思などは完全に無視してフィルリーアに呼び出されたことは間違いない。つまり二人には、拭っても拭いきれないこの世界に対して不快感がある。そこでせめてもの意趣返しとして、古代文明期の生きた施設など渡す気はないという思いだった。

 しかしながらこの思い、実は俺とシュネも同じだった。

 憑依という形であったにせよ生きているわけだが、それは先代のシーグヴァルドが結果として残した形となった未使用のからだを利用したという殆ど偶然の産物によってもたらされた結果といっていい。つまり俺とシュネに関しても、先代のシーグヴァルドやシュネーリアに感謝することはあっても、強制的に呼び出してくれたこのフィルリーアに対して感謝をする思いも理由はない。だからこそ俺とシュネも、斗真や悠莉と同じく古代文明の生きた施設となる研究所を渡す気などさらさらなかった。

 ゆえに研究所に関しても、この施設と同様に持っていけるものは全て持ち出す気である。実はシュネをアシャン神皇国聖都襲撃、引いてはアシャン教中枢への襲撃に参加させず研究所へ送った理由の一つもそれであった。

 因みに研究所で維持管理の中枢を担っていたネルトゥースだが、これからは宇宙船の中枢、即ちメインコンピューターとなる。その彼女に関してだが、既に宇宙船へ移乗している。現在のネルトゥースは、宇宙船の管理維持と研究所の管理維持を同時に行っているのだ。


「斗真と悠莉も思うところはあるだろうが、そろそろ行くぞ」

「そう……だな」

「そう、ね」


 最後、目に焼き付けるかのようにじっと見た斗真と悠莉だったが、そこで視線を切ると静かに鎮座していた飛空艇が動き出す。実は飛空艇だが、改造がほどこしてある。その為、自動操縦で動かすことができるのだ。

 なぜにそのようなことをするのかと言えば、今一度、アシャン神皇国の聖都襲撃をするからである。だが実際の目的は、囮として生徒に存在する全て耳目を船に集めさせるのだ。そして最終的には、飛空艇を墜落させる。こうすることで、裏で暗躍する俺や斗真たちのカモフラージュとするのだ。

 少しずつ加速していく飛空艇を見送ったあと、俺たちもこの施設から移動を開始する。まずは研究所に転送し、そこで飛空艇の聖都到着を待つのであった。





 斗真がアシャン神皇国聖都襲撃を行ってから九か月、それだけの期間を開けた理由については既に述べた。だが、それとは別にもう一つだけ他の理由がある。それは、ある存在の運用を完全に終わらせる為だった。そのある存在とは、ドゥエフ王国の擁する飛空艇とマガト帝国の擁する飛行船だった。

 この二つの船は、俺たちが擁する宇宙船やキュラシエ、斗真の秘匿し続けていた飛空艇を除くと現在のフィルリーアでは数少ない空を飛べる船となる。斗真の持っていた飛空艇によって襲撃を受けたアシャン教とアシャン神皇国は、その二つの船をもつドゥエフ王国とマガド帝国に対して両船の派遣を要請していた。

 基本的に航空兵器である飛空艇に対して有効なのは、同種の存在をぶつけることだとアシャン神皇国とアシャン教側は判断し、両国へ派遣要請をした形である。だが、要請されたドゥエフ王国とマガド帝国としては、迷惑極きわまりない派遣依頼だった。

 何せ両国からすれば、この二隻は虎の子と言っていい存在となる。その虎の子を簡単に派遣しろといわれても、素直に頷けないところがあるのだ。しかし要請をしてきた相手は、宗教として最大勢力を持つアシャン教である。内心ではとても迷惑だと思っているが、だからといって流石に断ることはできない。ゆえにドゥエフ王国とマガド帝国は、表面上はこころよく、内心では不承不承ふしょうぶしょう両船を派遣したのだった。

 その派遣期間だが、実に数ヵ月にも及んでいる。それだけの期間、派遣を行わせた当たりアシャン教の影響力だといえるかも知れない。しかし数ヵ月の間、全く襲撃等がなかったこともあって、ついに両船の派遣も終わりを迎える。要請を出したアシャン神皇国とアシャン教側としてはまだ派遣を続けさせたかったが、こうまで何もなくてはそれも難しい。ゆえに両船は、それぞれが所属する国へと戻ったのだ。

 つまり、今聖都を守っているのは、依然と同様に結界だけである。そのことは、ドローンを使っての情報収集からも把握しているので間違いはなかった。

 

「ネルトゥース。飛空艇到着まで、どれぐらい掛かる?」

「あと、三時間ほどでしょう」


 ここは、嘗て研究所の中枢を担っていた場所である。だが今は、がらんとした大きい部屋でしかなかった。その理由は至極簡単で、この場所に鎮座していたネルトゥースが、既にないからだ。そこで今回の聖都襲撃の作戦中枢として、利用している。そして今回の襲撃を最後に、ここにある機材等も宇宙船に持っていくのだ。

 それはともかくとして、聖都への襲撃方法だが空爆である。といっても、爆弾やら焼夷弾やらを降らせるわけではないし、船から魔術を放つわけでもない。その代わりに、岩という質量兵器を降らせるのだ。だが、小型の飛空艇ではその搭載量などたかが知れている。そこで飛空艇を改造し、爆弾倉ばくだんそうもどきを作成した。

 だが、その爆弾倉もあくまでカモフラージュでしかない。実際には、研究所から転送させるからである。ゆえに、小さな飛空艇でありながら、かなりの岩を落とせることとなる。この行為で、聖都内の耳目をアシャン神皇国やアシャン教の中枢も含めて集めさせる。その隙を突いて結界を無効化して聖都内へ潜入を果たし、目的を達成する。これが、潜入までの予定だった。

 因みに飛空艇だが、先に述べた通り作戦の成否に関わらず撃沈させる。しかも飛空艇の中には、悪魔王と悪魔妃と彼らの親衛隊隊長であった二人の悪魔、ハムーサとシュルンの遺体が乗せられていたりする。もっとも、遺体といっても本人たちのものではない。先代のシュネーリアが残した、転生用の肉体を用意する技術を流用して作られたものだ。

 いて地球の技術で似たものを上げるとすれば、クローンを作ったと考えればいいだろう。但し、生きている必要はないので初めから死んだ状態ではあるのだが。


「そうか。では、到着次第攻撃を仕掛けることになるな」

「はい」


 俺の言葉に、ネルトゥースが答える。すると、バックアップの為に残るシュネたちも含めて、少しずつであるが空気も張り詰めてきていると感じたのだった。


フィルリーアでの最後のお仕事、始まります。

といっても、まだ現地に到着もしていませんが。


ご一読いただき、ありがとうございました。

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